ネオポップの特徴とは|日本の代表的なネオポップのアーティストも紹介
ネオポップの特徴とは|日本の代表的なネオポップのアーティストも紹介
現在の日本には、世界に誇ることができるアーティストが数多く存在します。
そのアーティストたちの中には、ネオポップと呼ばれるアートの動向の中で活躍している人も少なくありません。
アートに興味がない人にも親しみやすいネオポップの作品は、世界的に高く評価されています。
ネオポップはどんな事情を背景に誕生し、どんな特徴を持っているのでしょうか。
代表的なアーティストとともにご紹介いたします。
ネオポップとは?特徴を解説
画像:flickr photo by Raffi Asdourian
日本人アーティストの作品が破格の値段で売れた、というニュースを耳にすることがあります。
それらの多くは、ネオポップのアーティストの作品です。
不思議な魅力をもつネオポップにはどんな特徴があるのでしょうか。
1990年前後にでてきた若手美術家による日本独自のアート分野
ネオポップは、1990年頃に日本で誕生したアートの動向です。
20世紀のアートは、欧米を中心にさまざまな動向が相互作用を及ぼしながら生まれ、変化してきました。ネオポップは、その中から生まれた日本独自のアートです。
1990年頃、若手とされていた日本人アーティストたちは、日本独自の大衆文化を引用した作品を制作し始めました。
遊び心があったり、あるいはかわいいと表現される作品に深いメッセージが込められていたり、ネオポップは一見しただけではわからない深みのあるアートです。
ネオポップは世界中で認められ、アーティストの作品の価格は上昇し続けているのです。
「ネオポップ」はアニメや漫画など日本のサブカルチャーを多く用いる作風が「ポップアート」に通じることが由来
ネオポップという言葉は、どこから派生したのでしょうか。
「ネオ(新しい)」と「ポップ」という2つの語から構成されるこの言葉は、1960年代にニューヨークを中心に興った「ポップアート」に由来しています。
ポップアートは、大衆消費情報社会が拡大する中で、広告デザインや写真を手段として表現を行った前衛芸術です。ポップアートの代表的な作家には、ロバート・ラウシェンバーグやジャスパー・ジョーンズなどがいます。
またポップアートは、欧米にあったアートのエリート主義に対抗する動向として注目され、その影響はヨーロッパや日本にも波及しました。
ネオポップは、日本の漫画やアニメといったサブカルチャーをテーマにすることが多く、この点が大衆文化に着目したポップアートとの類似点といえます。
ネオポップの誕生した背景や歴史
1990年代、バブル経済もたけなわの日本に誕生したネオポップは、どんな事情が背景にあったのでしょうか。
ネオポップの誕生した経緯、また歴史についてご紹介いたします。
1980年:ニューヨークを中心に流行した「シミュレーショニズム」から影響を受け誕生
シミュレーショニズムは、1980年代のニューヨークを中心にさまざまなアーティストによって体現されました。「コピー」や「流用」あるいは「模倣」することで、大衆文化をシミュレーションするという意味があります。
キャラクターグッズを作品に投影させるジェフ・クーンズや、ピカソなどの名画を模倣するマイク・ビドロが、代表的な作家とされています。このシミュレーショニズムが、ネオポップの誕生の後押しとなったのです。
1990年代、日本がアニメの最大輸出国となったことが、ネオポップの誕生や人気に拍車をかけたともいわれています。
アニメのスタイルやキャラクターの立体作品がネオポップの作品として生まれ、アートとして各国の美術展で鑑賞されるようになったのです。
現在:村上隆や奈良美智など日本アート界を牽引する作家を中心に世界でも高い評価を得る
ネオポップの人気は、21世紀に入っても衰えを知りません。
世界中の美術館ではネオポップをテーマにした展示会が開かれ、彼らの作品の価格は高騰の一途をたどっています。
ネオポップのアーティストの多くは現役で活動を行っており、今後の活躍も期待されています。
特に評価の高いネオポップのアーティストと代表作をまとめてみます。
村上隆 |
《Lonesome Cowboy》 《S. M. Pko2》 |
奈良美智 |
《Knife Bihind Back》 《あおもり犬》 |
太郎千恵蔵 |
《四月のドラゴン》 《未来は幽霊のもとに》 |
中原浩大 |
《A-movie, B-movi》 《Half Piece of Symmetry - 2》 |
中村政人 |
《秋葉原TV》 《スキマプロジェクト》 |
日本の代表的なネオポップのアーティストと作品を紹介
画像:flickr photo by Thad Zajdowicz
ネオポップを代表するアーティストたちの名前は、アートに興味がない人でも一度はニュースなどで目にしたことがあるかもしれません。
日本が世界に誇るネオポップの作家たちを、特徴とともにご紹介いたします。
村上隆
ネオポップの第一人者といえば、村上隆の名を思い出す人が多いのではないでしょうか。
村上隆は1962年に東京に生まれ、京藝術大学大学院美術研究科を卒業、同大学では日本画科初の美術博士号を授与されています。
こうした学識を土台にして、1990年代初頭には美術評論家でシミュレーショニズムの名著の作者、椹木野衣が企画したグループ展に参加しました。その賽に発表したのが、奇怪なオブジェクト《シーブリーズ》です。
また1994年の個展では、「DOB」という名のキャラクターを世に送り出し、アニメと現代美術をつなぐ村上隆のコンセプトを世に知らしめました。
欧米のアートのエリート意識と日本のアニメ文化の間にある乖離を、逆手に取ることが村上隆の一貫した姿勢です。それは国内外で高く評価され、 ベルサイユ宮殿や海外の有名美術館での個展も頻繁に開かれています。
2006年には芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しました。
奈良美智
もはや世界で知られる日本の「かわいい」カルチャーを体現しながら、その中に精神性を秘めた作品を生み出すことで知られているのが、奈良美智です。
奈良美智は1959年青森県に生まれ、愛知県立芸術大学やドイツの国立デュッセルドルフ芸術アカデミーで学び、個性を確立していきました。
可愛らしくも鋭い視線を持つ一連の少女像は、奈良美智の代表作となっています。
また1995年に開催した個展『深い深い水たまり』は、ネオポップの明るさと詩的な精神性の融合として、高い評価を受けました。
《あおもり犬》をはじめとする彫刻も手掛ける奈良美智の作品は、アーティストの鋭い感受性をイラスト的な技法で表現するところに特徴があります。一度見たら忘れられないその作風は、若い世代にも絶大な人気を誇ります。
2012年には、『奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている』と名付けた展示会が、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。
中原浩大
村上隆とともに美術評論美術評論家が企画したグループ展に参加し、ネオポップの担い手として認められたのが中原浩大です。
中原浩大は1961年に岡山県に生まれ、京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了しました。
1980年代から関西に拠点を置く若手作家のグループ「関西ニューウェーブ」を率い、1990年代からプラモデルやおもちゃを使った作品で頭角を現しました。
1992年の「アノーマリー」展では、村上隆やヤノベケンジらとともに注目を浴びましたが、1990年代半ばに活動を休止していました。
阪神大震災を契機に、子供たちを救うことを目的とした「カメパオプロジェクト」を創立し、現在は母校の京都市立芸術大学で教鞭をとっています。
白い背景から浮き出るような端然としたオブジェクトが彼の作風であり、ネオポップに潜む哲学性が感じられます。
中村政人
マクドナルドのロゴである「M」をかたどった電飾の作品《QSC+mV》で知られるアーティストが、中村政人です。
中村政人は1963年、秋田県大館市に生まれました。東京芸術大学美術学部絵画科を卒業、在学中から作品制作を開始しました。
村上隆とは芸大時代の同級生であり、1992年には「中村と村上」という展示会を開催、個性の強い2人の共同店が話題となりました。
大学では油絵を学んだ中村政人ですが、1990年代半ばからインスタレーション制作へと移行していきます。
前述したマクドナルドのロゴをテーマにした作品をはじめ、コンビニ大手のカラーボードをテーマにした《トラウマトラウマ》など、アメリカのシミュレーショニズムの影響を感じさせる作品が有名です。
また中村政人は、現在のアートの制度に疑問を投げかける作品や教育活動で知られ、パプリックスペースを使ったメッセージ性の強いプロジェクトも展開しています。
2001年のヴェネツィア・ビエンナーレには、日本代表として出展しました。
ネオポップの歴史や代表作家まとめ
1990年代に日本独自のアートの動向として誕生し、世界中から脚光を浴びたのがネオポップです。
ネオポップは、1960年代から始まるポップアートから派生した後、1980年代にニューヨークで展開したシミュレーショニズムに触発され、日本から発信されたアートです。
日本のアニメや漫画をテーマに、一見大衆的ながら、批判や詩的世界を秘めているのがネオポップの特徴です。
日本におけるサブカルチャーの世界的人気とともに、ネオポップのアーティストたちの評価も高くなっています。
その親しみやすいネオポップの作品に、ぜひ触れてみてください。