加藤泉の無題2004とはどんな作品?プリミティブな魅力を持つ彫刻や絵画、人気のソフビを紹介

2022/10/13 ブログ

加藤泉の無題2004とはどんな作品?プリミティブな魅力を持つ彫刻や絵画、人気のソフビを紹介

加藤泉_Untitled Ⅱ

 

島根県出身の加藤泉は、現在東京と香港の二拠点で活動している画家、彫刻家です。『無題2004』に代表されるような、胎児のようにも宇宙人のようにも見える存在を初期から一貫して描いており、プリミティブな魅力を持った作品が多くの人を惹きつけています。

 

今回は、近年世界的に有名なギャラリーペロタンの所属アーティストとなったことから注目度が高まっている加藤泉について、代表作品や人気のソフビ人形が売っている美術館などを紹介します。

 

 

 

加藤泉の略歴

 

まずは、加藤泉の思想や作風が生み出された背景について、略歴をたどりながら紹介します。

 

 

 

1969年:島根県安来市に生まれ、海や山に囲まれた活発な少年時代を過ごす

 

島根県出雲市の出雲大社

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

1969(昭和44)年、加藤泉は島根県の自然豊かなまちに生まれました。外遊びの大好きな少年時代を過ごし、高校時代にはサッカーに没頭します。その後、教育実習に来た美大生に影響されて、東京の武蔵野美術大学造詣学部油絵学科へ進学しました。

 

島根県といえば出雲大社があることで広く知られ、『怪談』を書いた伝奇作家の小泉八雲や『ゲゲゲの鬼太郎』を書いた漫画家の水木しげるのゆかりの地としても有名です。

島根県という超自然的な力を身近に感じさせる地で育ったことは、加藤泉の思想にも大きな影響を与えました。

 

 

 

1992年:武蔵野美術大学油絵科卒後し、アルバイトに追われつつ作品制作を始める

 

1992(平成4)年に大学を卒業した加藤泉は、しばらくアルバイトなどをしながら絵を描いて過ごし、30歳前後から本格的に絵画の制作を開始しました。1994(平成6)年には東京都のモリスギャラリーにおいて初の個展「加藤泉展」を開催します。

 

ちなみに、武蔵野美術大学での加藤泉は絵画制作よりも音楽活動に打ち込んで過ごし、一時はミュージシャンになりたいと考えていたそうです。加藤泉は現在もアーティスト活動のかたわら音楽活動を続けており、「THE TETORAPOTZ + SNATCH」というバンドでドラムを担当しています。

 

 

 

2003年:絵画制作でスランプにおちいり、彫刻制作を開始

 

加藤泉は、アーティスト活動を始めた頃には絵画作品の制作に没頭しました。しかし、2003(平成15)年頃からスランプにおちいります。これをきっかけに、絵画と並行して木の彫刻作品を制作するようになりました。

 

2005(平成17)年、ニューヨークで村上隆が企画した美術展「リトルボーイ:爆発する日本のポップカルチャー」が開催されます。加藤泉は、代表作品の一つである木彫作品『無題2004』などを出品し、大いに注目されました。

 

 

 

2007年:第52回ヴェネツィア・ビエンナーレに作品を出品

 

美術展「リトルボーイ:爆発する日本のポップカルチャー」において、加藤泉の作品が美術批評家ロバート・ストーの目に留まりました。この縁から、加藤泉は2007(平成19)年開催の第52回ヴェネツィア・ビエンナーレに招待されるという幸運に恵まれます。

 

ヴェネツィア・ビエンナーレでは、ロバート・ストーがディレクターを務める企画展「think with the senses, feel with the mind」に加藤泉の絵画作品が展示され、加藤泉の名は世界に知れ渡りました。

 

2016(平成26)年からは、ピカソ、マティスなどの作品も手がけているフランスの有名なリトグラフ工房「Idem Paris(イデム・パリ)」にて、版画制作も開始します。

 

 

 

2019年:原美術館とハラ ミュージアム アークで個展「加藤泉―LIKE A ROLLING SNOWBALL」を開催

 

2021年1月に閉館した東京都の原美術館

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

2010(平成22)年以降、加藤泉は彫刻の森美術館(神奈川県)や金沢21世紀美術館(石川県)、フランスのポンピドゥー・センター・メッスなどの国内外のさまざまな美術館で、数多くの個展やグループ展を開催しています。

 

なかでも2019(令和元)年に原美術館(東京都)とハラ ミュージアム アーク(群馬)で2館同時開催された「加藤泉―LIKE A ROLLING SNOWBALL」は、東京の美術館で行われる初の大規模個展であったこともあり、大変話題になりました。

 

東京と香港の2か所を拠点として活動する加藤泉は、2022(令和4)年もハワイ・トリエンナーレをはじめとした多くの展覧会に参加しており、精力的に制作活動を続けています。

 

*IZUMI KATO / PROFILE

 

加藤泉の作品の世界観

 

Untitled Ⅱ(2020年 木版画)

 

胎児のようにも宇宙人のようにも見える、やや不気味で不思議な存在が描かれているのが加藤泉の絵画の特徴です。

このような作風の背景には、加藤泉の育った島根県が持つ特殊な地域性(全国の八百万(やおよろず)の神々が集まるといわれ、小泉八雲や水木しげるともゆかりが深い)が関係しています。

 

学生時代の加藤泉は、プリミティブ・アート(原始美術。土着の民族による美術)やアール・ブリュット(生の美術。世紀の芸術教育を受けていない人による自由な美術)にも心惹かれたといいます。

プリミティブ・アートにも共通してみられる、ある種宗教的な厳かさを感じられる点が、加藤泉の絵画の魅力といえるでしょう。これらの絵画は筆を使わず手で描かれています。

 

また、加藤泉といえば自身の描く絵画から抜け出してきたような、圧倒的存在感を放つ彫刻作品も有名です。

特に2004年に制作された『無題2004』は、独特の迫力あるさまが欧米のインターネットサイトで話題を呼び、「SCP財団」という世界的な創作ムーブメントが生まれるきっかけを作りました。

 

「彫刻は人のかたちだけ作ると勝手にこの世界と接続する」と考える加藤泉は、絵画制作と並行して彫刻制作にも力を入れています。近年では木を使った作品以外にも石、布、ソフトビニールを使った作品を制作しており、新たな世界の開拓に挑んでいます。

 

 

 

加藤泉の代表作品を解説

 

次に加藤泉の世界観が大いに感じられる代表作品を、4つピックアップして解説します。

 

 

 

無題2004

 

2005(平成17)年にニューヨークで村上隆が企画した美術展「リトルボーイ:爆発する日本のポップカルチャー」に出品された『無題2004』は、加藤泉の活躍の礎を築いた作品といえます。

この展覧会で注目を浴びたことが、のちのヴェネツィア・ビエンナーレへの招待につながりました。

 

『無題2004』は205×56×52cmの巨大木彫作品です。壁に手をついてこちらを見つめる不思議な存在は、巨大な赤ん坊のようにも見えます。

この作品をきっかけに共同創作コミュニティサイト「SCP財団」が生まれました。ただし、そこで使われる「SCP-173」という呼び名やさまざまなキャラクター設定は、加藤泉とは関係のない二次創作です。

 

*IZUMI KATO / SCULPTURE

 

 

 

無題(2006年制作)

 

『無題』(2006年制作)は、2007(平成19)年に第52回ヴェネツィア・ビエンナーレに出品された絵画作品です。

この作品は、黒い背景に男性が描かれたもの、ピンク色の背景に女性が描かれたもの、白い背景に赤ん坊が描かれたもの、という3つのキャンバスから構成されます。

 

加藤泉は、画家で夫人の亀山尚子との間に子どもが生まれてから、男、女、子どもの組み合わせを扱った作品を多く制作しました。それらの作品からは、加藤泉の家族への想いが伝わってきます。『無題』(2006年制作)は、国立国際美術館に所蔵されています。

 

*独立行政法人国立美術館 / 加藤泉 / 無題

 

 

 

LIKE A ROLLING SNOWBALL

 

LIKE A ROLLING SNOWBALL(2020年 リトグラフ)

 

この作品は、2019(令和元)年に原美術館とハラ ミュージアム アークで2館同時開催された個展「加藤泉―LIKE A ROLLING SNOWBALL」に寄せて生み出された作品です。フランスの著名なリトグラフ工房「Idem Paris」にて制作されました。

 

「Idem Paris」はパリのモンパルナス地区にある歴史的な版画工房で、1881(明治14)年に設立されました。

以来、マティス・ピカソ・シャガールといった巨匠の作品を多く手がけています。「Idem Paris」のプロジェクトでは、選ばれたアーティストが工房を訪れ、職人たちと共に版画制作に取り組みます。加藤泉は2016年にアーティストに選ばれました。

 

ちなみに、作品名であり展覧会のタイトルでもある『LIKE A ROLLING SNOWBALL 』はボブ・ディランの『LIKE A ROLLING STONE』という曲からインスピレーションを得て名づけられました。音楽好きの加藤泉ならではといえるでしょう。

 

 

 

無題(2022年制作)

 

2022年6月25日、フランスの港町ル・アーヴルにおいて、加藤泉の巨大な野外彫刻『無題』がお披露目されました。作品が設置されたのは、ル・アーヴルにある聖ヴァンサン=ド=ポール教会前広場です。

 

全長7mにも及ぶこの作品は、加藤泉のデッサンと約1mの木彫りの模型をもとにドイツの鋳造会社で制作され、加藤泉本人が色付けすることで完成しました。自然豊かな広場に深い緑色の巨大な彫刻が溶けこむさまは大変幻想的です。

 

 

 

加藤泉の作品が鑑賞可能な3つの美術館を紹介

 

加藤泉の絵画や彫刻が観られる3つの魅力的な美術館を紹介します。お近くにお住まいの方はぜひ足を運び、加藤泉の生命力あふれる独創的な作品を生で体感してみてください。

 

 

 

原美術館ARC(群馬県)

 

原美術館ARCは、2021(令和3)年に閉館した原美術館と、ハラ ミュージアム アークを統合した新しい美術館として、2021年にリニューアルオープンしました。2019(令和元)年に開催された大規模個展「加藤泉―LIKE A ROLLING SNOWBALL」の開催地でもあります。

 

原美術館ARCでは、四つ這いになった男が女と子供を背にのせているユニークな木彫作品『無題』(2008年制作)などを所蔵しています。

また、2022年10月現在、加藤泉のモチーフをかたどった人気のソフビ人形も、ミュージアムショップで販売されています。

 

リンデン社製のこのソフビ人形には男の子バージョンと女の子バージョンがあり、現在販売されているのは原美術館ARC限定カラーの女の子バージョンです。

 

住所 〒377-0027 群馬県渋川市金井 2855-1
電話番号 0279-24-6585
営業時間

9:30-16:30(入館は閉館時刻の30分前まで)

※木曜日(祝日と8月、2022年12月29日を除く)、展示替え期間、

 1月1日、冬季(2022年1月11日から3月18日まで)は休館

料金

一般1,100円、大高生700円、小中生500円、70歳以上550円

※原美術館ARCメンバーは無料、20名以上で団体割引あり

公式HP https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/

 

 

 

金沢21世紀美術館(石川県)

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

現代アートを専門に扱う金沢21世紀美術館は、兼六園などの観光スポットからもアクセスしやすい人気の美術館です。全館バリアフリーで託児室も備えているため、観光客だけでなくあらゆる世代の金沢市民からも大変親しまれています。

 

金沢21世紀美術館では、加藤泉が2011(平成23)年から2014(平成26)年にかけて制作した7点の絵画作品を所蔵しています。

 

住所 〒920-8509 石川県金沢市広坂1-2-1
電話番号 076-220-2800 (代表)
営業時間

展覧会ゾーン:10:00-18:00(金・土曜日は20:00まで)

交流ゾーン:9:00-22:00

※月曜日、年末年始は休館

料金 各展覧会により異なる
公式HP https://www.kanazawa21.jp/

 

 

 

豊田市美術館(愛知県)

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

19世紀後半から現代までの美術を集める豊田市美術館は、1995(平成7)年に開館しました。コレクションもさることながら、建築家の谷口吉生が設計したモダニズム建築も大変高く評価されており、日本における美しい美術館の一つとして知られています 。

 

豊田市美術館では、加藤泉が2002(平成14)年に制作した2点組の作品『Untitled』と、2006(平成18)年に制作した3人の人物を描く『無題』が所蔵されています。

 

住所 〒471-0034 愛知県豊田市小阪本町8丁目5-1
電話番号 0565-34-6610
営業時間

10:00-17:30(入館は閉館時刻の30分前まで)

※月曜日、展示替え期間、年末年始は休館

料金

一般300(250)円、高校・大学生200(150)円、中学生以下無料

※企画展は各展覧会により異なる

公式HP https://www.museum.toyota.aichi.jp/

 

 

 

加藤泉の作品の落札価格とその価値について

 

それでは、近年オークションにおいて高額で落札された加藤泉の作品を2点ピックアップして紹介します。

ちなみに、ここで取り上げた2点のほかにも、2016(平成28)年には絵画作品が1,700万円で落札されています。加藤泉の作品の落札価格は高い水準で推移しているといえるでしょう。

 

 

 

2021年:Untitled(2008年制作)|約1億7,065万円

 

2021(令和3)年11月30日、香港で行われたフィリップスのオークションにおいて、加藤泉の作品が予測落札価格を大きく超える約1億7,065万円で落札され、大変注目を集めました。

 

この作品は加藤泉の『Untitled』(2008年制作)で、2007(平成19)年に第52回ヴェネツィア・ビエンナーレに出品されたものと同じような、男、女、子どもの3枚構成となっています。

 

*PHILLIPS / Hong Kong Auction 30 November 2021 / Izumi Kato / Untitled

 

 

 

2020年:Untitled|約1,350万円

 

2020(令和2)年9月14日、同じく香港で行われたフィリップスのオークションにおいて、予想落札価格10万香港ドルから15万香港ドルであった加藤泉の『Untitled』(2013年制作)が、それを大幅に超える約1,350万円(100万香港ドル)で落札されました。

 

*PHILLIPS / Online Auction 2-14 September 2020 / Izumi Kato / Untitled

 

 

 

加藤泉の作品の買取相場

 

Untitled 11(2017年 リトグラフ)

 

加藤泉は油彩画や彫刻のほか、リトグラフや木版画といった版画作品も制作しており、買取ジャンルは多岐にわたります。なかでも版画作品は、市場に出回る頻度が比較的高いといえます。

 

作品の人気や保存状態にもよりますが、加藤泉の版画は数十万円程度で取引されることが多いでしょう。問い合わせ時点での評価をもとに、最大限の買取金額をご提案させていただきますので、まずはご相談ください。

 

 

 

加藤泉の作品は強化買取中

 

加藤泉は、国内外で注目されているアーティストの一人です。加藤泉の作品について、売却を検討している方がいらっしゃいましたら当社にご相談ください。丁寧に鑑定させていただきます。

 

また、鑑定経験が豊富な美術品買取専門店、株式会社獏では、ご希望により簡単・手軽・便利のすべてを実現したLINE査定も可能です。

 

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