中西夏之とは?多彩な表現活動で有名 その略歴や代表作を紹介

2023/08/17 ブログ

中西夏之とは?多彩な表現活動で有名 その略歴や代表作を紹介

美学校の創立に貢献した「中西夏之」。
彼は絵画を「筆が通過し痕跡に生まれる空間」と感じながらも、オブジェやインスタレーション、オペラの舞台美術やパフォーマンスを含め、アーティストとして幅広い活動を続けました。今回は中西夏之の略歴や代表作など、彼の知られざる世界観をお届けます。

中西夏之の略歴

まずは、中西夏之の生い立ちからご紹介します。
学生時代やプロ転向からの経歴を解説し、人生の節目となった出来事もお伝えしましょう。

1935年東京生まれ

1935年、東京市品川区大井町(現在の東京都品川区)で誕生。1954年、東京都立日比谷高等学校を卒業。1958年に東京藝術大学美術学部絵画科(油画専攻)を卒業しました。大学時代の同級生に現代美術家の高松次郎、工藤哲巳、磯辺行久が存在します。

1959年、平面作品の新しい可能性を探る「シェル美術賞」で佳作を受賞。大理石の粉を使った石膏状の画面に、エアコンプレッサーでT字形をデザインした「韻」は、若手作家の感性を活かした作品として評価されました。1960年にも、「韻」シリーズを2つ完成させています。

1962年:山手線事件と称したパフォーマンスを決行

高松次郎・赤瀬川原平(現在の川仁宏)と共に、山手線のホームや車内でパフォーマンス。卵型のオブジェを割る。スーツを着て顔に白いドーランを塗る。小さなオブジェを車内へ持ち込むなど、公共の場でさまざまなハプニングを起こしました。

1963年、第15回読売アンデパンダン展に「洗濯バサミは攪拌行動を主張する」を出品。キャンバスから伸びた紙紐へ、アルミ製の洗濯バサミをつけた中西の代表作です。当時はキャンバスから外れた場所にも洗濯バサミが展示され、鑑賞者が拾って持ち帰った過去もあったとか。洗濯バサミで、攪拌行動を表現していたのかもしれません。

1963年: ハイレッド・センターを結成

高松次郎(高=ハイ)、赤瀬川原平(赤=レッド)、中西夏之(中=センター)の苗字の頭文字を英語に変換し、3人で「ハイレッド・センター」と呼ばれる集団を結成。目的は芸術活動の共同性で、それぞれに「日常とアートの融合を目指した」と言われています。

1965年には、舞踏家の大野一雄や土方巽とも交流。美術評論家の瀧口修造や小説家の澁澤龍彦とも出会いました。その結果、暗黒舞踏派の公演「バラ色ダンス〜澁澤さんの家の方へ」や1968年の「土方巽と日本人—肉体の叛乱」の舞台美術を担当。舞踏グループ「山海塾」とも一緒に作品を制作します。

1972年:「中西夏之・素描教場」開く

舞台美術に力を注ぎながらも、1970年代から白、紫、黄緑を使った油彩を開始。「山頂の石蹴り」や「エメラルドの台座」、「9ツの色点と凹型の六角形」や「弓形が触れて」などの連作を発表。弧線モチーフを組み合わせた複数の技法も駆使し、中西の鋭い感性と芸術性が主張されます。

「山頂の石蹴り」は、2つの三角形に支えられたハートがベース。魚やリンゴ、鏡や海を盛り込み、扇形にデザインされました。美学校に「素描教場」を開設。床へ並べたワイングラスに水を注ぎ、紙の円をハサミで切り抜く儀式を習慣にしたと言われています。1980年代は白から紫へ色調を移し、「夏のために」や「紫・むらさき」など、モダンさを感じられる絵画を描きました。

1996年:東京藝術大学美術学部絵画科教授に就任

1997年、東京都現代美術館で「白く、強い、目前、へ」を開催。2002年に名古屋市美術館で「柔らかに、還元」、同年、愛知県美術館と愛媛県立美術館にて「広さと近さ-絵の姿形」の展覧会を開きました。2003年に東京藝術大学大学美術館で「二箇所-絵画場から絵画衝動へ―中西夏之展」を開催し、2004年から倉敷芸術科学大学の教授に任官するも2007年に退官。

2008年、渋谷区立松濤美術館で新作展「絵画の鎖・光の森」を開催し、2012年、DIC川村記念美術館にて「韻 洗濯バサミは攪拌行動を主張する 擦れ違い/遠のく紫、近づく白斑」展を開き、空間への芸術を主張しました。2016年没。

中西夏之の代表作品を紹介

中西夏之の代表的シリーズとして、初期の≪韻≫、≪山頂の石蹴り≫、≪夏のための≫は有名です。他にも「弓形が触れて Ⅳ」「洗濯バサミは撹拌行動を主張する」「コンパクト・オブジェ」など、現代美術を表現した作品をご紹介します。

「弓形が触れて Ⅳ」

1978年制作。小さな竹弓を取りつけた作品です。弧は画面へ接し、画面を鑑賞者に例えるとすれば、円弧が背後へ迫っているようにも感じられるでしょう。

取り付けられた竹弓は一部に過ぎませんが、画面と円弧を組み合わせることで空間構造を表現。落ち着いた渋い色合いの画面だからこそ、円弧は空間を彩る装置の役目を担っているのかもしれません。

「洗濯バサミは撹拌行動を主張する」

1963年制作。中西夏之の作品は。これを外して語れません。これまでの平面作品から飛び出した世界観は、撹拌行動の象徴。見慣れない芸術に驚くかもしれませんが、キャンバスの枠を越えた作品は、ちょっとした日常と隣り合わせなのです。

身近な生活にある洗濯バサミだからこそ、立体的な空間を生む材料になる。美術館と洗濯バサミを組み合わせた、他にはない唯一無二の作品と呼べるのではないでしょうか。

「コンパクト・オブジェ」

1968年制作。アクリル樹脂で固めた卵型のオブジェへ、身の回りにある物を入れた作品です。オブジェの中に鎖・針・電球・赤い糸・ハサミ・コルク瓶など、さまざまな物を封入。それはまるで日用品の欠片を集め、どこへでも持ち歩けるカプセルと言えるかもしれません。

命の誕生を司る卵に込められたガラクタも、展示されることで美術品へ生まれ変わります。相反する物が融合した形こそ、中西夏之の芸術を表わしています。

中西夏之の作品が鑑賞できるのは?

展示会の開催をご紹介します。現代美術が表現した作品の魅力を感じてください。

東京国立美術館に所蔵

以下、5点の作品を所蔵しています。代表作と呼ばれるこれらの作品は美術館で保管されているので、そう遠くないうちに展覧会も開かれるはずです。開催予定の展覧会は告知されるため、ホームページなどで確認しましょう。

・コンパクト・オブジェ(1962年)
・コンパクト・オブジェ 沈む鋏(1968年)
・紫・むらさき XVII(1983年)
・韻(1959年)
・韻(1960年)

アクセス    東京都千代田区北の丸公園3-1
営業時間    10:00~17:00(10:00~20:00/金曜日・土曜日)
休館日    月曜日、祝日の翌日、 年末年始、展示替期間

ファーガス・マカフリー東京「Seeing without a Seer」開催

9/16までドローイング展が開催されています。ドローイングとは、線(ライン)だけで描いた絵画のこと。鉛筆・ペン・木炭などで描く、個性あふれる作品です。ファーガス・マカフリーはアメリカのニューヨークにあるギャラリーで、2018年の春に東京へオープンしました。

中西の作品は、2mの柄を持つ筆で描かれたドローイングなので、これまでの芸術とどのような化学反応を起こしているか鑑賞してください。緻密で繊細。細い線でデザインされた作品は、他のアーティストにはない日本人らしさも表現されているでしょう。

アクセス    東京都港区北青山3-5-9
営業時間    11:00~19:00(火曜日~土曜日)
休館日    日曜日、月曜日、祝日

「美術館まで足を運べない」という方へ
タイトル「Nakanishi Natsuyuki」で、作品を掲載した美術書も出版されています。

中西夏之に関する豆知識(トリビア)

簡単なトリビアをご紹介します。「さすが芸術家」というちょっとした驚きも垣間見えるかもしれません。
 

猿橋倉庫は元アトリエだった

山梨県大月市にある「猿橋倉庫」は、自身の元アトリエでした。「着陸と着水展」や「二箇所 中西夏之展」などへ出品した作品は、すべてこの猿橋倉庫で生み出されています。土地は元織機工場。幅15m×奥行20mの木造構造で、天井や床をリフォームし、「ホリゾント」と呼ばれる背景用の壁もしくは幕を設置しました。

このアトリエでパフォーマンスや展示も行われていましたが、時間の流れと共に建物は劣化。損傷が激しく利用も難しくなってきたので、その後は中西夏之と土方巽の資料を保管する収蔵庫として活用しています。

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まとめ

作品の売却をご検討されている場合は、「獏」へご相談ください。
中西夏之の芸術をしっかり評価させていただきます。