彫刻家の名和晃平はどんなアーティスト?鹿の剥製を利用した代表作や作品が観られる美術館を紹介
彫刻家の名和晃平はどんなアーティスト?鹿の剥製を利用した代表作や作品が観られる美術館を紹介
名和晃平(なわこうへい)は、京都を拠点として国際的に活躍するアーティストです。彫刻を主に手がけ、アナログとデジタルが融合する独自の世界観が国内外で人気を集めています。
鹿の剥製を使った彫刻がメトロポリタン美術館にコレクションされたときには、同美術館に日本の現代アート作品が所蔵されたのは初めてだったこともあり、大変注目されました。今回は、そんな名和晃平の作品が持つ世界観や作品の相場などについて紹介します。
参考サイト:KOHEI NAWA
名和晃平の略歴
まずは、名和晃平のアーティスト人生を追いながら、独特の世界観がはぐくまれた背景に迫ってみましょう。
1975年:大阪府に生まれる
大学会館(左)および中央棟(右)
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1975(昭和50)年、名和晃平は大阪府高槻市に生まれました。名和晃平は、京都市立芸術大学美術科彫刻専攻を卒業したのち、交換留学で英国王立芸術大学院(Royal College of Art)へ進み、学びを深めます。
1999(平成11)年にはロンドンの「Gulbenkian Gallery」で、グループ展「OSMOSIS」に参加しました。
2003年:京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了
1年間の交換留学ののち、名和晃平は京都市立芸術大学の美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻へ進み、2003(平成15)年に修了しました。名和晃平は、2000(平成12)年に京都府の「ギャラリーそわか」で個展「アニマズモ」を開くなど、在学中から本格的にアーティスト活動を開始します。
2005(平成17)年にはアジアン・カルチュラル・カウンシルの日米芸術交流プログラムにてニューヨークに滞在、2006年にはダイムラー・クライスラー・ファウンデーション・イン・ジャパンの芸術支援活動プログラムにてベルリンに滞在し、見聞を広げました。
また、2006年には東京都のアートギャラリー「SCAI THE BATHHOUSE」にて個展「GUSH」を開催し、注目を集めます。
2009年:「SANDWICH(サンドイッチ)」を立ち上げる
2009(平成21)年、名和晃平は創作のためのプラットフォーム「SANDWICH」を立ち上げました。京都市伏見区にあるサンドイッチ工場跡を利用して創設されたSANDWICHは、スタジオ、オフィスとして利用できるうえ、キッチンや宿泊設備も備えています。
SANDWICHはアーティストやクリエイターが、お互いに影響を与えあいながらプロジェクトを進めるプラットフォームとして、現在も利用されています。
また、2009年には銀座の「メゾンエルメス」やドイツのハンブルグのギャラリー「Vera Munrol」で個展を開きました。そして、名和晃平は同年のアジア・パシフィック・トリエンナーレや、2010年の釡山ビエンナーレ、第14回アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラディシュ2010にも参加します。
特に日本代表作家として参加したアジアン・アート・ビエンナーレ・バングラディシュでは、最優秀賞を受賞して話題になりました。
参考サイト:SANDWICH
2011年:東京都現代美術館で個展「名和晃平―シンセシス」を開催
2011(平成23)年、名和晃平にとって初めての美術館での大規模個展である「名和晃平ーシンセシス」が、東京都現代美術館で開催されます。タイトルになっている「シンセシス(SYNTHESIS)」とは「合成」を意味する言葉です。
この展覧会は、大きな空間の中を繰り返し回遊しながら大小さまざまな作品を合わせて鑑賞できるつくりになっており、キャプションや解説を極力省いたユニークな展示が大変人気を呼びました。
名和晃平は、その後も国内外の多くのプロジェクトや展覧会に参加し、精力的に活動を続けます。
2022年:十和田市現代美術館と十和田市地域交流センターで個展「名和晃平 生成する表皮(Genetarive Interface)」を開催
2022(令和4)年9月20日、青森県の十和田市に十和田市地域交流センターが開館します。それを記念して、十和田市現代美術館では6月18日から、十和田市地域交流センターでは10月1日から、個展「名和晃平 生成する表皮(Genetarive Interface)」が開催されることとなりました。
「名和晃平 生成する表皮」には、彼が大学院生時代に制作したドローイングから注目の最新作「Biomatrix (W)」までが幅広く展示されており、名和晃平の世界観を肌で感じたい多くのファンがに訪れています。
現在、名和晃平は京都を拠点として活動しています。多方面に展開する彼の活躍から、今後も目が離せません。
名和晃平の作品の世界観
White deer
東京 赤坂プリンス クラシックハウス前のパブリックアート
出典元:flickr
名和晃平は、アナログとデジタルの融合を独自の世界観で表現する彫刻家です。
特に「PixCell(ピクセル)」シリーズ、「SCUM(スカム)」シリーズ、「Trans(トランス)」シリーズが広く知られ、素材の特徴と最先端の技術をかけ合わせた多様な空間表現がファンを魅了しています。
PixCellシリーズにはモチーフの表面を無数の透明な球体(ガラスや水晶)で覆った「BEADS(ビーズ)」、プリズムシートを使ってモチーフを虚像として彫刻化し鑑賞者を翻弄する「PRISM(プリズム)」、水やシリコーンオイルなどを用いた特殊な液体に泡を発生させる「LIQUID(リキッド)」が存在します。
また、第14回アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラディシュ2010で最優秀賞を受賞したのは、灰汁(あく)が浮き出てくるようにぶくぶくと増殖する表皮を表現したSCUMシリーズです。Transシリーズの作品は、人体を3Dスキャンしてさまざまな加工を施します。
彫刻を主に扱う名和晃平ですが、ドローイング作品も手がけています。バラエティ豊かな作品が生み出す不思議な世界は名和晃平の公式ウェブサイトからものぞけるので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
名和晃平の代表作品を解説
それでは、名和晃平の代名詞である鹿の剥製を使った作品を含め、代表作品を三つ紹介します。
PixCell-Deer
出典元:flickr
PixCellシリーズのなかでも特に人気があるのが、鹿の剥製の表面を大小さまざまなガラス玉で覆った『PixCell-Deer』です。『PixCell-Deer』は名和晃平の代名詞とも言えるでしょう。ちなみに「PixCell」とは、名和晃平がPixel(画素)とCell(細胞、粒、器)を掛け合わせてつくった言葉です。
大きさの異なる透明な球体を通して鹿を見ると、視点がずれることによってレンズの中の像が移り変わります。デジタルの画面を通して見ているかのような「見えそうで見えないもの」「触れそうで触れないもの」が鑑賞者を魅了します。
2011(平成23)年に制作された『PixCell-Deer#24』は、同年ニューヨークのメトロポリタン美術館にコレクションされ、大変話題になりました。
Metamorphosis Garden
『Metamorphosis Garden(変容の庭)』は、名和晃平のインスタレーション作品です。瀬戸内海の犬島にある『 Biota(Fauna/Flora)』という作品を発展させて生まれたこの作品は、GINZA SIX内において期間限定で鑑賞できます。期間は、2021(令和3)年4月12日(月)から2022(令和4)年10月までの予定です。
『Metamorphosis Garden』は、生命と物質、またはその境界にある曖昧なものが共存する世界をテーマとしています。雲海のようなオブジェの中にたたずむ大きな白い鹿は、混沌から生じる新たな生命の象徴といわれています。
作品に「AR×ART」アプリをかざすと、振付家ダミアン・ジャレとのコレボレーションによるARパフォーマンスを楽しめます。
Throne
Throne(g/p_ boy)
出典元:flickr
『Throne(玉座)』は高さ10m以上にもおよぶ黄金色の立体作品です。ルーブル美術館の象徴であるガラスのピラミッドに設置され、日仏合同プロジェクト「ジャポニスム 2018」の公式企画の一環として2018(平成30)年7月13日から2019(平成31)年2月18日まで展示されました。
子どもが座れるような小さなスペースが中央に設けられたこの作品は「空の玉座」です。権力を象徴する作品でありながら、誰にも座ってほしくないという名和晃平の思いが込められています。
『Throne』の原型となった『Throne(g/p_ boy)』という作品が、GINZA SIX6階の銀座蔦屋書店に展示されています。こちらの作品では小さな少年が玉座に座っています。
参考サイト:GINZA SIX | GSIX | ギンザ シックス
名和晃平の作品が鑑賞可能な美術館
名和晃平の作品は、メトロポリタン美術館をはじめとした世界中の美術館に所蔵されています。ここでは、気軽に出かけられる日本の美術館をふたつ紹介します。
十和田市現代美術館
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
青森県の十和田市現代美術館は、“アートによる「新たな体験」を提供し、未来の創造へ橋渡しをする美術館”となることを目指して、2008(平成20)年に開館しました。十和田市の中心市街地にある官庁街通り全体を美術館に見立てる「Arts Towada」計画の中心施設として、広く親しまれています。
個展「名和晃平 生成する表皮(Genetarive Interface)」の会場でもある十和田市現代美術館では、名和晃平が2018(平成30)年に制作した『PixCell-Deer#52』を、寄託作品として2023(令和5)年9月まで公開しています。
住所 | 〒034-0082 青森県十和田市西二番町10-9 |
電話番号 | 0176-20-1127 |
営業時間 |
9:00〜17:00(最終入館は閉館の30分前まで) ※月曜日(月曜日が祝日の場合は、その翌日)、年末年始は休館 |
料金 | 大人1,800円(企画展閉場時1,000円)、高校生以下無料 |
公式HP | https://towadaartcenter.com/ |
東京都現代美術館
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1995(平成7)年に開館した「東京都現代美術館(MOT)」は、日本の戦後美術を中心として国内外の現代美術を取り扱う大規模美術館です。美術図書室、ミュージアムショップ、カフェ等も充実しており、国内外のアートファンが多く訪れる人気スポットとなっています。
東京都現代美術館は名和晃平の作品を多く所蔵しており『PixCell-Deer #17』や『PixCell-Bambi #10』といった彫刻のほか、アクリル絵の具で描かれたドローイング作品『Gush #19』などが鑑賞できます。
住所 | 〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1(木場公園内) |
電話番号 |
03-5245-4111(代表) またはハローダイヤル(9:00~20:00 年中無休)050-5541-8600 |
営業時間 | 10:00〜18:00(展示室入場は閉館の30分前まで) |
料金 | 各展覧会により異なる |
公式HP | https://www.mot-art-museum.jp/ |
名和晃平の作品の落札価格とその価値について
国内のみならず海外からも高く評価されている名和晃平の作品は、近年価格が高騰しています。それでは、オークションで取引された注目の作品を紹介いたします。
2012年:PixCell - Greater Kudu|約5,000万円
2012(平成24)年、サザビーズ香港が開催したイブニングセールにおいて、名和晃平の『PixCell - Greater Kudu』が約5,000万円という高額で落札されました。
『PixCell - Greater Kudu』は、オンライン上のウェブサイトから取り寄せたクーズー(アフリカ原産のカモシカ)の頭部の剥製を、ガラス玉で覆って制作されました。2012(平成24)年に制作された作品です。
2016年:PixCell - Karuta#1(小野小町)|41.4万円
2016(平成28)年、SBIオークションが開催したオークションにおいて『PixCell - Karuta#1(小野小町)』が41万4,000円で落札されました。この作品は2014(平成26)年にタグボートで15万円で販売されていた作品なので、2年間で約2.5倍の値上がりを見せたことになります。
ちなみに、同シリーズの『PixCell - Karuta#2(紫式部)』(2点組)は、2021(令和3)年にSBIオークションが開催したオークションにおいて、予想落札価格40万円から70万円を大きく上回る約111万円で落札されています。
名和晃平の作品の買取相場
名和晃平の作品のうち、市場に多く出まわっているのはシルクスクリーンです。買取価格は非常に幅広く、7~40万円程度となっております。作品の保存状態や、作品自体の人気にも大きく左右されるでしょう。
名和晃平は、独自の世界観を持つ作品により国内外から高く評価されています。高額査定につながりやすい作家なので、お気軽にご相談ください。また、市場に出まわる機会は少ないですが、立体作品は高額買取の可能性がより高まります。
名和晃平に関する豆知識(トリビア)
最後に、名和晃平に関する豆知識を二つ紹介いたします。
名和晃平の作品集『METAMORPHOSIS(メタモルフォシス)』が人気
名和晃平の作品集『METAMORPHOSIS』は、個展のカタログ『SYNTHESIS』以降に制作された作品を中心に収録しています。光村推古書院より2019(令和元)年2月4日に出版され、名和晃平のヴィジョンやクリエイションを複合的に伝える内容が人気を呼んでいます。
「通常版」と「特装版 - COLLECTOR’S EDITION - 」の2種類がありましたが、アクリルケース入りのマルチプル作品1体がセットになっている特装版は、すでに完売しました。通常版は銀座 蔦屋書店の店頭か、オンラインショップから注文できます。
名和晃平の妻は元モデルでアーティストの清川あさみ
名和晃平は、2016(平成28)年の3月に元モデルでアーティストの清川あさみと入籍しました。 清川あさみは1979(昭和54)年生まれで、雑誌「Zipper」などのカリスマ読者モデルとして活躍後、2001(平成13)年に初めての個展を開催しました。
2003(平成15)年に東京都庭園美術館と水戸芸術館で個展を開催、2019(令和元)年には上海で個展「Incarnation」を開催しています。 現在は育児を両立しながら創作活動を続け、2022(令和4)年より大阪芸術大学の客員教授も務めています。
名和晃平の作品は強化買取中
近年、名和晃平は独特の世界観を持つバラエティ豊かな作品によって、国内外から大いに注目を集めています。そんな名和晃平の作品について、売却を検討している方がいらっしゃいましたら当社にご相談ください。丁寧に鑑定させていただきます。
また、鑑定経験が豊富な美術品買取専門店、株式会社獏では、ご希望により簡単・手軽・便利のすべてを実現したLINE査定も可能です。
LINE査定なら、わざわざ店舗に足を運んだり直接スタッフと話したりする必要もありません。余計な手間や時間を一切かけずに査定できるので、仕事や家事で忙しい方に人気です。 美術品や骨董品の売却をご検討の方は株式会社獏にご相談ください。