ポップアートとは?誕生した背景や、有名なアーティストと代表作品を徹底解説

2022/05/26 ブログ
ポップアートとは?

ポップアートは、現代アートのひとつで、第二次世界大戦後の大量生産・大量消費の時代をシニカルに表現した作品が特徴です。風景や人物をテーマとしたこれまでの絵画とは違い、ポップアートでは身近な商品や有名人が作品のテーマになっています。アンディ・ウォーホルがその代表的なアーティストの1人です。また、日本人のポップアートアーティストでは村上隆草間彌生が有名です。

 

ポップアートはデザインにも通じるものもあり、アートに興味がない方にとっても親しみやすさを感じさせます。アートを敷居の高いものから広く大衆に馴染ませたことは、ポップアートの功績だといえるでしょう。

 

 

 

ポップアートとは?特徴を解説

 

ポップアートの特徴は、新聞やマンガ、テレビといったメディアを題材とした作品です。それらの作品は大量消費時代をシニカルに表現していると言われていて、代表的なアーティストとして、アンディ・ウォーホルジャスパー・ジョーンズが挙げられます。

 

 

第二次世界大戦後の大量生産・大量消費の文化が関係

 

ポップアートの始まりは第二次世界大戦後だと言われています。戦争が終わり、欧米諸国などの先進国では大量生産・大量消費が始まります。毎日のように新聞やテレビの広告で企業の商品が取り上げられるようになり、人々はより良い生活を求めるようになりました。アーティストたちはそのような状況に対して違和感を覚え、それを表現したものがポップアートでした。

 

それまでのアートのテーマは身近なものであったことに対して、ポップアートのテーマは身近にある商品です。ポップアートの特徴は、美術館に飾られるような崇高な作品というよりも、広告デザインのような親しみやすさがあります。

 

 

風景や人物ではなく大衆文化をテーマに作品を制作

 

これまでのアート作品のテーマは、風景や人物でした。たとえば歴史的なワンシーンであったり、写真がない時代の写真に取って代わるようなものでした。また、写真技術が発達していない時代は、戦地に画家が赴いて状況を描いていました。このように、人々が影響を受けるメディアは少なかったのです。

 

しかし、第二次世界大戦後の世界経済は急速に発展し、先進国では新聞だけでなくテレビが登場し、街中の至るところで広告が見られるようになりました。広告には人々に豊かな生活を提示し、消費を促す文句が添えられます。そのような状況を見て、ポップアートのアーティストたちは商品を現代の「風景」と捉え、作品を制作するようになりました。

 

 

新聞、広告、漫画などの素材を全く異なる媒体と組み合わせる

 

たとえアートに興味がなくても、誰もがポップアートの作品を目にしたことがあるはずです。その1人としてマリリン・モンローの写真をテーマにした作品として印象深いアンディ・ウォーホルが挙げられます。

 

このように、ポップアートのアーティストたちは、新聞や広告、漫画に描かれた日常にありふれた素材を、全く異なる媒体と組み合わせることによって作品を生み出しました。これまでの絵画作品と比べて、ポップアートの作品群はわかりやすいものが多く、豊かさを象徴するものとして捉えられました。しかし、その一方で悪趣味なものだと批判する者もいて、ポップアートは良くも悪くも1960年代の大量生産・大量消費時代を象徴しています。

 

 

ポップアートの誕生した背景や歴史

 

ポップアートは1950年代のイギリスで誕生し、その後アメリカとイギリスで発展しました。アメリカとイギリスではポップアートの根本にある価値観が異なります。ここでは、当時の時代背景とともにポップアートが辿った歴史を解説します。

 

 

ポップアートは1950年代のイギリスで誕生

 

「ポップアート」という言葉は、1950年代のイギリスで、リチャード・ハミルトン、エドゥアルド・パオロッツィらが参加する集団「インディペンデント・グループ(IG)」に集うアーティストたちが生み出しました。

 

一般的にこれまでの抽象表現主義へのアンチとして始まったと知られるポップアートですが、イギリスのポップアートは伝統的でアカデミックなアートに対する運動として捉えられています。また、イギリスでのポップアートの特徴は、ダダイズムを否定的でなく肯定的にも捉えていて、アメリカのポップアートでの逆説的な側面をあまり持ち合わせていませんでした。

 

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イギリスのポップアートの主なアーティストとしては、リチャード・ハミルトン、エドゥアルド・パオロッツィが挙げられます。彼らの作品からは1900年代前半のシュルレアリスムやダダイズム、キュビスムなどの芸術運動を踏襲しながらも、新たなスタイルを模索する姿勢がうかがえます。

 

「ポップアート」という言葉が生まれた1950年代は、2つの世界大戦が終わって間もない時期です。なかには戦争から戻ったアーティストたちが戦地を通して得た新たなアイデアを持ち寄り、作品制作に活かしたのではないでしょうか。

 

 

1960年代のアメリカにおいてポップ・アートの先駆けとなるネオダダが盛んになる

 

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イギリスで盛んになったポップアートは、当初は否定的に見られていました。しかし、1960年代に入るとアメリカのジャスパー・ジョーンズやロバート・ラウシェンバーグが、レディメイドといった手法を作品制作に活かすことで脚光を浴び、ネオダダに発展しました。

 

彼らは1950年代の芸術運動の抽象表現主義に反発します。日常的な物を作品に取り入れることで、即物的でキッチュなスタイルを築きました。このようなスタイルは、マルセル・デュシャンに代表されるダダイズムを思い起こさせます。実験的な作品群は、絵画界だけでなく、ジョン・ケージといった音楽界にも影響を及ぼしました。

 

発展したネオダダは、後にアンディ・ウォーホルの活躍によって本格的なポップアートとして開花しました。特に女優のマリリン・モンローをテーマにしたポートレートは、マスメディアが作り出したモンロー像があったからこそ話題を呼んだ作品です。また、1960年代では、これまでの新聞や雑誌といったメディアにTVが加わり、視覚的な情報の伝達スピードが速くなりました。結果として大量生産・大量消費の時代に繋がり、ポップアートはマスメディアの発展とともに大衆に馴染み深いアートとして浸透していきました。

 

 

1960年代の終わりに衰退を迎える

 

ポップアートは1960年代終盤に衰退を迎え、その代わりにミニマルアートやアースワークが台頭します。ミニマルアートはポップアートと同様に、1950年代の抽象表現主義へのアンチとして始まりましたが、ポップアートと異なり、クールで洗練された作品が特徴です。また、アースワークは政治的、文化的、地理的な側面からアートを捉え直した作品が特徴です。どちらも「わかりやすさ」を重視したポップアートとは真逆で、ポップアートが否定したアートの常識よりもさらに知性や創造性を重視したスタイルといえます。

 

特に1960年代後半は、ベトナム戦争や冷戦の影響があり、ポップアートのような楽しさを味わいにくい雰囲気が漂う時代でした。大衆に受け入れられるカルチャーは、ヒッピーやロックンロール、フォークロア、ドラッグといった方向に転じました。また、戦時下のベトナムでは、アメリカ兵を説得させるためにポップアートを彷彿させるプロパガンダアートが街中に描かれました。

 

しかし、現代はポップアートから影響を受けたアーティストたちが、そのスタイルを踏襲しながら新たな形を模索しています。その代表として村上隆は、日本のオタク文化や日本画を現代流のポップアートとして昇華させています。

 

 

 

世界で人気なポップアートのアーティストと作品を紹介

 

ポップアートは、その親しみやすいデザインによって世界中で人気を博しました。ここではポップアートを風靡した3人のアーティストである、ジャスパー・ジョーンズ、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタインを紹介します。

 

 

ジャスパー・ジョーンズ

 

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ジャスパー・ジョーンズは、ネオダダやポップアートアーティストの1人として知られています。代表的な作品として、アメリカの国旗である星条旗をモチーフにしたものが挙げられます。

 

彼は、多くのアーティストと異なり幼少期に芸術に触れることはありませんでした。しかし、朝鮮戦争の兵役を終えてアメリカに帰国した後、ロバート・ランシェンバーグと出会います。ほどなくして、マース・カニンガムやジョン・ケージとも知り合い、彼らとともにネオダダやポップアートの先駆者ともいえるべき存在になりました。

 

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ジョーンズの代表的な作品の1つである「4つの顔のある標的」は、画面いっぱいに標的が描かれています。そしてその中に鼻や口といった人間の身体のパーツをかたどった石膏が埋め込まれていて、グロテスクに感じられます。しかし、アートを平面としてだけでなく立体的にも捉えるよう提示した彼の作品は高い評価を得ました。

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アンディ・ウォーホル

 

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アンディ・ウォーホルは、ポップアートの巨匠として知られるアーティストです。商業デザイナーとしてキャリアを積んだ彼は、ポップアート画家のみならず、ロックバンドのプロデュース、彫刻制作、執筆活動、映像制作といった多岐にわたる分野で活躍しました。

 

ウォーホルはポップアート画家として活動する前に、多くの試みを取り入れながらドローイングで脚光を浴びていました。ポップアート以前の抽象表現主義では、大衆に受けるテーマよりも精神性の高い崇高な作品が評価を得ていましたが、それに対して彼は疑問を抱き、後の彼の作風に繋がりました。

 

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なかでも女優のマリリン・モンローの写真を並べた「狙撃されたマリリン」(1962年)は、彼女の死の直後に制作されたもので、多くの反響を呼びました。2022年にクリスティーズが開催したオークションでは、彼女をモチーフとした作品の1つである「ショット・セージブルー・マリリン」(1964年)が約254億円で落札されました。

 

なお、​​晩年のウォーホルはローリング・ストーンズのミック・ジャガーやイラン国王から作品を依頼されるなど、各界の著名人のポートレイトを残しました。

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ロイ・リキテンスタイン

 

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ロイ・リキテンスタインは、アメリカのポップアートアーティストです。アメコミの1コマのように見える原色で太めのラインにドットで描かれた作品が特徴です。作品に近付いて見てみると、絵画がドットで描かれています。大胆なデザインと思いきや緻密な彼の作品スタイルは、ウォーホルのような反逆児的なスタンスとは真逆といえます。

 

リキテンスタインはインタビューにて自身の作品について「それは何かの絵のように見えるのでなく、物そのもののように見えるのです」と答えているように、ドットといった「物」といった側面からアートを問い直そうとしました。

 

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代表作「M-Maybe」(1965年)はコミックの1コマを切り取った作品で、左上に書かれた彼女のセリフがそのままタイトルになっています。これまでのアート界では、コミックはアートと言うべき存在ではありませんでした。リキテンスタインは、日頃より大衆が親しんでいる作品をアートとして昇華させたのです。

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日本で人気なポップアートのアーティストと作品を紹介

 

欧米で生まれたポップアートは、その後日本人アーティストにも大きな影響を与えました。その代表として、草間彌生、奈良美智、村上隆がいます。どのアーティストの作品も一度は見たことがあるはずです。また、マンガやアニメなどの独特のカルチャーが育ちやすい日本だからこそ、ポップアートとの相性が良く、世界のアートファンに愛される作品を数多く残しています。

 

 

草間彌生

 

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草間彌生は、今でこそ国内外で著名なアーティストですが、彼女もまたポップアートに影響を与えた人物です。1929年に長野県で生まれた彼女は幼い頃より統合失調症を患っていました。そのようななか、彼女は絵画のみならずハプニングアートや作詩、映画制作など多くの制作活動に携わりました。

 

その後、ニューヨークに活動を移した際、草間の作風は彫刻家であるクレス・オルデンバーグやアンディ・ウォーホルの目に留まり、彼らの作品制作にアイデアを与えました。その当時の日本では無名アーティストだった彼女は、ニューヨークのアートシーンから評価されたことで世界に名をとどろかすアーティストになりました。

 

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草間彌生作品のモチーフとなっている、独特の色合いとフォルムをした「Pumpikin」(かぼちゃ)は、非常に高い値段で売買されています。また、彼女は、2016年に米誌「TIME」にて「世界で最も影響力のある100人」で唯一の日本人としてピックアップされました。

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奈良美智

 

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奈良美智は、無表情の二頭身の少女をモチーフとした作品で知られています。「Knife Behind Back」(2000年)がその代表作で、2019年に香港でサザビーズが開催したオークションにて25億円で落札されました。

 

また、青森県立美術館開館とともに制作された巨大な犬のオブジェ「あおもり犬」(2006年)は、美術館のアイコニックな存在としてグッズとしても愛されています。奈良の作品に描かれる少女や、「あおもり犬」は、大衆に親しみやすい存在として、アートとしてだけでなくキャラクターとしての役割を果たしています。

 

奈良の作品の根底にあるのは純粋さと野心で、幼い頃聴いたロックンロールに影響を受けています。ロックバンドのCDのジャケットを手がけたり、自身がDJを務めるラジオ番組で音楽を紹介するなど、画家としての活動のみならず音楽など多岐にわたり活動しています。

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村上隆

 

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村上隆は、日本独自のマンガやアニメ、日本画といったカルチャーを、欧米を起点としたポップアートと融合させた作風で知られています。顔の描かれた花をモチーフとした作品が特徴です。彼の代表作の1つ「かわいい夏休み」では琳派画家の俵屋宗達や尾形光琳などのスタイルを現代風にアレンジしています。

 

また、2008年にサザビーズが開催したオークションでは、等身大のフィギュア「マイ・ロンサム・カウボーイ」が16億円で落札されました。マンガやアニメなどのすでにあるものをアートに昇華させながら価値ある新しいアートを作っていく村上のスタイルは、日本ならではの、そして1960年代に活躍したアンディ・ウォーホルらが築いたスタイルをバージョンアップしたポップアートといえます。そのような点で、彼は世界中から高い評価を得ているのでしょう。

 

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ポップアートの歴史や代表作家まとめ

 

この記事では、ポップアートの歴史と代表的なアーティストを紹介しました。「芸術とは崇高でわかりにくいもの」といった既存のアートの価値観を揺さぶり、大量生産・大量消費の時代とともにキャッチーさを前面に押し出したポップアートは、アートが一部の権力者だけで楽しまれていた時代の人々が知ったら驚くはずです。

 

ポップアートはアートへの敷居を低くして、どのような人でも参加できるものにしました。色々なバックグラウンドを持つアーティストが活躍できるようになったのもポップアートの功績といえます。インターネットが主流となった21世紀は、1960年代とは異なる新たなポップアートのスタイルが生まれるはずです。

 

【関連作家】

キース・へリング

クリスト