小松美羽はどんな画家?狛犬をモチーフとした代表作品や作品の値段について解説
小松美羽はどんな画家?狛犬をモチーフとした代表作品や作品の値段について解説
小松美羽(こまつみわ)は「美しすぎる銅版画家」としてメディアに紹介され、注目を集めた現代アーティストです。近年では銅版画だけでなくアクリルペイントやシルクスクリーンによる作品も多く制作し、独特の死生観があらわれたエネルギッシュな作品が人気となっています。
今回は、小松美羽の作品に込められた世界観をひもときながら、大英博物館に所蔵された狛犬をモチーフとする作品や、出雲大社に奉納された代表作品などについて幅広く解説します。
参考サイト:小松美羽 Miwa Komatsu | オフィシャルサイト
小松美羽の略歴
まずは、小松美羽の独特の死生観がはぐくまれた背景や、作風の変遷を追っていきましょう。
1984年:長野県坂城町に生まれ、多くの動植物と触れ合いながら育つ
1984(昭和59)年、小松美羽は長野県坂城町に生まれました。ものごころがつかないころから絵を描いていたほど絵が好きで、将来は画家になりたいと夢見ていたそうです。
自然豊かな長野県で多くの動植物と触れ合いながら育った小松美羽は、幼少期に何度かスピリチュアルな体験をしました。近所の神社で他の人には見えない存在を目にしたり、道に迷ったときに家へ導いてくれた山犬が目の前で消えてしまったりといった不思議な体験が、小松美羽の制作にも大きな影響を及ぼします。
2003年~:女子美術大学短期大学部で銅版画の制作を開始、代表作の「四十九日」が高評価を受ける
女子美術大学短期大学部
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
小松美羽は、2003(平成15)年に東京都の女子美術短期大学部へ入学し、そこで銅版画の制作を開始しました。2005(平成17)年に卒業しましたが、その後研究生となって合計4年間在籍します。
小松美羽は祖父の死をきっかけとして、魂が死後の世界へ旅に出る様子を描いた『四十九日』を制作します。二十歳のときに描いたこの作品が高く評価されたため、小松美羽は本格的に画家になることを決意しました。
2009年:プロデューサー高橋紀成に見出される
2009(平成21)年、百貨店のギャラリーでアルバイトをしながら作品制作を続けていた小松美羽は、テレビプロデューサーの高橋紀成と出会いました。そして小松美羽の作品が高橋紀成の心を掴み、阿久悠トリビュートアルバム『Bad Friends』のジャケットと挿絵を担当することが決まります。
高橋紀成は同じ高校出身であった船井総研元社長の小山政彦とともに、小松美羽を支援するため株式会社風土を立ち上げました。彼らによって「美しすぎる銅版画家」としてメディアに取り上げられた小松美羽は、大いに注目を集めました。
2014年:出雲大社へ『新・風土記』を奉納
出雲大社
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
小松美羽は高橋紀成らのプロデュースを受け、30歳前後で作品制作に専念できるようになりました。そして2014(平成26)年、小松美羽は彼女の代表作である『新・風土記』を島根県の出雲大社へ奉納します。
小松美羽は『新・風土記』の奉納のために出雲大社近くの古民家へ1ヶ月滞在し、作品制作にあたりました。そして『古事記』や『風土記』を勉強しながら出雲各地をめぐり、これまでの作品とは一線を画す色鮮やかな作品を生み出します。
2015年:有田焼の狛犬『天地の守護獣』が大英博物館に所蔵される
大英博物館
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2015(平成27)年、小松美羽は庭園デザイナー石原和幸とともに、イギリスのロンドンで開催される「チェルシー・フラワー・ショー」にコラボ出品をしました。このときに制作したのが有田焼の狛犬『天地の守護獣』で、石原和幸の作品『EDO NO NIWA(江戸の庭)』における守り神として作られました。ショーで『EDO NO NIWA』はゴールドメダルを獲得します。
『天地の守護獣』はショーのあとに大英博物館へ所蔵され、日本館に永久展示されることが決定しました。30歳という若さでその作品が大英博物館に展示されるのは大変な快挙であり、大いに話題となりました。
参考サイト:緑の魔術師| 庭園デザイナー石原和幸| ISHIHARA
2019年:VR作品『INORI 〜祈祷〜』がヴェネチア国際映画祭VR部門にノミネートされる
2019(令和元)年、小松美羽が「HTC VIVE Originals」と共同で制作したVR作品『INORI 〜祈祷〜』が、第76回ヴェネツィア国際映画祭VR部門にノミネートされ、正式招待作品となりました。HTC VIVE Originalsは、VR(バーチャルリアリティ)の世界的リーダーとして知られる台湾企業です。
さらに、小松美羽は同映画祭において、ラザレット・ベッキオ島のライブペインティングを行いました。15世紀から16世紀にかかるペストの大流行を受けて患者が隔離されたという歴史のある島でライブペインティングを行ううち、小松美羽は芸術を通して祈りのメッセージを伝え続けることの大切さを再確認したといいます。
その後も小松美羽は次々と新作を発表したり、さまざまなコラボグッズを発表したり、精力的に活動を続けています。
小松美羽の作品の世界観
狛犬様 三心一体(2020年 シルクスクリーン)
女子美術大学短期大学部で銅版画を学んでいた小松美羽は、銅版画家としてアーティスト人生を歩み始めます。しかし、ニューヨークで行われたアート合宿をきっかけに、2011(平成23)年頃からはペイント画にも取り組むようになりました。
小松美羽はそれを、自己満足の制作から多くの人に思いを伝えるための制作へと変化するターニングポイントであったと述べています。「死」に目を向けられることが多かった初期の作品は主にモノクロで表現されていましたが、この転換後は作品に彩鮮やかな「生」が宿り始めました。
小松美羽の作品には、生きとし生けるものが魂において平等であるという彼女の死生観があらわれています。このような死生観は幼い頃に生き物と暮らした体験や、祖父の死を間近に見た体験から培われました。死を美しいものと捉え、終わりがあるからこそ生きることは美しいという小松美羽の思いが、作品の中でエネルギッシュに表現されているのです。
また、小松美羽は、幼い頃に道案内をしてくれた不思議な山犬(二ホンオオカミ)からインスピレーションを得て「狛犬」をモチーフとした作品を多く制作しています。彼女の描く神獣(狛犬、龍、獅子、麒麟など)からは、日本人が古くから持っているスピリチュアルなものへの畏敬の念が感じられることでしょう。
近年、小松美羽はアクリル・ペイントの作品を多く手がけており、白装束をまとって行われるライブペインティングも大変人気を集めています。
小松美羽の代表作品を解説
それでは、小松美羽の代名詞ともいえる有名な作品を3点紹介いたします。
新・風土記
2014(平成26)年に島根県の出雲大社へ奉納した『新・風土記』は、作品上部に巨大な目の描かれた迫力のある作品です。『新・風土記』は、モノクロの作品を多く制作していた小松美羽がはじめて本格的に描いた色鮮やかな作品としても知られます。
小松美羽が初めて出雲大社に正式参拝した際、出雲大社のある八雲山において下から上に上がっていく光を目撃しました。その現象から人々の祈りの純粋さを感じ取った小松美羽は、祈りの中の感情を色を使って表現したいと考えたのだそうです。
『新・風土記』は小松美羽にとって思い入れの強い作品なのでしょう。同じく出雲の地で、第二弾も制作しています。
天地の守護獣
『天地の守護獣』は、2015(平成27)年に大英美術館に所蔵されて評判になった、有田焼による一対の狛犬です。この作品は、小松美羽の描いた原画をもとに、有田焼のメーカー「アリタポーセリンラボ」が造形しました。焼き上がった有田焼の狛犬に小松美羽が絵付けをして仕上げた立体作品です。
狛犬研究家を自負している小松美羽は、狛犬は作品制作においてもっとも重要なモチーフだと述べています。伝統工芸と現代アートのコラボレーションによって生まれた名品『天地の守護獣』は、狛犬を扱った小松美羽の数多くの作品のなかでも特に有名な代表作といえるでしょう。
参考サイト:アリタポーセリンラボ
麒麟
『麒麟』は、小松美羽が漆芸職人によるアート集団「彦十蒔絵」とコラボレーションして制作した、2018(平成30)年の作品です。暗い背景に光沢のある黒い麒麟の姿が浮かび上がり、麒麟の目だけが色鮮やかに描かれています。吸い込まれそうにも感じられるエネルギーに満ちた目が、非常に印象的に感じられるでしょう。
『麒麟』は2022(令和4)年のオークションで、1,000万円という高額で落札されたことでも有名です。
参考サイト:彦十蒔絵 | HIKOJU MAKIE Official web site
小松美羽のコラボグッズ
次に、一般販売された小松美羽のコラボグッズを紹介いたします。
小松美羽×フラットヘッド
アメリカンカジュアルウェアブランドのフラットヘッドは、小松美羽とコラボして2021(令和3)年と2022(令和4)年に2年連続で干支Tシャツを販売しました。2021年は「丑(うし)」、2022年は「寅(とら)」の絵柄が背面に大きくプリントされています。シンプルな白に黒のプリントがオシャレなTシャツの値段は、いずれも13,200円(税込)でした。
フラットヘッドのTシャツは高品質で、丈夫で長持ちすることで知られています。フラットヘッドは他にも小松美羽とクリーブランド美術館とのトリプルコラボTシャツも販売しています。
参考サイト:フラットヘッド
小松美羽×博多織OKANO
2017(平成29)年、小松美羽と博多織OKANOによるコラボレーションスカーフが、当時オープンしたばかりであったGINZA SIX限定で販売されました。このスカーフの値段は128万円でとても高額でしたが、すぐに完売して話題になりました。
OKANOは1987(昭和62)年に創業した博多織元で、伝統工芸品の「博多織」を取り扱うきもの制作所です。2018(平成30)年には、小松美羽とのコラボレーションでOKANOの象徴である鳳凰をモチーフとした「鳳凰の分前」という着物も制作しています。
参考サイト:OKANO博多きもの制作所
小松美羽の作品の落札価格とその価値について
近年、小松美羽の注目度はますます高まっており、落札価格は好調に推移しています。それではオークションにて高額で落札された小松美羽の作品を2点紹介いたします。
2022年:麒麟|1,000万円
2022(令和4)年に羽田空港で開催された保税アートオークションにて、先ほど紹介した小松美羽の『麒麟』という作品が1,000万円という高値で落札され、注目を集めました。 保税アートオークションとは、保税蔵置所(日本の税をかけずに商品の売買ができる場所)で行われるアートオークションのことを言います。
2022年:干支神獣(13点)|1,200万円
同じく2022(令和4)年、SBIアートオークションにおいて小松美羽の『干支神獣』(13点)が1,200万円で落札されました。『干支神獣』とは、小松独自の解釈によって十二支に猫を加えて制作された、全13点のシリーズ作品です。
13点のすべて揃った『干支神獣』は、落札予想価格500~800万円を大きく上回る高額での落札となったため、大いに注目を集めました。
小松美羽の作品の買取相場
Year of the Dog「ZODIAC DIVINE SPIRIT」より(2018年 シルクスクリーン)
小松美羽の作品は、作品の種類によって大きく買取金額が異なります。キャンバス作品に関しては100万円〜数百万円、版画作品に関しては数十万円台となることが多いでしょう。作品の保存状態にもよります。
また、小松美羽は近年大変注目されており、相場に変動がある可能性もあるでしょう。問い合わせ時点での最高金額で買取金額をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
小松美羽に関する豆知識(トリビア)
最後に、小松美羽に関する豆知識をちょっと意外なものもあわせて紹介いたします。
小松美羽の結婚観が話題に
2009(平成21)年に「美しすぎる銅版画家」としてメディアに取り上げられ話題となった小松美羽ですが、現在まだ独身を貫いています。そんな小松美羽は、自分のペースが乱されるために恋愛は苦手なのだそうです。 しかし、子どもを育てたい気持ちはあるようで「優秀な女の子を産んで国際弁護士に育て上げ、私を守ってほしい」とも述べています。
リップサービスも含まれるかもしれませんが、小松美羽の結婚観がうかがわれるエピソードです。
2020年の24時間テレビにてチャリティーグッズのデザインを手がける
小松美羽は、2020(令和2)年に放送された日本テレビ「24時間テレビ43」で、チャリティーグッズのデザインを手がけました。これらは「INORI FOR OUR PLANET=地球への祈り」のコンセプトのもとで制作されました。 平和の象徴である鳩や守護の象徴である狛犬のまわりを、世界各国の言葉で表現された「祈り」という文字が囲んでいます。芸術を通して祈りのメッセージを伝えたいと考える小松美羽ならではのデザインといえるでしょう。
また、24時間テレビ内で行われたチャリティオークションでは、小松美羽のライブペイント作品が2,054万円で落札されました。グッズやオークションでの収益金は、チャリティーに使用されました。
参考サイト:日本テレビ
小松美羽の作品は強化買取中
狛犬様と共に(シルクスクリーン)
小松美羽の作品について、売却を検討している方がいらっしゃいましたら当社にご相談ください。丁寧に鑑定させていただきます。
また、鑑定経験が豊富な美術品買取専門店、株式会社獏では、ご希望により簡単・手軽・便利のすべてを実現したLINE査定も可能です。
LINE査定なら、わざわざ店舗に足を運んだり直接スタッフと話したりする必要もありません。余計な手間や時間を一切かけずに査定できるので、仕事や家事で忙しい方に人気です。
美術品や骨董品の売却をご検討の方は株式会社獏にご相談ください。