クリストとはどんなアーティスト?布で覆う作品が多い理由や代表作品について徹底解説

2022/04/25 ブログ

クリストとはどんなアーティスト?布で覆う作品が多い理由や代表作品について徹底解説

クリスト_凱旋門

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ニューヨークやロンドンなどの街並みや観光地を布で覆う巨大なプロジェクトに取り組んできたアーティスト、クリストとその妻、ジャンヌ=クロードの作品は、没後もなお注目されています。

 

風景に対する固定観念を覆すクリスト夫妻の作風は、ときに人々を困惑させました。しかし、反対勢力に屈服せずにプロジェクトを実現する彼らの制作プロセスそのものが作品として評価されています。また、アートの概念を変えたクリスト夫妻の遺した作品群は、マーケットでの評価も高くなっています。

 

 

 

クリストの略歴

 

クリストは、ブルガリアのガブロヴォ出身の現代アーティストです。彼は妻のジャンヌ=クロードとともに制作活動を行っていました。街のランドマークや風景を布で覆う彼らの作品は、美術史のなかでヌーヴォー・レアリスムや環境アートと位置付けられています。

 

 

1950年代:ソフィアやウィーンで美術を学ぶ

 

クリストはソフィアの美術学校やウィーンの芸術アカデミーを経て、1958年よりパリに移住してアーティストとして活動を始めます。この頃のクリストの作風は工業製品や缶といった日常にある物を布で覆うスタイルでした。

 

また、その当時のアメリカでは、アンディ・ウォーホルのポップアートが一世を風靡していました。彼もまた身近な物を題材とする作品を制作したことで有名です。大量生産の時代に、ウォーホル、そしてクリストは、制作を通してありふれた物の価値を探求していたはずです。

 

 

1958年:パリでクリストに出会い翌年に結婚する

 

クリストがパリに移住した1958年に、パリで後の妻となるジャンヌ=クロードと出会います。2人はすぐに恋に落ちて翌年に結婚、その後は「クリストとジャンヌ=クロード」として共同で制作活動を開始しました。

 

夫婦での共同作品は、初期のクリストの作風とは異なり、街のランドマークや風景といったパブリックなものを布で梱包する壮大な作風となりました。

 

ドイツのケルンの港での「埠頭のパッケージ」(1961年)やパリの大通りをドラム缶で封鎖した「鉄のカーテン-ドラム缶の壁」(1962年)がその当時彼らが手がけた作品のなかでも有名です。

 

 

1964年:ニューヨークへ移住し、建造物や自然環境を舞台としたプロジェクトに着手

 

クリスト夫妻は、活動拠点をヨーロッパからニューヨークへ移します。道路や建造物、環境を舞台としたプロジェクトを開始します。

 

彼らは自身の活動を「プロジェクト」と称していましたが、俗に言うビジネスのようなお金を生み出す「プロジェクト」とは異なるものでした。作品制作時は助成金に頼ることなく、自ら資金を調達し、制作のプロセスまでも作品に含んでいます。

 

ニューヨーク時代の主な代表作品には、シドニーの海岸を布で包んだ「包まれた海岸線」(1969年)やパリのセーヌ川の橋を布で包んだ「ポン・ヌフの梱包」(1985年)が挙げられます。

 

 

2021年:逝去(2020年)後、生前約60年にわたって構想していたパリの凱旋門を覆うプロジェクトが実現

 

クリスト夫妻は、約半世紀もの間共に制作活動を続けていましたが、2009年に妻・ジャンヌ=クロードが、2020年にはクリストが逝去しました。そのような中、生前より彼らが構想していたプロジェクトが、2021年に実現しました。

 

そのプロジェクト名は「L’Arc de Triomphe, Wrapped(包まれた凱旋門)」といいます。クリスト夫妻が出会って間もない1961年ごろより、パリの凱旋門を覆う大掛かりなプロジェクトの構想がなされていました。

 

当時、凱旋門の近くにアトリエを構えていたクリスト夫妻は、毎日目にする凱旋門を布で包んでみたいと思うようになります。しかし、凱旋門は歴史的なモニュメントゆえ、彼らはそのような偉大な存在を布で覆うことに抵抗感があったようです。

 

そのようななか、彼らが精力的に活動を続けるうちに、2017年にはパリのポンピドゥーセンターがクリストにプロジェクトを提案し、長年の彼らの夢が実現しました。

 

 

 

クリストはなぜ梱包された物体を作品とするのか

 

クリスト夫妻の作風は、数多くの現代アーティストたちとは一線を画します。「何かを布で梱包することが作品となる」と考えたアーティストは、これまでクリスト以外にいないはずです。

 

物体を布で梱包することは、物体の背後にある歴史や文脈を浮き彫りにする逆説的な表現手法だと言われています。

 

彼らはプロジェクトのための資金調達を自身で行い、制作にあたって現地の人々と交わす地理的や政治的なやり取りも含めて作品の一部だと考えていました。また、プロジェクトは一時的なもので、すぐに壊されてしまいます。

 

ミケランジェロなど、美術史に名を馳せる巨匠たちにはパトロンがいて、彼らから資金を得て後世に残る大掛かりな作品を残しました。しかし、クリスト夫妻は、美術作品は永遠に残るものだけではなく、作品ができあがって壊されるまでのドラマこそが作品だということを、制作活動を通して美術界に投げかけました。

 

 

 

クリストの代表作品を解説

 

ここでは、クリストの3つの代表作品を紹介します。歴史あるオフィス街に、ときには自然豊かな観光地に現れるクリストのプロジェクトは、これまで街や風景に抱いていたイメージを変える試みと言ってもよいでしょう。

 

 

Christo's Gates

 

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「Christo's Gates」は、2005年2月に16日間にわたってニューヨークのセントラルパークにて展示されたプロジェクトです。セントラルパーク内のおよそ23マイル(約37km)にサフラン色の布が張り巡らされました。

 

このプロジェクトを観に約400万人が訪れ、彼らはサフラン色の布を目印に公園内を歩き周って写真を撮ったそうです。また、展示時期が冬だったこともあり、周囲をオフィス街に囲まれた雪景色のセントラルパークにはためくサフラン色の布が一層目立ったはずです。

 

 

The London Mastaba

 

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「The London Mastaba」は、2018年6月にロンドンのハイド・パークにて展示されたプロジェクトです。敷地内のサーペンタイン・レイクに浮かぶ巨大オブジェとして注目を集めました。

 

このプロジェクトは7,506個にも及ぶドラム缶を積み重ね、総重量は600トンになりました。タイトルの「Mastaba」の示す意味通り、古代エジプトの墳墓を象徴しています。シックなハイド・パークに佇むカラフルで巨大なオブジェは、ヨーロッパの伝統を覆すかのようです。

 

また、湖の生態系を保護するためにも環境に優しい資材が使用されています。展示終了後、解体された資材はリサイクルされました。

 

 

The Floating piers

 

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「The Floating piers」は、2016年6月にイタリアのミラノから90km離れたイゼオ湖畔に展示されたプロジェクトです。湖畔の街スルツァーノから湖に浮かぶサン・パオロ島まで約3km続く道を、10万平方キロメートルに及ぶ布で包んだオブジェです。

 

なお、このプロジェクトは東京湾で計画されていましたが、自治体からの許可を得られずに実現できませんでした。海外からも評価の高い東京で、もしクリストがプロジェクトを実現していたらどのような光景が見られたのかが気になります。

 

 

 

クリストの作品の落札価格とその価値について

 

クリストの代表作品はランドマークを舞台としたものが多く、かつ期間限定プロジェクトのため、市場に出回っている作品は少ないです。しかし、プロジェクト実現のための資金調達としてクリストが制作していたリトグラフ作品やコラージュ作品があります。

 

 

2015年:Store Front|約5,000万円

 

「Store Front」は、ドイツのデュッセルドルフにあるシュメラ画廊で開催された展覧会の案内状として1964年に制作されたものです。2015年にサザビーズが開催したオークションにて約5,000万円で落札されました。

 

タイトル通り、店をテーマにした作品ですが、粗いアウトラインや色彩、そして店員や商品のない外装が描かれています。また、特定の住所や象徴的な物体が描かれていない、何の変哲もない店です。クリストの孤独や空虚感が醸し出されている作品となっています。

 

プロジェクトを計画する際、クリストはあらかじめ構想をスケッチしていました。街や観光地、自然に出現するクリストの巨大オブジェの持つ壮大さの背景にある、アーティストゆえのクリストの孤独や葛藤が、「Store Front」からうかがえます。

 

 

2015年:Surrounded Islands|約3,000万円

 

「Surrounded Islands」は、1983年にフロリダ州のビスケーン湾でのプロジェクトです。このプロジェクトのために描かれたスケッチが、2015年にサザビーズが開催したオークションで約3,000万円で落札されました。

 

ビスケーン湾に浮かぶ島をピンク色のポリプロピレン製の布で包んだこのプロジェクトは、提案時に環境保護団体や近隣住民より反対されました。しかし、クリスト夫妻はアメリカ陸軍とともに彼らに対して、環境に問題がないことを説得します。その結果実現したのが、「Surrounded Island」です。

 

 

 

クリストの作品の買取相場

 

クリストは視覚という側面だけでなく、街の歴史や環境といった観点からも自身の作品を捉えていました。作品制作の一連を通して、「アートとは何か?」に対する問いを観る者だけでなく、制作に参加する近隣民たちにも投げかけました。

 

アートを通して街並みや環境を配慮する彼らのコンセプチュアルな姿勢は、SDGsを重視するこれからの世界の先駆けともいえます。環境問題が国際的な課題となっている現代に、問題解決に値する試みを制作を通して提示してきた彼らの作品は、没後であっても今後さらに希少価値が高くなりそうです。

 

現在のクリスト作品の相場は、数万円から数十万円まで様々あります。また、クリスト作品の主な特徴は布のため、布が縫い付けられているコラージュ作品の人気が高いといえます。

 

 

 

クリストの作品は強化買取中

 

半世紀にもわたるキャリアの長さ、そして、美術ファンだけでなく環境や政府、ときには軍部までも制作にあたって影響を及ぼしたクリストの作品は、未来を先取ったコンセプチュアルなものです。彼らのプロジェクト自体は作品として残っていないため、市場ではドローイングやコラージュが売買されています。

 

当店では現在クリスト作品の買取を強化しています。アート作品は価値の判断が難しいため、スタッフが念入りに査定いたします。

 

情報参考サイト

日本現代美術振興協会

モダンアート協会

MOMA

東京都現代美術館

文化庁

文部科学省