アレックス・カッツの作品って?独自路線の具象画家の代表作品や買取価格を紹介
アレックス・カッツの作品って?独自路線の具象画家の代表作品や買取価格を紹介
アレックス・カッツは、戦後間もない時期から現在に至るまでジャンル問わず多くの作品を残しているアメリカの現代アーティストです。「◯◯イズム」などといったムーブメントにとらわれることなく、長きにわたり独自のスタイルで活動を続ける彼は、多くのアーティストに影響を与えています。
アレックス・カッツの略歴
アレックス・カッツは、1928年に芸術家の両親のもとで生まれました。戦後間もない1946年よりアーティスト活動を開始したのち、さまざまなスタイルの制作活動をしています。近年ではiPhoneを使用した作品を制作するなど、従来の型にとらわれない彼の姿勢は、多くの若いアーティストに影響を与えています。
1946~50年:私立大学クーパー・ユニオンに入学
アレックス・カッツは、1928年にニューヨークのブルックリンに生まれました。両親はロシア系の移民で芸術家で、母親は女優でした。それゆえに彼は幼い頃から芸術に触れる機会が多く、1946年には芸術教育で知られるマンハッタンの私立大学クーパー・ユニオンに入学しました。
クーパー・ユニオンにて、アレックス・カッツはロシア生まれの画家であるモリス・カンターのもとでモダンアートの技法や理論を学びました。また、1949年から1950年の1年間では、奨学金を得てメイン州にあるスコウヒガン絵画彫刻学校の講習に参加しました。彼はスコウヒガンで主に写生を学びましたが、そこでの学びはそれ以降の彼の作風の土台となっています。
1954~59年:ニューヨークで個展を開催
1954年にはアレックス・カッツの初めての個展がニューヨークのロコ・ギャラリーにて開催されました。この頃より彼はニューヨーク派と呼ばれる抽象表現主義のアーティストたちと親交を深めるようになります。抽象表現主義とは、ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコに代表されるような、具体的なモチーフを持たずにキャンバスに淡々と感情を表現するムーブメントです。
アレックス・カッツの画家としてのキャリアの最初の10年間は、描いた絵を捨てるなど粗暴な面がありました。しかし、1950年代以降の彼は自身を省みたことによって、より自由な作品を制作するようになりました。そのような背景には、シンプルで削ぎ落とされた抽象表現主義のアーティストたちの存在があるのではないでしょうか。
1965~74年:リトグラフ・エッチング・シルクスクリーン・木版画などさまざまな手法で版画に着手
苦悩の末、絵画表現に自由を見出したアレックス・カッツは、型にとらわれずにさまざまな絵画手法にチャレンジするようになりました。たとえば、1955年にはキャリア初のコラージュ作品を、1959年にはカットアウトの作品を制作しました。1960年代にはアルミニウム板へのペイントや、リトグラフ、エッチング、シルクスクリーン、木版画など多くのエディション作品を制作しました。
なかでもアルミニウム板へのペイントは、現在でもアレックス・カッツの作風に取り入れられていて、1960年代に台頭した映画や広告の大胆なデザインやカットから影響を受けています。
このようなアレックス・カッツの精力的な活動の最中で、1974年にはホイットニー美術館主催の「Alex Katz Prints」展が開催されました。
1980~90年:「夜の絵」のような暗い印象を受ける作品を作るようになる
1980年代以降のアレックス・カッツは、これまでの明るい印象の作品とは異なり、「夜の絵」シリーズに見られるようなほの暗い作品を手がけるようになりました。なぜ作風を変えたかについての具体的な言及はないものの、1980年代より彼の作品のテーマには「環境」があったことがひとつの理由かと考えられます。
1960年代のアレックス・カッツは映画や広告といった華やかなメディアから影響を受けていました。ウォーホルなどの同時代のアーティストにも同様のことが言えるでしょう。しかし、中東戦争やベトナム戦争といった世界情勢によってきらびやかなムードは世間から去っていき、ミニマルアートやアースワークのような「静」を中心としたムーブメントが起こりました。そのような時代に呼応するように、アレックス・カッツの作風も「静」を表現するようになったのではないでしょうか。
1990~2010年:キャンバスが花で一杯の作品や写真から作るコラージュなど新たな手法を模索
1990年代には、ドイツやイタリア、イギリスなどのヨーロッパ各国にてアレックス・カッツの個展が開催されました。各国を巡回することで世界的にも知られるアーティストとなり、多くの若い世代のアーティストに影響を与えました。
その頃よりアレックス・カッツは、1960年代から描いていた「花」を再び描き始めるようになりました。彼の新しい「花」シリーズは、1960年代のクローズアップした作風とは異なり、キャンバス全体を花で埋め尽くすスタイルへと変わりました。
2010年代以降のアレックス・カッツは、ポートレイト作品を大胆にトリミングするようになりました。また、iPhoneで撮影した写真をコラージュするなど、長いキャリアを積んだアーティストといえ、過去の自身の作風にとらわれないスタイルで今もなお精力的に活動しています。
アレックス・カッツの作風は類を見ない独自路線
アレックス・カッツは、「目の前にあるものを描く」というシンプルな考えのもとで作品を制作しています。彼がアーティストとして活動し始めた1950年代のニューヨークでは、抽象表現主義が台頭していました。しかし、そのようななかで彼は具象画を描くことを貫きました。また、コラージュやエッチング、環境をテーマにしたアート、近年ではiPhoneを使用した制作など、一筋縄ではいかない独自のスタイルが特徴的です。
このようにアレックス・カッツは、長いキャリアのなかで、各時代のムーブメントに従うことなく彼自身の表現に注力してきました。キャリアの初期では、これまで描いてきた作品を破棄したことから、常に新しい表現を求める姿勢がうかがえます。
アレックス・カッツの代表作品を紹介
ここでは、アレックス・カッツの代表作品「The Black Dress」と「夜の絵」シリーズを紹介します。これらの作品からは、「●●イズム」といったそれぞれの時代のムーブメントに乗らず、独自のスタイルで作品を制作する彼ならではの、何にもとらわれないスタイルを窺い知ることができます。
特に「The Black Dress」は、妻を描いた作品で、アレックス・カッツは身近な人物のポートレートを数多く描いてきました。
The Black Dress
アレックス・カッツの「The Black Dress」は黒い服を着た6人の女性を描いた彼の代表作品です。6人の女性は全員、彼の妻であるエイダと言われています。同一人物をモデルにしながらも彼女たちの表情や仕草には細やかな違いがあり、ミステリアスで思わず見入ってしまいます。
アレックス・カッツと同時代を生き、形や色、コンセプトを重視した抽象主義の作家たちとは異なり、リアリズムを追求した彼独自の繊細なタッチがうかがえます。
夜の絵シリーズ
1986年よりアレックス・カッツが描き始めた「夜の絵」シリーズは、明るい風景画を中心としたこれまでの彼の作品とは異なります。「夜の絵」シリーズを制作することで、自然光を重視した以前のスタイルから、新たな光の描き方を模索するようになりました。
ポップで明るい作品を描くことで知られるアレックス・カッツですが、暗闇をモチーフにした「夜の絵」シリーズによってアーティストとしての彼のもう1つの側面があらわになりました。
アレックス・カッツの作品の落札価格とその価値について
アレックス・カッツの作品は、2022年に大規模回顧展が開催されることをきっかけに高騰している傾向にあります。2020年のオークションでは3.3億円と高値で落札された作品があるなど、マーケットで注目されています。
2020年:the red band|3.3億円
2020年にクリスティーズが開催したアートオークションにて「the red band」(1979年)が3.3億円で落札されました。
「the red band」では、帽子を被った黒髪の女性のアンニュイな表情が描かれています。この作品が制作された1979年のアート界では、モデルとして描かれる女性の多くは白人女性だったなか、黒髪の女性が描かれることは珍しいことでした。時代の流れを先読みするかのように描かれたのが「the red band」でしょう。
2022年:サニーNo.4|23,000円
アレックス・カッツの「サニーNo.4」は、23,000円で落札されています。このように手頃な値段から購入できる作品もあります。
「サニーNo.4」では、色づかいを極力少なくしながらも犬が描かれています。親しみやすさのある作品でありながらも、筆の太さを変えている点、少ない色づかいといえ繊細な色合いを感じさせ、アレックス・カッツの細やかな工夫がうかがえます。また、彼の作風の特徴である「シンプル」を実感できる作品です。
アレックス・カッツの作品の買取価格と相場
アレックス・カッツの作品は、2022年に大規模回顧展が開催されることもあり、マーケットでの価値が高まりつつあります。億単位で取引されているものから、数万円代で手に入るものまでさまざまです。また、アーティストとしてのキャリアの長さや、戦後のアメリカの美術シーンを牽引する存在ゆえ、マーケットからも高い評価を得ています。
アレックス・カッツは、絵画作品のみならず、リトグラフやエッチング、木版、シルクスクリーンなど多岐にわたる作品を制作しているため、そのジャンルによって評価額が異なります。
アレックス・カッツの作品は強化買取中
アレックス・カッツは、抽象主義が台頭した戦後に、リアリズムを追求した数少ないアーティストです。また、90歳を越えた現在も精力的に活動しています。
当店では現在アレックス・カッツ作品の買取を強化しています。アート作品は価値の判断が難しいため、スタッフが念入りに査定いたします。また、絵画だけでなく、骨董や茶道具など幅広く買取いたします。買取の流れや買取実績、ご不明点などございましたらお気軽にお問い合わせください。