ジェフ・クーンズとはどんな現代アーティスト?代表作品が約100億円で落札された現代美術家の略歴や買取相場について解説

2022/05/20 ブログ

ジェフ・クーンズとはどんな現代アーティスト?代表作品が約100億円で落札された現代美術家の略歴や買取相場について解説

ジェフ・クーンズ_バルーン・ドッグ

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ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)の作品がいま、世界中で注目されています。ジェフ・クーンズは誰もが知っているモチーフを大胆に変換し、キッチュ(安っぽい、派手という意味)なイメージをアート作品に昇華させ、世間をあっと言わせることに成功しました。

 

今回はバルーン・アートのように見える巨大なステンレス彫刻作品で一世を風靡し、現在も活躍中のジェフ・クーンズについて、略歴や作品の価値を幅広く紹介します。

 

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ジェフ・クーンズの略歴

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

まずは、ポストモダニズムの代表的なアーティスト、ジェフ・クーンズの略歴を追っていきましょう。

 

 

1955年:アメリカのペンシルベニア州で生まれ、幼少期はスペインの画家であるサルバドール・ダリを崇拝していた

 

ジェフ・クーンズは、1955年にアメリカのペンシルベニア州ヨークで生まれました。ヨークはペンシルベニア州の州都ハリスバーグの南側にある都市で、比較的経済的格差の激しい地域です。

 

ジェフ・クーンズの父親は家具屋兼インテリアコーディネーター、母親はお針子を営んでいました。ジェフ・クーンズ自身も放課後にお小遣いを稼ぐため、キャンディなどの訪問販売をしていたといいます。

 

ジェフ・クーンズは10代の頃、シュルレアリスムで有名なスペインの画家、サルバトール・ダリを尊敬しており、ダリが滞在していたニューヨークのセントレジスホテルを直接訪ねたことがあります。ジェフ・クーンズの並外れた行動力がうかがえるエピソードです。

 

 

1976年:シカゴ美術館附属美術大学やメリーランド美術大学で絵画を学び、ニューヨークにて芸術家としてのキャリアを積む

 

シカゴ美術館附属美術大学(The School of the Art Institute of Chicago)やメリーランド美術大学(Maryland Institute College of Art)で絵画を学んだジェフ・クーンズは、1976年に大学を卒業します。卒業後は在学中に出会った画家、エド・パシュケのもとでアシスタントとして働きました。

 

1977年にニューヨークへ移ったジェフ・クーンズは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で働きながら創作活動に励みます。ダリに心酔していたジェフ・クーンズは、ダリへの憧れからか、この頃髪を赤く染めて鉛筆で口ひげを書くこともあったようです。

 

 

1980年代:芸術家としての地位を確立、メディアが中心の時代においてアートの意味を追求する芸術家の1人として活躍

 

ジェフ・クーンズの作品は新時代のアートとして、次第にニューヨークのアート市場で注目されるようになっていきました。

 

1980年代の半ばごろ、芸術家としての地位を確立したジェフ・クーンズは、ソーホーのロフトにスタジオを持ちます。そこでは、かつてアンディ・ウォーホルが「ファクトリー」と呼んだスタジオと同じように、多くのスタッフが分担して作業にあたり、作品を制作しました。

 

この頃に制作したジェフ・クーンズの初期の名作には、1985年の『スリー・ボール・50/50・タンク(Three Ball 50/50 Tank)』に代表される「平衡」シリーズや、1988年の『マイケル・ジャクソンとバブルス(Michael Jackson and Bubbles』に代表される「バナリティ」シリーズなどがあります。

 

 

1994年:代表作である「セレブレーション」シリーズの制作を始める

 

"Balloon Flower" by Jeff Koons

ドイツ、ベルリンにある『バルーン・フラワー』

出典元:flickr

 

ジェフ・クーンズは、1994年から「セレブレーション」シリーズの制作を開始します。「セレブレーション」シリーズは、誕生日、結婚記念日などの特別なお祝いの日にもとづいて制作される巨大彫刻シリーズで、なかでも『バルーン・ドッグ』『破壊された卵』『バルーン・フラワー』などが有名です。

 

「セレブレーション」シリーズでは、その中に20もの細かいシリーズが考案され、さらにそれらに5つの異なるカラーバージョンが設定されました。しかし、資金不足などで制作が難航し、一時は2人のスタッフを残して多くのスタッフを解雇するまでに追い込まれたというエピソードも残っています。

 

最終的に完成した「セレブレーション」シリーズは、世界中の美術館やパブリックスペースに展示されました。

 

ジェフ・クーンズは、2001年から『イージーファン=イーサリアル(Easyfun-Ethereal)』というコラージュの手法を使った絵画作品のシリーズを、2010年代から「セレブレーション」シリーズを磁器によって再現するプロジェクトを手がけています。今後も彼の活躍から目が離せません。

 

 

ジェフ・クーンズの作品の世界観

 

ジェフ・クーンズはキッチュなイメージをアートの世界に持ち込んで世間を騒がせたアーティストです。「陳腐」という意味を持つ初期のシリーズ「バナリティ(Banality)」を制作していた頃には、すでにその姿勢を確立していたといえるでしょう。

 

ジェフ・クーンズは、ポストモダニズムの代表的な作家でもあります。 ポストモダンとは、人々が共通する大きな価値観を消失し、それぞれの趣味に生きている現代社会をふまえて生まれた芸術運動です。ポストモダンはモダン(近代)からの脱却を目指した運動とも捉えられていますが、ジェフ・クーンズは自らの制作においてそのような意図は持っておらず、見たままの作品をそのまま楽しんでほしいと述べています。

 

ジェフ・クーンズは、その作品で時代の寵児となるとともに多くの論争を巻き起こして物議をかもしました。ジェフ・クーンズの作品には熱狂的なファンも多く、近年オークションで高値で取引されていることからますます注目が高まっています。

 

 

ジェフ・クーンズの代表作品を解説

 

それでは、ジェフクーンズの代表的な作品を3つ紹介します。

 

 

スリー・ボール・50/50・タンク

 

Jeff Koons: Now

出典元:flickr

 

『Three Ball 50/50 Tank(スリー・ボール・50/50・タンク)』は、ジェフ・クーンズが制作を開始した「平衡」シリーズの中で、最も有名な作品です。「平衡」シリーズとは、ノーベル賞受賞経験のある物理学者リチャード・P・ファインマンの助けを借りて生み出された初期の代表的なシリーズです。

 

1985年に制作された『Three Ball 50/50 Tank』では、蒸留水が半分まで入ったタンクのなかを、オレンジ色の3つのボールが平衡に浮いています。『Three Ball 50/50 Tank』に先駆けて1983年に制作された『Three Ball The Total Equilibrium Tank』では、液体で完全に満たされたタンクのなかに、3つのボールが浮かぶように存在しています。

 

この作品によって、ジェフ・クーンズは「ネオ・ジオメトリック・コンセプチュアリズム」(ネオ・ジオとも呼ばれる。)の旗手としても注目されました。ネオ・ジオとは日用品などの幾何学的なイメージを使って現代社会を批判的に表現する、1980年代後半に活躍したアーティストの総称です。

 

 

パピー

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

ジェフ・クーンズは、画商からドイツのバート・アーロルゼンにある城に展示する作品を依頼されました。そして1992年に制作されたのが高さ約13mの巨大な立体作品『Puppy(パピー)』です。

 

『Puppy』は12.4mの骨組みにさまざまな花を植え込んで、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアの子犬(パピー)の形に仕上げられています。完成した『Puppy』はアーロルゼン城の中庭に設置され、多くの人を魅了しました。

 

1995年にこの作品は解体されて、より長持ちするステンレス鋼の骨組みと内部の灌漑システムを備えて再建されました。現在『Puppy』は、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館のテラスに設置され、ビルバオ市の象徴として愛されています。

 

 

バルーン・ドッグ

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

『バルーン・ドッグ』は、ジェフクーンズの代名詞ともいえる「セレブレーション」シリーズのなかで、最も有名な作品の一つです。「セレブレーション」シリーズは、ステンレスを用いた彫刻シリーズで、誕生日、結婚記念日などのお祝いの日にもとづいて制作されました。

 

『バルーン・ドッグ』には、ブルー、マゼンタ、オレンジなどの異なる5色の作品が存在します。『バルーン・ドッグ』は専門家から「非常に永続性のあるモニュメント」と評されて注目を浴び、ジェフ・クーンズ自身はこの作品について「私たちを、今この瞬間だけでなく遠い過去とも結び付けてくれる作品」と語っています。

 

 

金沢21世紀美術館でジェフ・クーンズのバルーンドッグを鑑賞可能

 

石川県にある金沢21世紀美術館で、2022年4月9日(土)から9月11日(日)にかけて「ジェフ・クーンズ × ベルナルド」展が開催されます。

 

この展覧会では、ベルナルドという磁器ブランドによって再現された磁器の「セレブレーション」シリーズが鑑賞可能です。ベルナルドはフランスのリモージュで1863年に創業されたブランドで、多くの著名な現代アーティストたちとのコラボレーションを行ってきました。

 

「ジェフ・クーンズ × ベルナルド」展は、金沢21世紀美術館のデザインギャラリーで開催され、入場無料です。興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

 

金沢21世紀美術館の公式サイトはこちら

 

 

ジェフ・クーンズの作品の落札価格とその価値について

 

それでは、近年アート市場で大いに注目されるジェフ・クーンズの作品について、高額で落札された事例をいくつか取り上げて紹介します。

 

 

2019年:ラビット|約100億円(9,110万ドル)

 

2019年5月、ジェフ・クーンズの『ラビット』がクリスティーズのオークションにおいて約100億円で落札されました。存命作家としては史上最高額となる価格で取引されて、話題になっています。『ラビット』はジェフ・クーンズが1986年に制作した高さ1m強のスチール彫刻作品です。

 

2013年:バルーン・ドッグ(オレンジ)|約63億円(5,840万ドル)

 

2013年、同じくクリスティーズのオークションにおいて、ジェフ・クーンズの『バルーンドッグ』(オレンジ)が約63億円で落札されました。このときも、当時の存命作家として最高額を記録し、話題をさらいました。

 

 

ジェフ・クーンズの作品の買取相場

 

ジェフ・クーンズの作品は、キッチュでスキャンダラスなイメージとクーンズ本人の派手な言動などによって、高い認知度を誇っています。近年のオークションにおいて、記録的な高値で取引されているのも記憶に新しいところです。

 

国内で流通している作品は、ウサギや犬のバルーン・アートをフィギュアにしたものが多いでしょう。作品の人気や保存状態によって価格は左右されますが、3万円から6万円前後で取引されるのが一般的です。また、問合せいただいたタイミングによっても買取金額が若干変わる可能性があります。

 

ご売却をご検討の際はお気軽にご相談下さい。

 

 

ジェフ・クーンズに関する豆知識(トリビア)

 

それでは最後に、ジェフ・クーンズにまつわる注目のトリビアを紹介して結びたいと思います。

 

 

著作権問題で炎上経験あり

 

ジェフ・クーンズは、著作権侵害で訴えられたことが何度かあります。アート・ロジャースという写真家がジェフ・クーンズを相手取り、著作権侵害の裁判を起こしたのが一例です。

 

この一件では、アート・ロジャーズが撮影した作品『Puppies』が、ジェフ・クーンズの立体作品『String of Puppies』に無断で使われたという訴えに対して、ジェフ・クーンズが敗訴する結果となりました。

 

一方で、アンドレア・ブランチという写真家の『Silk Sandals by Gucci』(『Allure』誌に掲載)という作品の一部を、ジェフ・クーンズが『Niagara』という写真に使用したという訴えもあります。こちらの件に関しては、ジェフ・クーンズの使用がフェア・ユースにあたると認められ、アンドレア・ブランチの敗訴となりました。

 

 

LOUIS VUITTON(ルイヴィトン)・UNIQLO(ユニクロ)・H&Mなどの各種ブランドとのコラボ経験あり

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

ジェフ・クーンズは、多くの有名ブランドとのコラボレーション経験があります。

 

なかでも2017年のLOUIS VUITTON(ルイヴィトン)とのコラボ作品は有名です。ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』がデザインされたLOUIS VUITTONのバッグに、ジェフ・クーンズの作品『ラビット』をかたどったチャームがついた商品に注目が集まりました。

 

他にも、UNIQLO(ユニクロ)のTシャツブランドUTとのコラボ商品や、H&Mとコラボした『バルーン・ドッグ』のグラフィックがプリントされたバッグなどがあります。オシャレなデザインで話題になったこれらのコラボ商品を、多くのファンが購入しました。

 

 

ジェフ・クーンズの作品は強化買取中

 

ジェフ・クーンズは、何かと話題に事欠かない、いま注目のアーティストです。ジェフ・クーンズの作品をお持ちで、売却を検討している方がいらっしゃいましたら当社にご相談ください。丁寧に鑑定させていただきます。

 

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情報参考サイト

日本現代美術振興協会

モダンアート協会

MOMA

東京都現代美術館

文化庁

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