ジャスパー・ジョーンズってどんな現代アーティスト?代表作「旗」や作品の買取価格ついて徹底解説
ジャスパー・ジョーンズってどんな現代アーティスト?代表作「旗」や作品の買取価格ついて徹底解説
ジャスパー・ジョーンズは、20世紀のアメリカで最も影響力を持った画家のうちのひとりです。ジャスパー・ジョーンズは、抽象表現主義の流れをくみつつもも、独自の作風を生み出し新しく展開されたポップアートの先駆者としても活躍しました。「旗」シリーズや「標的」シリーズのような代表的な絵画作品の他に版画や彫刻なども手がけています。
今回は、90歳を超えた現在も精力的に作品制作を続けるジャスパー・ジョーンズについて、彼の作品の魅力や作品の価値が上がり続けている背景などについてお話しします。
出典元:ウィキメディア・コモンズ
ジャスパー・ジョーンズ(Jasper Johns)の略歴
ジャスパー・ジョーンズは、1930年にジョージア州のオーガスタに生まれました。両親の離婚後は親族の家を転々として過ごしています。幼いころから絵を描くのが好きだったジャスパー・ジョーンズは、5歳頃にはすでに「芸術家になりたい」と思っていたそうです。
サウスカロライナ大学コロンビア校に通ったジャスパー・ジョーンズは、美術教師に促されて、1948年の後半にニューヨークに転居します。ニューヨークではパーソンズ美術学校に1学期通いましたが、アメリカ軍に徴兵されて朝鮮戦争中の2年間を従軍しました。ジャスパー・ジョーンズは、その間に仙台市にも駐屯しています。
1954年:兵役を終え絵画の制作を開始
兵役を終えたジャスパー・ジョーンズは、ニューヨークに帰ってくると同じく南部出身のロバート・ラウシェンバーグという芸術家に出会い、親しくなります。2人はやがて一緒に住むようになり、互いに刺激を与えあいながら自らの芸術を高めていきました。
この頃、ジャスパー・ジョーンズは彼の代表作品である旗、数字などの「記号」をモチーフとした絵画をよく描きました。
1958年:ニューヨークにて初の個展を開催
ジャスパー・ジョーンズの初めての個展は、ニューヨークの美術商レオ・カステリのギャラリーで行われました。レオ・カステリがラウシェンバーグを訪れたときにジャスパー・ジョーンズの才能に気がつき、そこから個展につながったといわれます。
1958年に開催した彼の個展は大成功を収めます。ジャスパー・ジョーンズは若くまだあまり知られていなかったにもかかわらず、彼の3点の作品がニューヨーク近代美術館により購入されました。前代未聞のこの出来事によってジャスパー・ジョーンズは大きな注目を集めました。
1963年:現代パフォーマンス芸術財団(現在の現代美術財団)を創設
1963年、ジャスパー・ジョーンズは友人の前衛芸術家で作曲家でもあるジョン・ケージと共に、現代パフォーマンス芸術財団を設立しました。現在、現代美術財団(FCA)と呼ばれているこの財団では、今もさまざまな助成金制度を通じて、アーティストや芸術団体を支援しています。
その後、ジャスパー・ジョーンズはコネチカット州のシャロンに引っ越し、現在もそこで制作に励んでいます。
ジャスパー・ジョーンズの作品の特徴
ジャスパー・ジョーンズは、「アメリカ国旗」「標的」「地図」「数字」などの身の回りにある、ある意味ありふれた物をエンカウスティークという独特の技法で描いた画家です。 エンカウスティークとは、着色した蜜蝋を溶かして画面にのせることで絵を描くという古代の絵画技法です。半透明な色味と保存性が非常に高いことが特徴で、ミイラ肖像画にもこの技法が使われていました。
ジャスパー・ジョーンズが活躍した1950年f代のアメリカは、抽象表現主義からポップ・アートに時代が移り変わろうとする、過渡期を過ごしていました。このような流れの中で、ジャスパー・ジョーンズやロバート・ラウシェンバーグは、ふたつの時代を結ぶ非常に重要な役割を果たしました。
ジャスパー・ジョーンズは美しいものを描こうとしたわけでも、作品のなかで自分の感情を表現しようとしたわけでもありません。身のまわりにあるありふれたものに価値を見出して、感情をこめずにそのまま再現して見せました。
ジャスパー・ジョーンズやロバート・ラウシェンバーグが作品に込めた思いには、1910年頃に展開された「ダダイズム」(既存の秩序や常識を否定する芸術運動)との共通点があります。そのため、彼らの作品や思想は「ネオ・ダダ」とも呼ばれることもあります。
ジャスパー・ジョーンズの代表作
ジャスパー・ジョーンズは、身のまわりにありふれたもの、誰もが知っている馴染みのあるものを取り上げてアート作品に仕立て上げました。今回は、そんな彼が比較的初期に制作した代表的な作品を紹介します。
ジャスパー・ジョーンズはここに取り上げたものの他にも、クロスハッチを用いた作品やカテナリー曲線を取り上げた作品なども制作しており、現在も進化をとげながら制作を続けています。
「旗」シリーズ
『3つの旗』(1958年)
出典元:ウィキメディア・コモンズ
ジャスパージョーンズは、1954年に自分がアメリカ国旗を描いている夢を見ました。それがきっかけとなり、それ以降アメリカ国旗を描いた作品を多く制作しています。
このシリーズには、星条旗をそのまま描いたものに加えて、全面白い色で描かれたものや、国旗を3つ重ねたものなどもあり、バリエーション豊かな展開となっています。
「標的」シリーズ
標的もジャスパー・ジョーンズが多く用いたモチーフのうちのひとつです。標的が黄色と青で交互に塗りわけられており、背景には赤い色が塗られているものが有名ですが、他にも白い色で描かれたものやピンク、白、緑などで描かれたものもあります。
標的の上(画面上部)に立体的なオブジェを配置した「4つの顔のある標的」や「石膏の型のある標的」といった個性的な作品もあります。
「地図」シリーズ
ジャスパー・ジョーンズが地図をモチーフとしたのは、ロバート・ラウシェンバーグから 地図を贈られたことがきっかけだったといわれています。四角いキャンバスに描かれた作品に加えて、ダイマクション地図(地球を多面体として捉えたうえでそれを展開した地図)に描かれたものがあります。
「数字」シリーズ
ジャスパー・ジョーンズは数字を扱った作品も多く描いていますが、これらは数字の持つ意味よりもその形に着目して描かれているといわれています。0~9までの数字を順番に繰り返したものや、複数の数字を重ねるように配置したものなどがあります。
ジャスパー・ジョーンズの受賞歴
国民芸術勲章
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジャスパー・ジョーンズは、これまでに母国のアメリカだけでなく、世界中で数々の賞を受賞してきました。主だったものは次の通りです。
1988年 | イタリアで行われた第43回ヴェネツィア・ビエンナーレにアメリカ代表作家として出品し、国際大賞を受賞 |
1990年 | アメリカの国民芸術勲章を受章 |
1993年 | 日本の高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門受賞 |
2011年 | 当時のアメリカ大統領であるバラク・オバマ氏より大統領自由勲章を受章 |
ジャスパー・ジョーンズの作品の落札価格とその価値について
アメリカを代表するアーティスト、ジャスパー・ジョーンズ。彼の作品は近年、高額で取引され話題になっています。それでは、驚きの高値が付いた作品について紹介します。
2010年:「旗(1958年)」がジョーンズ作品の取引金額最高額で売却|約120億円
2010年、美術商レオ・カステリの息子ジーン・カステリにより、ジャスパー・ジョーンズの人気シリーズ「旗」のうちのひとつが約120億円という驚きの金額で売却されました。この金額は、ジャスパー・ジョーンズの作品のなかで過去最高の取引額となりました。
2014年:「旗(1983年)」|41億6300万円
2014年、サザビーズオークションにて、ジャスパー・ジョーンズの「旗」が41億6,300万円という高値で落札されました。
2006年:「間違った始まり(1959年)」が価格上昇|78億円
2006年、サザビーズオークションにて、ジャスパー・ジョーンズの「間違った始まり」が78億円で売却されました。1988年に約18億5,000万円で売却されたものですが、18年で4倍以上に値上がりしています。
ジャスパー・ジョーンズ現在の活動
セント・マーティン島
出典元:ウィキメディア・コモンズ
ジャスパー・ジョーンズは、 現在コネチカット州のシャロン及びマーティン島に暮らしています。もともとマスコミが好きではなかったジャスパー・ジョーンズには、都会の喧騒を離れた田舎での静かな暮らしが心地よいのでしょう。
ジャスパー・ジョーンズは田舎の生活によくなじみ、家庭菜園で作った野菜を食べたり、愛犬の散歩をしたりしながら、作品制作に打ち込んでいるそうです。
今後のジャスパー・ジョーンズの作品の価格
ジャスパー・ジョーンズの作品価格は現在高騰中であり、年々販売価格が値上がりしているという状況です。アメリカを代表するアーティストのひとりとして多くの賞や勲章を受けていることに加えて、近年オークションで高値で取引されており話題となっていることが、価格高騰の原因のひとつと言えるでしょう。
少しずつ作風を変化させながら進化を続けるジャスパー・ジョーンズの作品から目が離せません。
ジャスパー・ジョーンズの作品は現在強化買取中
ジャスパー・ジョーンズは、抽象表現主義からポップアートに移行する流れの中で、非常に重要な役割を果たしたアーティストです。
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情報参考サイト
・MOMA
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