蜷川実花とはどんなアーティスト?写真家や映画監督としての略歴や代表作品を解説
蜷川実花とはどんなアーティスト?写真家や映画監督としての略歴や代表作品を解説
蜷川実花(にながわ みか)は、花や金魚などを撮影した極彩色の写真が人気を集める女性写真家です。また、彼女の持つ独特の色彩美を反映した映像作品も多く制作し、近年は映画監督としても活躍を見せています。
今回は、日本を代表するアーティストのひとりとしてアジアを中心に国際的にも注目されている蜷川実花について、略歴や代表作品を解説します。
蜷川実花の略歴
出典元:ウィキメディア・コモンズ
それでは写真家、映画監督として活躍する蜷川実花の歩みを詳しく見ていきましょう。
1972年:演出家で映画監督の蜷川幸雄と元女優でキルト作家の真山知子の間に生まれる
蜷川実花は1972(昭和47)年10月18日、東京都に生まれました。父親は演出家、映画監督として世界的評価も高い蜷川幸雄、母親は元女優の真山知子(現キルト作家の蜷川宏子)です。ちなみに、曾祖父は俳優の谷崎十郎です。
クリエイティブな家系に生まれた蜷川実花は、自らもクリエイターとしての道を選びました。桐朋女子高等学校を卒業すると、蜷川実花は多摩美術大学美術学部のグラフィックデザイン学科に進学しました。
1994年:多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科を卒業、在学中に数々の賞を受賞
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
多摩美術大学で写真撮影をしながらグラフィックデザインを学んだ蜷川実花は、写真家としての才能を開花させます。
蜷川実花は、在学中に第7回ひとつぼ展(「3.3㎡展」とも表記する。ガーディアン・ガーデンというギャラリー主催のコンテスト)の写真部門でグランプリを受賞しました。
さらに、2001(平成13年)には第26回木村伊兵衛写真賞(写真家の木村伊兵衛に敬意を表して朝日新聞社が創設した賞)を受賞します。
木村伊兵衛写真賞は「写真界の芥川賞」と呼ばれることもある権威ある賞です。木村伊兵衛写真賞を受賞した蜷川実花は、この頃に写真家としての確固たる地位を確立したといえるでしょう。
2007年:「さくらん」で映画監督デビュー、第57回ベルリン国際映画祭や第31回香港国際映画祭に特別招待作品として正式出品される
蜷川実花は、2007(平成19)年に映画「さくらん」において、初の映画監督を務めます。興行収入7.3億円で大きな話題を呼んだ「さくらん」は、第57回ベルリン国際映画祭や第31回香港国際映画祭に特別招待作品として出品され、国際的にも注目を集めました。
また、2012(平成24)年に監督を務めた「へルター・スケルター」では新藤兼人賞を受賞しました。そして、2019(令和元)年には「Diner ダイナー」「人間失格 太宰治と3人の女たち」の2本の作品を発表するなど、精力的に映像作品を発表し続けます。
写真家としても、2008(平成20)年に開催された回顧展「蜷川美香 地球の花、天国の色」では18万人以上の来館者を記録します。さらに、2016(平成28)年に台北現代美術館(MOCA Taipei)で開催された大規模個展「蜷川実花展」では13万人近くの来館者が訪れ、美術館の新記録を更新することとなりました。
2017(平成29)年に上海で開催した個展も大成功をおさめ、蜷川実花はアジアでの人気を不動のものとします。
2020年:東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事に就任
蜷川実花は、2020年に東京で開催されるオリンピックに向けて、2014(平成26)年に東京オリンピック組織委員会の理事に就任します。
東京オリンピック組織委員会の理事には、蜷川実花の他にも作詞家兼プロデューサーの秋元康や、2012(平成24)年のロンドンオリンピックに出場した元体操選手の田中理恵、2004(平成16)年アテネオリンピックのハンマー投で金メダルを獲得した室伏広治などをが選ばれました。
また、東京2020パラリンピックの公式アートポスターの制作者にも選ばれた蜷川実花は、「Higher than the Rainbow」という作品において、虹を背景に車いすに乗った女性がボールに手を伸ばす様子を表現しました。
蜷川実花の写真や映画作品の世界観
出典:flickr
花や金魚などを撮影した強い色彩の写真などで注目を集める蜷川実花は、日本を代表する女性写真家のうちの一人です。さまざまな賞を受賞しており、その人気は国内にとどまらず、アジアを中心とした世界中に多くのファンが存在します。
強烈な世界観を持つ極彩色の作品からは、美しさの反面タナトス(死への欲動)の要素を感じたり、ある種のグロテスクさを感じたりする人もいるでしょう。
しかしながら、近年では儚い美しさを表現した光あふれる作品も制作されており、蜷川実花の表現の幅はより広がってきているといえます。
写真家として高い評価を得ている蜷川実花は、その優れた色彩感覚を生かしてアーティスティックな映画をいくつも制作しています。
蜷川実花の映画作品では、色鮮やかな映像美はもちろんのこと、女性ならではの視点からえがく繊細かつリアルな描写も見どころといえるでしょう。
蜷川実花が監督の映画作品を解説
それでは、彼女独特の色彩感覚や世界観が反映された、蜷川実花が監督を務める映画作品を紹介します。
2007年:さくらん
出典:flickr
蜷川実花が映画監督に初挑戦した作品です。2001(平成13)年から雑誌「イブニング」で連載された安野モヨコ原作の漫画を映画化しました。
蜷川実花特有の極彩色を駆使した鮮烈な映像美が話題を呼び、第57回ベルリン国際映画祭や第31回香港国際映画祭に特別招待作品として出品されたのは先述の通りです。
吉原で育った土屋アンナ演じる遊女が、花魁になるまでの葛藤と苦労などの人生模様を色鮮やかに描いています。
2012年:ヘルタースケルター
蜷川実花の監督2作目です。1996年まで雑誌「FEEL YOUNG」に連載されていた岡崎京子の同名漫画を映画化しました。このマンガは第8回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しています。
理想を夢見て上京した若い女性りりこが、全身整形を経てトップスターに躍り出るまでの栄光の軌跡と、その後の転落人生をグロテスクに描いて注目を浴びました。
また、5年ぶりの沢尻エリカ主演作品としても話題になり、興行収入 21.5億円の大ヒットとなりました。
2019年:Diner ダイナー
蜷川実花の監督3作目では、男性が主人公を務めます。2009(平成21)年10月にポプラ社より刊行された、平山夢明の小説『ダイナー』を原作として制作されました。
バイオレンスアクションに挑んだこの作品では、殺し屋の集まるダイナーで繰り広げられる派手なアクションが注目を集めました。蜷川実花の父親である蜷川幸雄が才能を見出した、藤原竜也が主演を演じています。
2019年:人間失格 太宰治と3人の女たち
蜷川実花の監督4作目は、太宰治の遺作「人間失格」の誕生秘話を事実を基にしたフィクションとして映画化したものです。
小栗旬が主演を務め、太宰治を取り巻く3人の女性を宮沢りえ、 沢尻エリカ、二階堂ふみが演じました。興行収入13.2億円を記録した、R15+指定の作品です。
蜷川実花の作品価値と買取相場
蜷川実花は、現在も精力的に活動しており、今後の評価が気になるアーティストのひとりです。ただし、査定金額をご提案する上で参考にする二次流通(セカンダリーマーケット)には十分に作品が出回っていないため、売却時期によって評価が変わる可能性があります。
カラーネガから焼き付けるC-プリントで制作されたエディション作品が一般的ですが、他にも種類があるため、ご売却の際はお気軽にご相談ください。
蜷川実花の作品まとめ
蜷川実花は、美しい反面ある種の毒々しさも含む極彩色の写真作品や、彼女独特の世界観を反映した美麗な映画作品で人々を魅了する、人気のアーティストです。
2022年にはCLAMPの大ヒットコミックを映画化した『ホリック xxxHOLiC』も発表し、近年ますます活躍の幅を広げる蜷川実花から目が離せません。
日本のみならず、アジアを中心に世界的な人気を誇る蜷川実花の世界観は、彼女の公式ブログやインスタグラムからも垣間見えます。気になる人はぜひチェックしてみてください。