奈良美智はどんな現代アート作家?女の子の絵である代表作「春少女」や作品の落札・買取価格ついて徹底解説

2022/01/19 ブログ

奈良美智はどんな現代アート作家?女の子の絵である代表作「春少女」や作品の落札・買取価格ついて徹底解説

奈良美智_子ども

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奈良美智(なら よしとも)は、青森県出身の日本を代表する現代美術家です。その作品は日本のみならず、ニューヨーク近代美術館やロサンゼルス現代美術館などにも所蔵されており、村上隆草間彌生共に世界的にも高く評価されています。

 

奈良美智の作品の中でも挑戦的な眼差しを持つ子供の絵は特に有名なので、誰もが1度は見たことがあるのではないでしょうか?

 

今回は、奈良美智の略歴や代表作品、作品の価格などについて詳しく解説します。

 

 

奈良美智の生い立ちと略歴

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

まずは、奈良美智の独特な作風がどのようにして生まれたのかを探っていきましょう。

 

 

1959年:青森県で誕生し幼少期の多くの時間を1人で過ごす

 

奈良美智は1959(昭和34)年に、りんごで有名な青森県弘前市で生まれました。奈良美智は、共働きの両親や年の離れた兄弟との関係で、幼少期を1人で過ごすことが多かったようです。空想をしたり絵を描いたりして過ごし、孤独の中で自分を掘り下げた経験は、奈良美智の創作活動の根源になっているといえるでしょう。

 

1978(昭和53)年に青森県立弘前高等学校を卒業し、1981(昭和56)年に愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻へ入学しました。同大学の大学院修士課程を修了後、奈良美智はドイツへ渡りました。

 

 

1994年:ケルンへ移住、挑戦的な眼差しの子供を頻繁に描く

 

30歳にさしかかる1988(昭和63)年、奈良美智はドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミーへ入学しました。奈良美智は言葉が通じない環境の中でまたもや孤独と戦いながらA.R.ペンクなどから学び、アカデミーを卒業します。1994年にはケルンに住まいを移して創作に励みました。

 

ケルン時代、奈良美智は彼の代名詞でもある挑戦的な眼差しの子どもの絵を多く制作しています。代表作のひとつである『Knife Behind Back』は、ケルン時代の終わりに描かれました。作品制作に打ち込む中で個展を開催する機会も増え、奈良美智は徐々に芸術家としての地位を確立していきました。

 

 

2000年:帰国、個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」で国内5カ所を巡回

 

奈良美智はドイツで約12年を過ごした後、2000(平成12)年に帰国しました。その翌年には、絵画、ドローイング、立体作品など幅広く展示する大規模な個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」を開催します。

 

神奈川県の横浜美術館を皮切りに、兵庫県の芦屋市美術博物館、広島県の広島市現代美術館、北海道の北海道立旭川美術館、青森県の吉井酒造 煉瓦倉庫の全5か所を巡回したこの展覧会は、驚異的な入場者数を記録して奈良美智の名を世に広めました。

 

 

2010年:翌年にかけて、ニューヨークのアジア・ソサエティ美術館で行われた大規模な個展「Nobody’s Fool」が好評を得る

 

2010(平成22)年から翌年にかけてニューヨークで開催された「Nobody’s Fool」は、奈良美智の歩みを振り返る大規模な回顧展覧会です。アジア・ソサエティ美術館では、この展覧会によって過去最多の入場数を記録したといいます。「Nobody’s Fool」が開催された同年、奈良美智はニューヨーク国際センター賞を受賞しました。

 

東北出身の奈良美智は、翌年の東日本大震災で一時鉛筆が持てなくなるほどの衝撃を受けました。しかし、そのショックを乗り越えて開催した個展「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」は高く評価され、芸術選奨文部科学大臣賞(美術部門)を受賞しています。

 

奈良美智は、現在栃木県に住まいを移し、そこで絵画や彫刻の制作に励んでいます。奈良美智の日常は彼のTwitterなどから知ることできるので、興味のある方はチェックしてみましょう。

 

 

奈良美智の作品の世界観

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

奈良美智の作品は、無垢さ、無邪気さの中に悪魔的な部分を持ち合わせた独特の魅力を持っているといわれています。それを最もわかりやすく表現しているのは、彼の代名詞でもある挑戦的な眼差しをこちらに向ける子どもの絵です。柔らかい曲線で描かれたかわいらしい姿とは対照的に、こちらをじっと睨み付けて心の中を見透かしているような表情が、見る人を落ち着かない気分にさせます。

 

奈良美智は音楽、特にロックが好きなアーティストとしても有名ですが、このことは彼の作品を読み解くためのヒントになるでしょう。ロックは、若者による体制批判という一つの側面を持っています。それをふまえると、奈良美智の描く少女は誰もが心の中に持っているピュアな部分を表現しており、損得勘定や利害関係に絡み取られた現代の大人、あるいは鑑賞者自身を批難していると考えられます。

 

奈良美智は社会問題にも深く関心を持っており、シリア難民支援のためのデザインカード制作なども行いました。また、2011(平成23)年の東日本大震災後には、複雑な想いを抱えた生身の人間らしさを感じさせる作品を制作しています。

 

 

奈良美智の代表作品を解説

 

奈良美智の作品の中から、代表的な絵画作品と立体作品を2つずつ紹介します。

 

 

春少女

 

『春少女』(2012年)は、奈良美智の東日本大震災後の作風が顕著に感じられる、重要な作品のひとつです。個展「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」に出品した作品で、今は神奈川県の横浜美術館に所蔵されています。 木漏れ日のように降り注ぐ光と柔らかく明るい色彩からは、出会いと別れの季節である「春」がはっきりと感じられるでしょう。

 

大きな目を見開いてまっすぐ前を向き、希望を胸にいま歩き出そうとする少女を、温かく優しいタッチで描いている作品です。

 

 

Knife Behind Back

 

『Knife Behind Back』(2000年)は、奈良美智が約12年に及ぶドイツ滞在を経て日本に帰国した年に描かれました。奈良美智の代名詞ともいえる挑戦的なまなざしの女の子を描いたインパクトのある作品です。

 

作品名からはナイフを隠していることが伺えるものの、ナイフそのものは描かれていません。描かれているのは赤い服を着た3歳くらいに見える幼い少女です。この作品は2019(令和元)年に行われたサザビーズ香港のオークションで約27億円という高額で落札され、大きな話題となりました。

 

 

あおもり犬

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出典元:flickr

 

奈良美智の作品『あおもり犬』(2006年)は、青森県立美術館にある高さ8.5mの立体作品です。常設展示室のすぐ外に設置されたこの彫刻の白い犬は、その大きさと下半身が地面に埋まっているという不思議さで、見る人の興味を惹きつけます。

 

まるで誰かに発掘されるのを待っているかのようにも見える『あおもり犬』は、眠るように目を伏せて静かに佇んでいます。奈良美智は、ドイツ時代に描いた『まぼろしの犬のピラミッド』(1991年)や絵本『ともだちがほしかったこいぬ』(1999年)のように、「犬」をモチーフとした作品も多く制作しています。

 

 

Miss Forest

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出典元:flickr

 

奈良美智は2016(平成28)年より『Miss Forest/森の子』というブロンズ彫刻のシリーズを制作しています。この作品では、頭部が空に向かって樹木のように高くそびえる女の子が表現されています。奈良美智には、東日本大震災直後に絵が描けなくなった時期があり、そのときに粘土などを使った立体作品の制作を始めました。

 

『Miss Forest/森の子』は、青森県立美術館や栃木県にある奈良美智の私設美術館N'sYARD、アメリカのロサンゼルス・カウンティ美術館などで鑑賞できます。

 

 

奈良美智の作品か鑑賞できる美術館

 

続いて、奈良美智の代表作『あおもり犬』や『Miss Forest/森の子』などを身近に鑑賞できる国内の美術館をいくつか紹介します。

 

 

N'sYARD|栃木県那須塩原市

 

N'sYARDは、奈良美智を中心とする現代美術家の作品や彼の収集したレコードジャケットやオブジェも展示している、奈良美智の私設美術館です。冬季休館中に、年に1度の展示替えを行っているそうです。

 

奈良美智の世界観に浸りたい人は、自然豊かな那須の地にあるN'sYARDへ行ってみましょう。作品鑑賞はもちろん、奈良美智のこだわりのつまった庭やカフェでゆっくりリフレッシュできるのも魅力のひとつです。

 

住所 栃木県那須塩原市青木 28-3
電話番号 0287-73-5711
開館時間 10:00 - 17:00(入館は16:30まで)
休館日 毎週火曜日・毎週水曜日 (毎年12月中旬から翌年3月下旬にかけて休館)
公式HP https://www.nsyard.com/

 

 

原美術館ARC|群馬県渋川市

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

「原美術館ARC」は、公益財団法人アルカンシエール美術財団が運営する美術館です。群馬県渋川市にあった「ハラ ミュージアム アーク」が、東京にあった「原美術館」と統合し、2021年に「原美術館ARC」としてリニューアルオープンしました。

 

原美術館に常設されていた『My Drawing Room』も、原美術館ARCに移設されています。『My Drawing Room』は、2004年に原美術館で開催された「奈良美智―From the Depth of My Drawer」展に合わせて制作された作品で、奈良美智のアトリエをそのまま作品にしたようなユニークな作りが人気を集めていました。

 

住所 群馬県渋川市金井 2855-1
電話番号 0279-24-6585
開館時間 9:30-16:30(入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日

木曜日(祝日と8月、2021年12月30日を除く)展示替え期間、

1月1日、冬季(2022年1月11日から3月18日まで)

公式HP https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/?referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com%2F

 

青森県立美術館|青森県青森市

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

青森県立美術館では、三内丸山遺跡から発想を得たといわれる青木淳設計のユニークな建物で、個性あふれる青森県ゆかりの作家の作品を鑑賞できます。

 

青森県立美術館は奈良美智の作品を170点以上所蔵しています。特に彼の代表作である『あおもり犬』や『Miss Forest/森の子』のような立体作品は青森県立美術館の見どころのひとつといえるでしょう。また、『続いてゆく道に』(1990年)や『Mumps』(1996年)のような貴重な初期の作品も楽しめます。

 

住所 青森市安田字近野185
電話番号 017-783-3000
開館時間 9:30-17:00(入館は16:30まで)
休館日

毎月第2、第4月曜日 (この日が祝日の場合は、その翌日) 、

年末年始(2021年度は12月27日から1月1日まで)

公式HP http://www.aomori-museum.jp/ja/

 

 

弘前れんが倉庫美術館|青森県弘前市

 

弘前れんが倉庫美術館は、2002(平成14)年に開催された個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」の会場にもなった吉井酒造 煉瓦倉庫を改修して設立されました。明治・大正期に建設された趣のある倉庫を利用した建物で、奈良美智やジャン=ミシェル・オトニエルなどの現代アーティストの作品を鑑賞できます。

 

エントランスで入館者を出迎えてくれるのは、奈良美智の立体作品『A to Z Memorial Dog』(2007年)です。結婚式やパーティーも開ける「CAFE&RESTAURANT BRICK」が隣接されており、食事も一緒に楽しめます。

 

住所 青森県弘前市吉野町2-1
電話番号 0172-32-8950
開館時間 9:30-17:00
休館日 火曜日(祝日の場合は翌日に振替)、年末年始
公式HP https://www.hirosaki-moca.jp/

 

 

奈良美智の作品の価値について

 

ここ最近のオークションで話題になった、奈良美智の作品の落札価格をピックアップしました。奈良美智の作品が大勢の人から注目され、人気を集めていることがわかります。

 

 

2021年:Lollipop(Nara D-1998-010)|6,700万円

 

現代アートを中心に扱うオークション「SBIアートオークション」は、2021(令和3)年の4月23、24日の2日間にわたり、第44回モダン&コンテンポラリーセールを開催しました。東京・代官山のヒルサイドテラスで行われたこのオークションには、奈良美智の版画作品やドローイングなどが出品されました。

 

なかでも注目されたのは、2日目に6,700万円で落札された奈良美智のドローイング『Lollipop(Nara D-1998-010)』(1998年)です。予想落札価格の1,500~2,500万円を大きく越えた価格で落札され、今回のセールの最高落札額をたたき出しました。

 

 

2021年:Missing in Action|約15億円

 

2021(令和3)年の6月7、8日の2日間にわたって開催された「20世紀・コンテンポラリーアート&デザインセール」は、フィリップス オークショニアズとポーリーオークションによる共同開催で実施されました。このオークションでは草間彌生の作品も高額で取引されましたが、さらに上を行ったのが奈良美智の『Missing in Action』(2000年)です。

 

ドイツから12年ぶりに帰国した節目の年、2000年に製作されたこの作品には、奈良美智の作品の代名詞である目のつり上がった女の子が描かれています。奈良美智の『Missing in Action』は約15億円という驚きの高値で落札され、オークション1日目のハイライトとなりました。

 

 

2019年:Knife Behind Back|約27億円

 

世界最古の美術品オークション会社として知られる「サザビーズ」が2019(令和元)年に香港で行ったオークションで、奈良美智の『Knife Behind Back』(2000年)が約27億円という高額で落札され、話題になりました。

 

それまでの奈良美智の最高取引価格が5億円であったのに対して、このオークションでは5倍以上の高値で作品が取引されたことになります。『Knife Behind Back』によって、奈良美智の最高取引価格の記録が大幅に塗り替えられました。

 

 

奈良美智の作品の買取相場

出典元:Pixabay

 

奈良美智の作品は、ごく小さなサイズのドローイングでも100万円以上で取引されます。同じドローイングでも6,700万円で取引された『Lollipop(Nara D-1998-010)』(1998年)のような作品も存在します。また、油彩や彫刻作品などになるとさらに価格が上がり、何十億という単位で取引される場合もあるでしょう。

 

奈良美智の作品は草間彌生の作品と並んで値上がりが続いています。ただし、ここ数年に限定すると奈良美智の作品の値上がり率のほうがより大きいでしょう。全体的にはここ数年で2~3倍程度に値上がりしているものが多く、10年前と比べると価格が20倍近くに跳ね上がった作品も存在します。

 

奈良美智の作品はこれからも値上がりし続ける可能性があり、その行方から目が離せません。

 

 

奈良美智に関するトリビア

 

最後に奈良美智に関するトリビアを集めてみました。

 

 

奈良美智は現在結婚しており、娘もいる。

 

私生活をあまり見せないために独身とも思われがちな奈良美智ですが、実は結婚しているといわれています。いまは公開されていない過去のブログの記録によると、2006(平成18)年あたりで結婚したと考えられます。

 

子供については情報が少なくはっきりとしたことはわかっていません。ただし、奈良美智のTwitterには年の若い女の子の姿が投稿されていることもあります。本人が明言しているわけではないのでわかりませんが、この子が奈良美智の娘という可能性もあるでしょう。

 

奈良美智のTwitter 

 

 

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