ダニエル・アーシャムとは?ポケモンのコラボ作品や「フィクションとしての考古学」に基づく世界観について解説

2022/10/22 ブログ

ダニエル・アーシャムとは?ポケモンのコラボ作品や「フィクションとしての考古学」に基づく世界観について解説

ダニエル・アーシャムは、1980年にアメリカで生まれた現代アーティストです。幼い頃より建築に興味を持ち、その空間を活かした作風で知られています。

アートシーンのみならず、音楽業界やファッション業界からも注目されていて、ポケモンやディズニー、ティファニーとのコラボレーション作品で有名です。

 

 

 

ダニエル・アーシャムの略歴

 

ダニエル・アーシャムは、1980年にアメリカで生まれた現代アーティストです。幼少期に経験したハリケーンをきっかけに、空間に興味を持ち、アーティストを目指しました。

歴史的に有名な振付家のマース・カニンガムのステージデザインを手がけたり、ブラックミュージックの雄であるファレル・ウィリアムスが開催する個展にも出展しました。

また、ポケモン、DIORやティファニーといった名だたるブランドとのコラボアイテムも数多く制作しています。アートシーンのみならず、多くのミュージシャンやファッションデザイナーからも注目されているアーティストです。

 

 

1980年:アメリカのオハイオ州クリーブランドに生まれる

 

ダニエル・アーシャムは1980年にアメリカ・オハイオ州にて生まれました。12歳の時にハリケーンが自宅を襲い、自宅を再建築した際に空間に興味を持ち、アーティストを目指します。

オブジェそのものではなく、オブジェを通して空間や世界観をいかに作るか、といったアーシャムの作風は、そのような経験から着想を得ました。

これまでのアートではオブジェが意識されていましたが、建築的な視点からオブジェを制作する彼の発想はとてもユニークです。

 

 

2003年:ニューヨークの私立大学クーパー・ユニオンでゲルマン・トラスト・フェローシップ賞を受賞

 

その後、ダニエル・アーシャムは、ニューヨークにてクーパー・ユニオンに通いました。クーパー・ユニオンは、アメリカでは最も難しいとされる芸術学部を持つ大学として知られています。現在は違いますが、アーシャムの学生時代は授業料が無料でした。

創設者より連綿と引き継がれた先端的な教育方針の大学では、彼は類い稀な才能を持つ友人と切磋琢磨できたことでしょう。

そして、2003年に同校よりゲルマン・トラスト・フェローシップ賞がアーシャムに贈られました。

 

 

2004年:フランスのギャラリー「ペロタン」でグループ展「Miami Nice」に参加

 

ダニエル・アーシャムは大学卒業後、学生時代の仲間とともにマイアミにて「The House」というスペースにて活動を始めました。そこで彼はフランスの現代美術ギャラリー「ペロタン」と出会います。

また、同時期にアーシャムは振付家のマース・カニンガムとも出会い、カニンガムのステージデザインを依頼されました。そして、カニンガムのダンスカンパニーとともに世界を巡回しました。

マース・カニンガムはモダンダンスを代表する振付家のひとりです。空間の使い方が重視されるダンス界の重鎮だからこそ、カニンガムはアーシャムの際立った才能を見抜いたのでしょう。

 

 

2007年:建築家アレックス・ムストーネンと「スナーキテクチャー」を設立

 

その後、ダニエル・アーシャムは2007年にパートナーの建築家であるアレックス・ムストーネンとともに「スナーキテクチャー」を設立します。

彼らはこのプロジェクトで、建築と機能性、デザイン性、ファッション性など、幅広いジャンルを横断しながら作品を制作しました。

彼らの活動は、アーティストだけでなく、ファッションデザイナーやミュージシャンといったジャンルを問わず、多くの著名人を魅了しました。

また、伝統と革新、異文化を取り入れたアーシャムの作風は、後のポケモンやティファニー、DIORといった著名ブランドとのコラボにも繋がるように思えます。

 

 

2014年:ファレル・ウイリアムスが手がけた展覧会「GIRL」に参加

 

ダニエル・アーシャムは、2014年に音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムスが手がけた展覧会「GIRL」に参加しました。

ファレル・ウィリアムスは、ブラックミュージックの代表的アーティストであるN.E.R.Dやザ・ネプチューンズのメンバーです。

この展覧会はかつてホテルだったパリのギャラリーで開催されました。ダニエル・アーシャムのほか、KAWSや村上隆、Yoko Ono、シンディ・シャーマンなどの世界を代表する名だたるアーティストが参加しました。

 

 

2022年:ギャラリー「ペロタン東京」で個展「31st Century Still Lifes (31世紀の静物)」を開催

 

2022年8月〜10月まで東京・六本木のギャラリー「ペロタン東京」にてダニエル・アーシャムの個展「31st Century Still Lifes (31世紀の静物)」が開催されました。この展覧会で彼は3つの新シリーズを発表し、ギャラリー内の3つのスペースにて彼の新作を鑑賞できました。

また、同年2月にはポケモンとコラボしたアートプロジェクト第3弾「A Ripple in Time / 時の波紋」を渋谷や中目黒、六本木といったカルチャースポットにて開催しました。アーティスティックにアレンジされたポケモンたちが見どころでした。

 

 

 

ダニエル・アーシャムの作品の世界観

 

ダニエル・アーシャムの作品に通底するテーマは、「フィクションとしての考古学(Fictional Archeology)」です。

有名ブランドやキャラクターに対して人々が抱くイメージを覆し、それらが破壊された未来にいるような感覚を抱かせます。

代表的な作品はポケモンのシリーズでしょう。白い彫刻のピカチュウの所々が、破壊されているかのように作られています。

また、ダニエル・アーシャムの作品では「白」が徹底的に用いられています。これは、彼の色覚異常によるもので、「白」というと高尚なイメージがしますが、彼の作品で用いられる「白」は、ストリートファッションに近しく、親しみを感じさせます。

そのような魅力が、アートファンだけでなく、音楽シーンやファッション界の重鎮を虜にしているのでしょう。

 

 

 

ダニエル・アーシャムの代表作品を解説

 

ここでは、ダニエル・アーシャムの代表作品である「Future Relic(未来の遺物)」シリーズ、「Falling Clock」、「Foggy(霧)」を紹介します。

ここで紹介する作品は彼の作風が如実に表れているものから、それを覆すものまであり、彼の表現の幅の広さを窺い知れます。

 

 

Future Relic(未来の遺物)シリーズ

 

「Future Relic(未来の遺物)」シリーズでは、ダニエル・アーシャムの類い稀なるセンスを垣間見ることができます。部位の欠けている白いキャノンのカメラが、まるで前時代の遺物かのように感じられます。

現代を象徴するモノを、あえて200年前に発見されたかのように見せ、観る者を未来へ誘うのが彼の作品の特徴と言えるでしょう。

また、この作品を制作するにあたり、ダニエル・アーシャムは、「人々は建築物を強固なものだと考えている。まさか溶けるものだと考えてはいないだろう。」と述べています。

このような発想は、幼少期にハリケーンを経験した彼自身の独特の感覚から由来しているのでしょう。

 

 

Falling Clock 

 

「Falling Clock」は言葉通り、傾いた時計をその場の雰囲気ごと捉えた作品と言えるでしょう。

しかし、瞬間を切り取ったものといえ、ダニエル・アーシャムの建築的な視点で、立体的に表現されているのが特徴で、壁面から布が垂れ下がっています。単なる時計を布によってドラマチックに演出させることによって、時計に時間的・空間的な広がりを持たせています。

 

 

Foggy(霧)

 

「Foggy(霧)」は、パリのポンピドゥセンターが所蔵する作品です。空間的な作品を制作することで知られるダニエル・アーシャムですが、この作品はアクリル絵画です。

大自然を描いた作品で、ポケモンや様々なラグジュアリーブランドとのコラボレーション作品で知られるポップアーティストとしての側面の反面で、「Foggy(霧)」では珍しく、静寂や落ち着きを感じさせます。

 

 

 

ダニエル・アーシャムが携わったコラボレーション企画

 

ダニエル・アーシャムは、ポケモンやディズニー、そしてティファニーなどの名だたるキャラクターやラグジュアリーブランドとのコラボレーションで知られています。

誰もが知るキャラクターやブランドに対する既存のイメージを覆し、新たなブランドイメージを提示させるパワーが、彼の作品から感じられます。

 

 

ダニエル・アーシャム×ポケモン

 

ダニエル・アーシャムは、代表的なポケモンをモデルにしたコラボレーションイベントを開催しました。

耳や身体の一部が欠けている白いピカチュウのオブジェを観たことがある方も多いのではないでしょうか?このピカチュウは、小さなフィギュアとして発売されただけでなく、ユニクロのUTとのコラボTシャツにもなりました。

日本人にも馴染みの深いアニメゆえ、ダニエル・アーシャムとポケモンのコラボレーションイベントは賑わいをみせました。2022年2月には東京にて「A Ripple in Time / 時の波紋」が開催されました。

 

 

ダニエル・アーシャム×ティファニー

 

ダニエル・アーシャムは、有名キャラクターとのコラボレーションだけでなく、ラグジュアリーブランドとのコラボレーションでも知られています。

例えば、ティファニーとのコラボレーションでは、アクセサリーが梱包されている青いボックスを「3021年の未来から届いたブルーボックス」というテーマで作っています。

ティファニーの伝統をなすアイテムが、ダニエル・アーシャムの感覚を通して再考されていて、ティファニーブルーで知られる色合いが独特のニュアンスで輝きをなしています。

また、ダニエル・アーシャムは、ティファニーだけでなく、ルイ・ヴィトンやDIOR、adidas、最近ではRIMOWAともコラボレーションしています。

 

 

ダニエル・アーシャム×ディズニー

 

ダニエル・アーシャムは、2020年にディズニーとのコラボレーション企画として、1936年に公開された「ミッキーの夢物語」にインスパイアされたアイテムを限定販売しました。

このアイテムは「ミッキーの夢物語」で、ミッキーが鏡を通り抜ける1シーンから着想を得たものです。

ミッキーの俊敏な動きを細やかに写しとるようなダニエル・アーシャムの表現がみどころです。

ポケモンとのコラボレーション然り、誰もが知るキャラクターのエッセンスを掴み、そのうえで彼の世界観を演出することによって、そのキャラクターの新たな一面を生み出しています。

 

 

 

ダニエル・アーシャムの作品の落札価格とその価値について

 

ダニエル・アーシャムの作品は、2020年にクリスティーズが開催したオークションに出品され、多くのアートファンの注目を集めました。彼にフォーカスしたオークションは、これまでの作品が出品され、売上は母校のクーパー・ユニオンに寄付されました。

 

 

2020年:A Pair of Pink Quartz & Blue Calcite Eroded Rolling Stone Magazines|約688万円

 

2020年に、クリスティーズがダニエル・アーシャムの作品にフォーカスしたオークションを開催しました。そこでは「Future Relics」シリーズやポケモンとのコラボレーション作品など、彼の著名作品が数多く出品されました。

その中のひとつ「A Pair of Pink Quartz & Blue Calcite Eroded Rolling Stone Magazines」は、クォーツクリスタルであしらわれた音楽雑誌のローリング・ストーン誌です。

この作品は688万円で落札され、売上はダニエル・アーシャムの母校であるクーパー・ユニオンに寄付されました。

 

 

2020年:Bronze Eroded Basketball|約254万円

 

先と同様、2020年にクリスティーズが開催したオークションにて、「Bronze Eroded Basketball」が254万円で落札されました。この作品は、ブロンズ彫刻のバスケットボールがモチーフとなっていて、ダニエル・アーシャムの世界観が表出しています。

ローリング・ストーン誌然り、バスケットボールもアメリカでは歴史あるものです。アメリカの歴史を象徴するモチーフを、未来風にアレンジするダニエル・アーシャムの感覚はとてもユニークです。

 

 

 

ダニエル・アーシャムの作品の買取相場

 

ダニエル・アーシャムはポケモンやディズニーといった有名キャラクターや、ティファニーやDIORなどのラグジュアリーブランドとのコラボレーションで知られています。アートを越えて多岐にわたるジャンルとコラボレーションする現代アーティストのひとりです。

その買取相場は、数万円のものから、中には数十万円するものまで幅広くあります。比較的手頃な値段で購入できる作品が多いです。

 

 

 

ダニエル・アーシャムに関する豆知識(トリビア)

 

ここでは、ダニエル・アーシャムに関する豆知識を紹介します。彼は日本で展覧会を開催することが多く、作業着メーカー「寅壱」とのコラボアイテムを発売するなど、日本文化に親しみを持っているようです。

また、m-floのVERBALや三代目J SOUL BROTHERSのメンバーらとも親交が深く、彼らの作品を手がけるほど。

 

 

2016年以降、東京の現代美術ギャラリー「NANZUKA(ナンヅカ)」がダニエル・アーシャムの個展を隔年で開催

 

ダニエル・アーシャムは、2016年以降、東京で個展を開催することが多く、そのギャラリーのひとつとして渋谷の「NANZUKA(ナンヅカ)」が挙げられます。

また、六本木のギャラリー「ペロタン」でも彼の個展が開催されることが多く、先日アーシャムが来日してサイン会を行ったときは、平日の昼間にもかかわらず多くのファンが足を運びました。

 

 

 

ダニエル・アーシャムの作品は強化買取中

 

ダニエル・アーシャムは、これまでのアーティストに見られるようにオブジェを作るスタイルでありながら、オブジェを通した空間や世界観を表現することで注目されているアーティストです。

建築に興味があったからこそ、他のアーティストとは、異なる次元での表現ができたのでしょう。アートシーンのみならず、音楽アーティストやファッション業界でも多くのファンを魅了しています。

当店では現在ダニエル・アーシャム作品の買取を強化しています。アート作品は価値の判断が難しいため、スタッフが念入りに査定いたします。

 

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