村上隆はどんな現代アート作家?代表作「お花」や高額落札作品など徹底解説|フィギュアや多数のアパレルコラボも紹介
村上隆はどんな現代アート作家?代表作「お花」や高額落札作品など徹底解説|フィギュアや多数のアパレルコラボも紹介
村上隆は、草間彌生や奈良美智と共に日本の現代アートの世界を牽引する存在といえるでしょう。中央にスマイルのついたかわいらしいカラフルなお花は、村上隆の代名詞ともいえるほど広く知られています。みなさんも何度か目にしたことがあるのではないでしょうか。
今回は、アーティストとしてだけでなく、自らが会社を立ち上げて若いアーティストを支援したり、現代アートの啓発を行ったりと多方面から現代アートの世界に貢献する村上隆について幅広く紹介します。
村上隆とは?略歴紹介
ベルサイユ宮殿にて(2010年)
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
村上隆は、1962(昭和37)年、東京都の板橋区に生まれました。村上隆は高校卒業後にアニメーターになることを目指しましたがうまくいかず、2浪の後に東京藝術大学美術科日本画家科へ入学します。
村上隆は、同大学の大学院で学んでいた1991年(平成3年)に、田宮模型(現在の株式会社タミヤ)のプラモデルからインスピレーションを受けて制作した連作を発表し、現代美術家としての道を歩み始めました。
1993年:東京藝術大学大学院の美術研究科博士後期課程を修了
東京藝術大学の大学院へ進んだ村上隆は、1993(平成5)年に博士後期課程を修了し、日本画科で初めての博士号取得者となります。
このときに執筆した博士論文のタイトルは、「美術における『意味の無意味の意味』をめぐって」でした。この論文は、今でも国立国会図書館で閲覧することができます。
2001年:有限会社カイカイキキを設立し、アート制作や映像制作・所属アーティストマネージメントなど様々な事業を展開し始める
2001(平成13)年、村上隆はアート制作や所属アーティストのマネージメントなどを企画・運営する総合商社として、有限会社「Kaikai Kiki(カイカイキキ)」を創立しました。また、映像制作部署の「Kaikai Kiki Animation Studio PONCOTAN(ポンコタン)」も立ち上げます。
並行してアーティスト活動も積極的に行っていた村上隆は、2000(平成13)年には渋谷パルコギャラリーで、翌年にはアメリカのロサンゼルス現代美術館別館で、自身が企画したグループ展「SUPER FLAT」を開催して大きな話題となりました。
さらに、2005(平成17)年にニューヨークのジャパン・ソサエティにて 「リトルボーイ—爆発する日本のサブカルチャー・アート」を開催します。村上隆は、この展覧会の功績によって、翌年には芸術選奨文部科学大臣新人賞と、AICA USA(全米批評家連盟)による最優秀テーマ展覧会賞を受賞しています。
2008年:米Time誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出
2008(平成20)年、村上隆はアメリカのニュース雑誌「Time」で「The World's Most Influential People - The 2008 TIME 100(世界で最も影響力のある100人<2008年>)」に選ばれました。
また、2010(平成22)年には、東京工業大学世界文明センターで行われた「クール・ジャパノロジーの可能性」というシンポジウムに村上隆が登壇し、「アート界における"クール・ジャパン"の戦略的プロデュース法―Mr.の場合」という講演を行っています。
アーティスト活動としては、2010(平成22)年にフランスのヴェルサイユ宮殿で個展「MURAKAMI VERSAILLES」を開催し、2012(平成24)年にはカタールのドーハで個展「Murakami-Ego」を開催しました。
2016年:森美術館にて個展「村上隆の五百羅漢図展」を開催したことをきっかけに、第66回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞
2015(平成27)年10月31日から2016(平成28)年3月6日にかけて、東京都の森美術館において「村上隆の五百羅漢図展」が開催されました。国内では14年振りとなるこの大規模個展で、村上隆は超大型作品『五百羅漢図』を日本で初めて公開します。これを受けて2016(平成28)年に平成27年度(第66回)芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。
平成27年度(第66回)芸術選奨受賞者一覧と平成27年度(第66回)芸術選奨 文部科学大臣賞 贈賞理由一覧は、こちらから確認できます。
近年では、UNIQLO(ユニクロ)などのファッションブランドなどとコラボを行ったり、2020(令和2)年7月31日から2021(令和3)年1月3日にかけて開催された森美術館の「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」に作品が展示されたりしたことが、話題になっています。今後も、精力的に活動を続ける村上隆から目が離せません。
「カイカイキキギャラリー」にて村上隆作品の鑑賞が可能
カイカイキキギャラリーとは、東京都元麻布にある村上隆主宰のギャラリーです。初めは一部のゲストだけが入れるビューイングルームでしたが、その後アートの社会的価値の創造を行うことを目的とした、開かれた展示場として運営されるようになりました。
カイカイキキギャラリーでは、カイカイキキ所属アーティストをはじめとした国内外の多くのアーティストの作品を取り扱っており、現代アーティストKYNEとのコラボをはじめとして、さまざまな展覧会が開催されています。村上隆の作品が展示されることもあるので、興味のある人はカイカイキキギャラリーのサイトをチェックしてみましょう。サイトでは村上隆を含むアーティストらが出版した書籍も確認できます。
村上隆の作品の世界観|スーパーフラット
出典元:flickr
村上隆の絵画作品を語るときによく用いられるのが「スーパーフラット(Superflat)」という言葉です。スーパーフラットは村上隆によって生み出された美術的概念で、彼自身はスーパーフラットについて、学生時代に学んだ日本画と現代のアニメやゲームを平面性という点から結びつけて説明しています。
スーパーフラットの作品には二次元的な平板さがあり、遠近法的なテクニックはほとんど用いられません。その代わり余白を印象的に使うことで独特の魅力を生み出しますが、このような特徴は伝統的な日本画やアニメーションのセル画に共通してみられる特徴でもあります。
また、スーパーフラットという言葉は、美術と大衆芸術の位置関係がフラットであるという考え方や、戦後の社会における日本人の均一性などをあらわしているとも考えられています。これは絵画作品に限らず、村上隆の作品の根底に存在する概念とも言えるでしょう。
村上隆の代表作品を解説
次に、村上隆の代表作品を、初期のものから近年発表されたものまで含めて5つ紹介します。
727
『727』は1996(平成8)年に村上隆が描いたスーパーフラットの絵画です。日本画のテクニックを使って描かれたまだらな背景に、渦を巻いた波と村上隆の描く人気キャラクター「DOB君」が描かれています。
DOB君とは、丸い顔に丸い大きな耳クリッとした目が印象的なかわいらしいキャラクターですが、この作品では口を大きく開けてとがった歯を見せており、やや不気味にも感じられます。『727』はニューヨーク近代美術館(MoMA)に所蔵されています。
Miss Ko2
出典元:flickr
「Miss Ko2」は、ウェイトレス姿をした美少女の等身大フィギュアです。さまざまなシリーズがあることでも知られており、佐藤江梨子をモデルとした「サトエリMiss Ko2ちゃん」の他、ナース姿のものなども存在します。
1996(平成8)年に制作された188×61×88.9cmの『Miss Ko2』は、金髪の長い髪と身体に密着したユニフォームが印象的な作品で、2003(平成15)年のクリスティーズのオークションで5,800万円で落札されました。
HIROPON
「HIROPON」は、1997(平成9)年に制作された等身大のフィギュアです。若い女性が巨大なバストからほとばしる母乳で縄跳びをしている様子を表現しています。大きさは223.5×104×122cmで、青い髪でピンクの水着を着ているものや、ピンクの髪で緑の水着を着ているものが存在します。
「HIROPON」の過激な造形は大変注目を集め、クリスティーズで行われたオークションでは約4,890万円で落札されました。
五百羅漢図
2012(平成24)年に制作された村上隆の『五百羅漢図』は、青竜(せいりゅう)、白虎(びゃっこ)、朱雀(すざく)、玄武(げんぶ)の名を冠した4面で構成される3×100mの超大型作品です。東日本大震災をきっかけに生まれたこの作品は、200人を超えるスタッフが24時間態勢で制作にあたり、短期間で制作されました。
『五百羅漢図』は、東日本大震災において日本を支援してくれたカタールに感謝し、カタールのドーハにおいて初公開されました。
この作品は江戸時代の絵師、長沢芦雪や狩野一信などが描いた五百羅漢図からインスピレーションを得て制作されたといわれています。
お花
出典元:flickr
村上隆の代名詞ともいえるこのカラフルなお花は、東京藝術大学を受験するときに村上隆がお花を毎日描いていた、というエピソードに由来しています。中央にスマイルがついているのが特徴で、さまざまなグッズやコラボ作品によく取り入れられているので、見たことがあるという人も多いのではないでしょうか。
村上隆はこのお花によって、日本独特のキャラクター産業を美術の世界に溶け込ませることに成功したといえるでしょう。
村上隆のコラボ商品・人物
村上隆はさまざまなブランドとコラボ作品を制作しています。中でも広く知られる4つについて紹介します。
LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)
出典元:flickr
村上隆とLOUIS VUITTONは、2003(平成15)年から2008(平成20)年の間に5回のコラボレーション作品を発表しています。このコラボはLOUIS VUITTONのアーティスティック・ディレクターだったマーク・ジェイコブスが村上隆のファンであったことから実現しました。
LOUIS VUITTONの上品さと村上隆の茶目っ気が融合したコラボ作品はバッグやスカーフなどのさまざまな商品に及び、大変注目を集めました。
UNIQLO(ユニクロ)
2020(令和2)年6月、数々のアーティストとコラボレーション作品を制作しているユニクロのTシャツブランド「UT」が、ビリー・アイリッシュ、村上隆とのトリプルコラボ作品を発表しました。
ビリー・アイリッシュは世界中にファンの存在する、若き天才シンガー・ソングライターです。彼女の象徴的なロゴや村上隆のお花を取り入れたこだわりのTシャツやキャップが、多くの人を魅了しました。
ドラえもん
漫画を題材とした作品をいくつか作っている村上隆ですが、近年はドラえもんに心惹かれているようです。2021(令和3)年には「タイムマシン」と「どこでもドア」を描いたエディションサイン入りポスター、2022(令和4)年には「異次元への旅」というエディションサイン入りポスターを制作しています。
これらのコラボ作品はいずれも村上隆の運営する「Zingaro」のWEBショップにおいて、販売されました。
ヒカル(YouTuber)
2021(令和3)年、ユーチューバーのヒカルと村上隆のコラボレーションが実現し、「Zingaro」のWEBショップにおいてお花クッションが発売されました。
ヒカルは半分が黒髪、半分が金髪という独特の髪型がトレードマークで、若者層から熱狂的な支持を受けているユーチューバーです。村上隆もヒカルのチャンネルをよく視聴しているのだそうです。今回のコラボ作品では、ヒカルをイメージした半分が黒で半分が黄色、または金色のお花のクッションが制作されました。
村上隆の作品の落札価格とその価値について
近年村上隆の立体作品が、さまざまなオークションにおいて高値で取引されて話題となっています。それでは、特に高額で取引された3点についてご紹介します。
2008年:My Lonesome CowBoy(マイ ロンサム カウボーイ)|約17億円
『My Lonesome CowBoy』は『HIROPON 』に続いて制作された等身大フィギュアです。金髪の裸の男性が男性器を握りしめ、放出された精液と思しきものをカウボーイの投げ縄ように操っている様子を表現しています。
非常に過激な造形が話題となり、2008(平成20)年のサザビーズのオークションにおいて約17億円という高額で落札されました。
2003年:Miss Ko2|約5800万円
1996(平成8)年に村上隆によって制作された等身大美少女フィギュア『Miss Ko2』(188×61×88.9cm)は、2003(平成15)年のクリスティーズのオークションで約5,800万円で落札されました。
このオークションで、金髪の長い髪を持つウェイトレス姿の『Miss Ko2』は、「海の向こうから来た新しい美のアイコン」と評価されました。
2002年:HIROPON|約4890万円
2002(平成14)年、村上隆の『HIROPON』(223.5×104×122 cm)が、クリスティーズのオークションにおいて約4,890万円で落札されました。
『HIROPON』は、1997(平成9)年に村上隆が制作した、ピンクの髪の等身大美少女フィギュアです。本記事でも紹介した通り、若い女性が巨大なバストからほとばしる母乳で縄跳びをしている様子を表現しており、その過激な造形が大変注目を集めました。
村上隆の作品は強化買取中
出典元:ウィキメディア・コモンズ
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情報参考サイト
・MOMA
・文化庁
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