オノサトトシノブとはどんな油絵・版画作家?「ベタ丸」を描いた代表作や作品が観れる美術館、買取相場などを解説

2022/07/15 ブログ

オノサトトシノブとはどんな油絵・版画作家?「ベタ丸」を描いた代表作や作品が観れる美術館、買取相場などを解説

オノサトトシノブ_作品(油絵)

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オノサトトシノブ(本名:小野里利信)は、戦後日本の抽象画を牽引したアーティストです。オノサトトシノブの「丸」を用いた表現や画面全体をモザイクのような幾何学模様でうめる独特の作風は多くの人を惹きつけ、海外からも高い評価を得ています。

 

今回は、同時代に活躍した山口長男(やまぐちたけお)と並んで日本の抽象絵画の草分け的存在として知られるオノサトトシノブについて、略歴や代表作、作品の買取相場などを幅広く解説いたします。

 

 

 

オノサトトシノブの略歴

 

オノサトトシノブが生涯長く過ごした群馬県桐生市

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

まずは、二十歳前後で画家としての道を歩み始めたオノサトトシノブが、どのようにして国内外で認められるアーティストとなっていったのか、その歩みをたどりましょう。

 

 

 

1931年:津田青楓が開いた津田洋画塾に入塾する

 

オノサトトシノブは1912(大正元)年、長野県に生まれました。10歳の頃に父の転勤で群馬県の桐生市に引っ越します。オノサトトシノブは1931(昭和6)年に日本大学工学部電気科に入学しましたがその後中退し、京都出身の画家、津田清楓の開く津田洋画塾に入塾しました。

 

1935(昭和10)年、第22回二科展で初入選を果たしたオノサトトシノブは、塾生の仲間らとともに前衛美術団体「黒色洋画会」を結成しました。1938(昭和13)年には洋画家の長谷川三郎が中心となって結成した「自由美術協会」に加わり、画家としての活動を広げます。

 

オノサトトシノブは1941(昭和16)年から太平洋戦争に従軍し、終戦後シベリアに抑留されます。1948(昭和23)年にようやく群馬県桐生市に戻ることが叶いました。

 

 

 

1950年代:「ベタ丸」と呼ばれる作品を制作する

 

帰国後のオノサトトシノブは桐生市のアトリエで活動を再開し、1950年代には「ベタ丸」という輪郭を持たない単色の丸を描いた作品を制作しました。これ以降オノサトトシノブの丸を用いた独自の抽象表現は、国内外で高く評価されることとなります。

 

オノサトトシノブは1953(昭和28)年に東京都の神田にあるタケミヤ画廊で初めての個展を開き、1961(昭和36)年にはワシントンのグレスギャラリーでも個展を開催しました。 また、オノサトトシノブは1952(昭和27)年頃からカタカナで名前を表記しています。

 

 

 

1963年:第7回日本国際美術展(東京ビエンナーレ)で最優秀賞受賞

 

1963(昭和38)年、オノサトトシノブは第7回日本国際美術展(通称 東京ビエンナーレ)に作品を出品します。日本国際美術展とは1952(昭和27)年から1990(平成2)年まで開催されたアジア初の国際美術展です。オノサトトシノブはこの展覧会に作品「相似」を出品し、最優秀賞を受賞しました。

 

翌年の1964(昭和39)年に開催された第32回ヴェネチア・ビエンナーレでは、モザイクのように四角形で埋め尽くした画面に大きな丸が浮かび上がる油彩画作品を5点出品しました。また、オノサトトシノブが同年のグッゲンハイム国際賞展に出品した作品は、グッゲンハイム美術館によって買い上げられます。

 

 

 

1972年:スイスにあるコルンフェルト画廊で個展を開催する

 

1972(昭和47)年、オノサトトシノブはスイスのチューリッヒにあるコルンフェルトギャラリーで個展を開き『CIRCLE-'70』などの作品を出品して話題になります。オノサトトシノブの創作意欲は晩年に至っても衰えを見せることはありませんでした。

 

1986(昭和61)年、オノサトトシノブは急性肺炎のためにこの世を去りました。その後も群馬県立近代美術館や桐生市の大川美術館において、オノサトトシノブの回顧展が何度も開催されています。

 

 

 

オノサトトシノブの作品の世界観

 

作品(油絵)

 

オノサトトシノブは、日本における抽象絵画のパイオニアとして広く知られています。丸を用いた作品が非常に多く、なかでも1950年代のベタ丸を描いた作品が有名です。「ベタ丸」とはオノサトトシノブ自身が使った言葉で、輪郭を持たない単色の丸を指します。

 

1960年頃からは朱、黄、緑、紺の丸や四角形で画面を曼荼羅の様に埋め尽くし、そこから円形が浮かび上がる「幾何学的抽象様式」の作品が人気を得ます。オノサトトシノブは、彼の代名詞ともいえる丸を用いた抽象作品を国内外の多くの展覧会に出品しており、これらは海外からも高く評価されています。

 

 

 

オノサトトシノブの代表作品を解説

 

オノサトトシノブの作品の中でも特に有名なものを紹介します。

 

 

 

同心円

 

先ほど紹介した通り、オノサトトシノブは丸(円)をテーマとした作品を多く制作しています。そのなかでも1963(昭和38)年に制作した『黄色の輪のある同心円』、1965(昭和40)年に制作した『同心円』、1969(昭和44)年に制作した『二つの同心円』のように、「同心円」を描いた作品は有名です。

 

 

 

CIRCLE-'70

 

『CIRCLE-'70』は1970(昭和45)年に制作された作品で、オノサトトシノブの代表作品のうちの一つです。120cm四方のキャンバスに油彩で描かれました。

 

『CIRCLE-'70』は、1972(昭和47)年にスイスのコルンフェルト画廊での個展に出品され、現在は東京国立近代美術館に所蔵されています。

 

 

 

32コの丸

 

『32コの丸』は1970(昭和45)年頃に制作された、32枚で1組の作品です。1972(昭和47)年、この作品のうちの12枚が足利銀行(栃木県宇都宮市に本店を持つ地方銀行)の桐生支店(群馬県)に展示されたことで有名です。

 

 

 

京都国立近代美術館でオノサトトシノブの作品『相似』の鑑賞が可能

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

京都国立近代美術館では、1963(昭和38)年の第7回日本国際美術展に出品され、最優秀賞を受賞した作品『相似』を鑑賞できます。『相似』は259×388cmのキャンバスに油彩で描かれた大型作品で、先ほど紹介した3点と並ぶオノサトトシノブの代表作品の一つといえます。

 

京都国立近代美術館は京都市左京区の岡崎公園内にある美術館で、1963(昭和38)年に国立近代美術館京都分館として発足しました。1967(昭和42)年に京都国立近代美術館として独立し、1986(昭和61)年に現在の場所に移転しています。

 

プリツカー賞や国際建築家連合ゴールドメダルを受賞した建築家、槇文彦によって設計された建物も、京都国立近代美術館の見どころの一つです。オノサトトシノブと同時代に活躍した抽象画家、山口長男の作品『二つの交叉』も所蔵しているので、興味がある方はぜひ足を運んでみてください。

 

京都国立近代美術館の公式HPはこちら

 

 

 

オノサトトシノブの作品の落札価格とその価値について

 

次に、近年開催されたオークションにおける、オノサトトシノブの作品の落札価格を紹介します。

 

 

 

2022年:斜めの星|320万円

 

2022(令和4)年の1月29日、シンワオークション(東京を拠点にアートやアンティークなどのオークションを定期開催するオークションハウス)において、オノサトトシノブの『斜めの星』が落札予想価格200~300万円のところを320万円で落札されました。

 

『斜めの星』は170cm四方のキャンバスに円を配置した、色鮮やかな作品です。

 

 

 

2022年:Circle|280万円

 

2022年の6月11日、NEW AUCTION(渋谷・原宿を拠点としてアートオークションを行うオークションハウス)において、『Circle』が280万円で落札されました。『Circle』はオノサトトシノブの黄金期ともいえる1967年に制作された作品です。

 

オンラインと電話ビットが『Circle』をめぐって激しく競り合い、この日1番の盛り上がりを見せました。

 

 

 

オノサトトシノブの作品の買取相場

 

無題(版画)

 

日本の抽象画を代表する作家オノサトトシノブの作品は、バブルの頃には高額で取引されていました。しかし、バブル崩壊後は市場での評価が下がり気味といえます。

 

オノサトトシノブは戦前に具象画も手がけていますが、やはり人気があるのはオノサトトシノブらしい丸を用いた抽象画です。キャンバスに油彩で描かれたものが最も高額で取引され、サイズにもよりますが数十万円台から100万円以上までの価格帯となります。

 

油彩画より評価が少し下がりますが、紙に水彩やパステルで描かれた作品も人気です。一方で版画作品(シルクスクリーンなど)はやや厳しい査定額となるでしょう。いずれもワレ、カビ、シミ、退色などのダメージが見られると評価が下がります。

 

 

 

オノサトトシノブに関する豆知識(トリビア)

 

最後に、オノサトトシノブについてのトリビアを二つ紹介します。

 

 

 

オノサト・トシノブ美術館って何?

 

オノサト・トシノブ美術館は、群馬県桐生市埋田町にある美術館です。オノサトトシノブの妻であったトモコ夫人が企画・建設し、母子3人で運営していました。夫人の死後は子どもらによって運営されていましたが、現在は長期休館中です。

 

オノサトトシノブは海外でも有名?

 

オノサトトシノブの名は海外でも広く知られています。アメリカのメトロポリタン美術館、ロサンゼルスカウンティ美術館、グッゲンハイム美術館などがオノサトトシノブの作品を所蔵しています。

 

 

 

オノサトトシノブの作品は強化買取中

 

Silk-7(版画)

 

オノサトトシノブは、戦後日本で抽象絵画の先駆者として活躍し、そのカリスマ性 で若い芸術家たちに大きな影響を与えました。

 

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情報参考サイト

日本現代美術振興協会

モダンアート協会

MOMA

東京都現代美術館

文化庁

文部科学省