ダミアン・ハーストとはどんなアーティスト?死をテーマとする代表作や作品の落札価格を徹底解説

2022/03/14 ブログ

ダミアン・ハーストとはどんなアーティスト?死をテーマとする代表作や作品の落札価格を徹底解説

Damien Hirst_Natural History

現代アートの買取ならTAPIR

 

ダミアン・ハーストは、「YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)」の中心人物として1990年代に有名になり、現在でも第一線で活躍し続けているイギリスのアーティストです。

 

今回は、実業家、アートコレクターとしての顔も持ち、非常にセンセーショナルなスタイルで何かと話題になるダミアン・ハーストについて、略歴や代表作品などを幅広く解説します。

 

 

 

ダミアン・ハーストとは?略歴紹介

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

ダミアン・ハーストは、1965年生まれのアーティストです。イングランド南部の都市ブリストルで生まれたのち、北部のリーズで育ちました。両親が離婚したり、その後万引きにより逮捕されたりしたことから考えると、ダミアン・ハーストの幼少期は順風満帆とは言いかねるものでした。しかし、絵が得意であったダミアン・ハーストはその才能を生かしてリーズ美術大学へ入学し、アーティストへの道を一歩踏み出します。

 

 

1988年:廃ビルで学友たちと展覧会「Freeze」を自主開催し、同窓生15人の出展アーティスト選定・資金調達・コレクターの招待・カタログ制作までを敢行

 

リーズ美術大学で学んだあと、ダミアン・ハーストは1986年にロンドン大学のゴールドスミス・カレッジ美術学部へ入学して学びを深めました。在学中の1988年、ダミアン・ハーストは仲間のアーティストを誘って展覧会を自主企画し、テムズ川のほとりにある廃ビルで「Freeze(フリーズ)」展を開催します。当時、まだ無名のアーティストが自らを売りこむために本格的な展覧会を企画するのは珍しいことでした。

 

 

1991年:初の個展を開催、生き物を使用し「愛とリアリズム・夢・理想・シンボル・生と死」に基づいて構築

 

1991年、ダミアン・ハーストはロンドンで初個展『 In and Out of Love』を開催します。約1か月行われたこの展覧会では、蝶を使ったインスタレーション作品などが展示されました。ダミアン・ハーストは、自身が受けたインタビューで「愛とリアリズム・夢・理想・シンボル・生と死」に基づいてこの展覧会を構築したと語っています。

 

また、現代美術の収集や販売を行っていたチャールズ・サーチがスポンサーとなり、翌年の1992年には最初のYBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)の展覧会も開催されました。

 

ダミアン・ハーストの代表作『1000年』の制作が1990年、『生者の心における死の物理的不可能性』の制作が1991年であったことからも、この頃にはすでに生や死を省察する彼独自のスタイルが確立していたといえます。

 

 

1993年:イギリス代表として国際美術展覧会ヴェネツィア・ビエンナーレに出展し、"Mother and Child, Divided"を出品

 

1993年、ダミアン・ハーストはイタリアで2年に1度開催される国際美術展覧会ヴェネツィア・ビエンナーレに作品を出品しました。ヴェネツィア・ビエンナーレは、世界中の国が威信をかけて競い合うことから「美のオリンピック」とも呼ばれています。

 

この大規模展覧会に英国代表として参加したダミアン・ハーストは、牛と子牛がそれぞれ縦に切断されてホルマリンの充満した透明ケースに入っている『Mother and Child, Divided(母と子、分断されて)』という作品を出品します。大変ショッキングなこの作品は、ヴェネツィア・ビエンナーレにおいて大いに注目されました。

 

 

1995年:イギリスで現代美術のアーティストへ贈られるターナー賞を受賞

 

ヴェネツィア・ビエンナーレに出品した『Mother and Child, Divided』により、ダミアン・ハーストは1995年にターナー賞を受賞しました。ターナー賞は、19世紀イギリスの画家J・M・W・ターナーにちなんだ賞で、イギリスで最先端の芸術家に贈られます。

 

イギリスの国立美術館テート・ブリテンでは、毎年授賞式のシーズンにターナー賞にちなんだ展覧会が開催されて話題となります。ダミアン・ハーストの『Mother and Child, Divided』が展示されたときには、鑑賞者をギョッとさせる奇抜な作品が大論争を巻き起こしました。

 

 

2000年:イギリスでも最重要の芸術家とみなされるようになり、オークションや新作の販売価格は、現存する美術家の中でも最も高価な内の一人に入っている。

 

2000年以降、ダミアン・ハーストはイギリスにおける最も影響力のある現代アーティストとして、地位を確立します。2003年に開催した個展「Romance in the Age of Uncertainty(不安の時代のロマンス)」や2009年の「No Love Lost(ノー・ラヴ・ロスト)」などはいずれも話題を呼び、2012年にはテート・モダンで初の大回顧展も開催されました。

 

また、2017年に開催された大規模個展「Treasures from the Wreck of the Unbelievable(難破船<アンビリーバブル号>の宝物)」では、架空の難破船から発掘された宝物を展示するというユニークなコンセプトが注目されました。

 

ダミアン・ハーストは、1997年に自らのスタジオを法人化して「Science Ltd.」を設立し、ビジネスの領域でも成功をおさめています。世界一豊かな美術家とも言われるダミアン・ハーストは、2007年にイギリスの人気アート雑誌『Art Review』において、「アート界の有力者番付1位」にも選ばれました。ダミアン・ハーストは、現在もアーティスト、実業家、アートコレクターとしてマルチに活躍中です。

 

 

 

「ニューポート・ストリート・ギャラリー」でダミアン・ハースト作品の鑑賞が可能

 

ニューポート・ストリート・ギャラリーは2015年の10月にオープンしたギャラリーで、ダミアン・ハーストが集めた美術コレクション約3,000点を、彼自身の企画、管理のもとで無料公開しています。建物は20世紀初頭に建築されたアトリエを利用しており、「カルーソ・セント・ジョン」というイギリスの建築チームが一部改築・デザインしました。

 

白一色で統一される6つの展示室では、ダミアン・ハーストのコレクションした美術作品(バンクシーやピカソなどのもの)が無料公開され、ダミアン・ハースト自身がデザインしたレストランでは、彼の代表作品のひとつである「Medicine Cabinets」や「Kaleidoscope paintings」を鑑賞することもできます。併設されるショップでは作品の購入も可能です。

 

ニューポート・ストリート・ギャラリーは、ロンドンのランベス宮殿や「ビーコンズフィールド・コンテンポラリー・アート」という人気のアートギャラリーの近くにあります。定期的に企画展も行われており、毎回現代アートを愛する多くの人々がこのギャラリーを訪れています。

 

 

 

ダミアン・ハーストの作品の世界観|Natural History

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

ダミアン・ハーストといえば、「Natural History」という牛や羊などをホルマリン漬けにしたシリーズ作品が有名です。これらの作品は「生と死の関係性」をテーマとしており、ときに鑑賞者をギョッとさせるようなセンセーショナルな力を持っています。学生時代に遺体安置所で働いていたことが、このような「生と死の関係性」にスポットを当てた作品を作るきっかけになったともいわれています。

 

1980年代末から1990年代にかけてのイギリスは、不況、薬物中毒、エイズなどが社会問題となっていた時期でもあり、人々が「死」を身近に考えざるを得なかった時代でもありました。こういった社会背景を映し出す鏡として、ダミアン・ハーストの作品は当時の人々の心を深く揺り動かしたと考えられます。

 

また、ダミアン・ハーストは、YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)の中心人物でもあります。YBAとは、サラ・ルーカスやトレイシー・エミンなどのような1990年代に20代後半から30代であったイギリスのアーティストたちを指します。YBAの特徴は、若者文化と強く結びついた視覚的な強烈さと少々の悪趣味さです。ダミアン・ハーストは、このようなムーブメントを牽引した存在ともいえるでしょう。

 

多くの人に衝撃を与えたダミアン・ハーストの「Natural History」は、映画や漫画、音楽などの世界にも幅広く影響をもたらしました。

 

 

 

ダミアン・ハーストの代表作品を解説

 

ダミアン・ハーストには、「Natural History」以外にもいくつかの代表作品があるので紹介します。

 

 

1000年

 

『1000年(A Thousand Years)』はダミアン・ハーストの初期の作品で、1990年に制作されました。ダミアン・ハーストが初めて動物を使って制作した作品でもあります。

 

この作品では、大きなガラスケースを穴の開いたガラス板で仕切り、ふたつの空間が作られています。そして、一方には牛の頭と殺虫灯、もう一方にはウジを孵化させるための箱が設置されており、ハエが穴を通ってふたつの空間を行き来します。牛の頭をエサとして成長したハエが、殺虫灯に当たって死ぬまでの様子を表現した作品です。

 

 

スポットペインティング

 

Art Stage Singapore : 26 Jan 2013

出典元:flickr

 

「スポットペインティング(Spot Painting)」は、白い背景にカラフルなドットが等間隔に並べられているシリーズ作品です。見るからに奇抜な「Natural History」のシリーズや『1000年』と違ってかわいらしい印象さえ与える作品ですが、このドットは実は薬や覚せい剤をあらわしているといわれています。「生と死の関係性」にスポットを当てたダミアン・ハーストならではの作品といえるでしょう。このシリーズでは、薬の名前が作品のタイトルとなっています。

 

薬をモチーフとした作品には、他にも1988年に制作したインスタレーション作品や、1998年に発表した本物の薬局そっくりに作ったレストラン『Pharmacy』などがあり、ダミアン・ハーストが薬の持つ形状や力に魅了されていることがうかがえます。

 

 

 

"Cerisiers en fleur" de Damien Hirst (Fondation Cartier, Paris)

出典元:flickr

 

ダミアン・ハーストの『桜』は、ポスト印象派やアクションペインティングなどの表現から影響を受けて制作された作品群です。青空を背景にして咲き誇る桜が色彩豊かに描かれたこれらの作品には、儚く美しい桜に人生との類似性を見出す日本人の死生観に通じるものがあるようにも感じられます。

 

2022年3月、国立新美術館にて国内初の大規模個展「ダミアン・ハースト 桜」が開催されます。ダミアン・ハーストの新境地を身近に楽しみたい人は、ぜひ足を運んでみましょう。

 

国立新美術館 企画展 「ダミアン・ハースト 桜」 の詳細はこちらからご確認ください。

 

 

 

ダミアン・ハーストの作品の落札価格とその価値について

 

ダミアン・ハーストの作品は、非常に高額で取引されることで有名です。近年行われた高額での取引を紹介します。

 

 

2008年:The Golden Calf|約19億円

 

2008年9月、サザビーズがロンドンで行ったオークションで、ホルマリンを充満させたケースに子牛を入れた『The Golden Calf』という作品が約19億円という高値で落札され、注目を浴びました。

 

このオークションでは、『The Golden Calf』を含めてダミアン・ハーストの作品223点が落札され、落札総額は約211億円に達しています。オークションが開催されたのがリーマンショック直後であったにもかかわらず、このような高値で取引されたのは驚くべきことです。また、1人の芸術家の作品落札総額としては最高記録を樹立する結果となりました。

 

 

2007年:Lullaby Spring |約22億円

 

2007年のサザビーズのオークションで、ダミアン・ハーストの『Lullaby Spring(子守唄の春)』が、約22億2,000万円で落札されました。

 

『Lullaby Spring』は2002年に制作された作品で、ステンレスとガラスでできたキャビネットに6,136以上の薬が規則正しく陳列されています。あたたかみのあるタイトルと、どこか冷たい印象の大量の薬の対比が興味深い作品です。

 

 

 

ダミアン・ハーストに関するよくある質問

 

最後に、ダミアン・ハーストにまつわるよくある質問に答えます。

 

 

ダミアン・ハーストの最新NFTプロジェクト「The Currency」とは?

 

ダミアン・ハーストの「The Currency(通貨)」は、「物理的作品(現実世界に存在する一般的な作品)」と「NFT(コピーできないデジタル上の作品)」の両面から制作された作品です。

 

まずは、エナメル塗料でカラフルなドットが描かれたA4サイズの物理的な作品が、1万点作られました。これらは貨幣のように均一な価値を持っています。その後、NFTの「The Currency」が販売され、NFTの購入者はそれをそのまま持ち続けるのか、NFTを物理的な作品と交換するのか、期限内(2022年7月27日まで)に決断することを迫られます。

 

所有者がどちらをえらんだとしても、選ばれなかった方の作品は破棄されてしまうので、慎重に選ばなければなりません。ダミアン・ハーストの「The Currency」は人々にそれぞれの価値観を問う、参加型のプロジェクトなのです。

 

 

ダミアン・ハーストのインスタ(Instagram)アカウント

 

ダミアン・ハーストはインスタグラムで、展覧会の準備の様子や作品制作の過程などを発信しています。ダミアン・ハーストのファンや、現代アートに関心を持っている多くの人が彼のアカウントをフォローしています。興味のある人はチェックしてみましょう。

 

ダミアン・ハーストのインスタアカウントはこちらです。

 

 

 

ダミアン・ハーストの作品は強化買取中

 

ダミアン・ハーストの作品をお持ちで、売却を検討している方がいらっしゃいましたら当社にご相談ください。丁寧に鑑定いたします。

 

また、鑑定経験が豊富な美術品買取専門店、株式会社獏では、ご希望により簡単・手軽・便利のすべてを実現したLINE査定も可能です。

 

LINE査定なら、わざわざ店舗に足を運んだり直接スタッフと話したりする必要もありません。余計な手間や時間を一切かけずに査定できるので、仕事や家事で忙しい方に人気です。

 

美術品や骨董品の売却をご検討の方は株式会社獏にご相談ください。