関根伸夫とは?もの派の先駆けとしての作風や作品・落札価格を紹介

2022/06/18 ブログ

関根伸夫とは?もの派の先駆けとしての作風や作品・落札価格を紹介

関根伸夫_位相 大地

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戦後に大きく展開した現代美術の運動といえば、「もの派」と「具体派」が挙げられるでしょう。関根伸夫は、そのうちの「もの派」について、誕生のきっかけを生んだ有名なアーティストです。

 

今回は、韓国出身の李禹煥(リー・ウーファン)とともに「もの派」の中心的アーティストとして活躍し、国際的な評価も高い関根伸夫について幅広く紹介します。

 

 

関根伸夫の略歴

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

1968年:多摩美術大学大学院油画研究科を卒業し斎藤義重に師事

 

関根伸夫は1942(昭和17)年、埼玉県に生まれました。多摩美術大学へ入学した関根伸夫は、現代美術家の斎藤義重(さいとうよししげ。彼の指導のもとで、のちに「もの派」として活躍する多くの芸術家が誕生した)に師事します。

 

関根伸夫は、1968(昭和43)年に多摩美術大学院油画研究科を卒業しました。同年、神戸市で行われた第1回須磨離宮公園現代彫刻展で『位相ー大地』という作品を発表し、そのインパクトが大きな話題を呼びます。この作品が李禹煥(リー・ウーファン)らの目にとまり、「もの派」誕生のきっかけとなりました。

 

また、同じく1968(昭和43)年、現代美術の推進を目的に開催される第5回長岡現代美術館賞展に『位相ースポンジ』を出品し、大賞を受賞しました。

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1970年:ヴェネチア・ビエンナーレに日本代表アーティストとして参加

 

1970(昭和45)年、関根伸夫は名古屋市出身の美術家、荒川修作とともにヴェネチア・ビエンナーレの日本代表に選ばれます。そこではステンレスの柱の上に自然石を置いたT字型の作品『空相』を発表します。ステンレスに周囲の風景がうつることで自然石があたかも浮いているかのように見える『空相』は大変注目を集め、その後デンマークにあるルイジアナ美術館で永久所蔵作品となりました。

 

その後、関根伸夫は2年間ヨーロッパにとどまって制作に励みます。また、この間にオファーを受けて個展も開催しています。

 

 

1973年:環境美術研究所設立

 

ヨーロッパの滞在期間中、関根伸夫は広場や噴水に人々が集まる様子、特に建築と美術が美しく融合したイタリアの街から感銘を受けます。「環境美術」に深い関心を持った関根伸夫は、帰国後の1973(昭和48)年に「環境美術研究所」を設立しました。

 

環境美術研究所は、東京都庁ふれあいモールにある『水の神殿』『空の台座』のようなモニュメントや噴水彫刻などを、国内外に数多く制作しています。

 

1986(昭和61)年、関根伸夫はポンピドゥーセンター(フランスの文化施設)で行われた「JAPON DES AVANT-GARDES」に参加しました。その後も精力的に活動を続け、1994(平成6)年には横浜美術館、アメリカのグッゲンハイム美術館、サンフランシスコ近代美術館を巡回した「戦後日本の前衛美術」展に参加します。

 

 

2012年:「太陽へのレクイエム:もの派の美術」展に出展

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

2012(平成24)年、関根伸夫はロサンゼルスのBlum & Poe (ブラム・アンド・ポー。現代美術のギャラリー)で開催された「太陽へのレクイエム:もの派の美術」に参加しました。さらに、同年の11月にはニューヨーク近代美術館の「東京: 1955-1970 」にも参加し、これらの活動を通して海外での自身の評価を高めます。

 

2014(平成26)年、関根伸夫はBlum & Poe においてアメリカでの初個展を開催しました。 日本でも2019(令和元)年の2月から3月にかけて、大阪西天満のYOD Galleryで「Project」という個展を開いています。この頃アメリカを拠点に活動していた関根伸夫は、この年の5月にカリフォルニア州の病院において、76歳で亡くなりました。

 

 

関根伸夫が影響を与えた「もの派」とは?

 

もの派とは、1960年代末から1970年代初頭の日本で展開した芸術運動です。木、土、岩、水などの自然素材を、手を入れずにそのまま使うのが特徴ですが、ときには紙、鉄、ガラスなどの工業的な素材を用いることもあります。作者の意志を介入させてこれらの「もの」を構成することで、「もの」との関係性を探りました。

 

もの派の「作らない(素材をそのまま用いる)」という姿勢は、1960年代に流行した反芸術(アメリカのネオダダやフランスのヌーヴォー・レアリスムなどに代表される伝統的な芸術の概念を否定する芸術運動)の流れをくんでいるともいえます。そこに李禹煥や関根伸夫の哲学的な思想が結びつき、「作ること」よりも「見て考えること」を重視するひとつのムーブメントとして大きく発展したのです。

 

また、もの派は鑑賞者に作品の周りの空間を意識させることで、美術館で見られるような「予定調和」を越えた環境の中に溶け込む美術を表現し、インスタレーションの先駆けにもなりました。 もの派のアーティストには、李禹煥、関根伸夫のほかに関根伸夫の後輩であった成田克彦、吉田克朗などがいます。しかし、吉原治良や白髪一雄を中心としてほぼ同時期に展開した「具体派」が組織化されていたのとは異なり、もの派は自然発生的に生じて各々が自由に活動を行ったのが特徴です。

 

もの派は英語で「Mono-ha」または「School of Things」などと表現され、具体派と同様に国際的な評価が高いことで有名です。

 

 

関根伸夫の代表作品と解説

 

それでは、もの派の中心的アーティスト、関根伸夫の代表作品をいくつか紹介します。

 

 

位相 ー大地

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

『位相ー大地』は、関根伸夫が1968(昭和43)年に制作した作品です。神戸市で同年10月に行われた第1回須磨離宮公園現代彫刻展に出品されたこの作品は、「もの派」誕生のきっかけとなった記念碑的作品として広く知られています。

 

『位相ー大地』は、深さ2.7m、直径2.2mの円柱形の穴を掘り、出てきた土を穴と同じ形、同じ大きさに固めて設置されました。関根伸夫の後輩の吉田克朗も制作に携わっています。

 

 

位相 ースポンジ

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

『位相 ースポンジ』は、『位相ー大地』が第1回須磨離宮公園現代彫刻展に出品された1か月後、1968(昭和43)年の第5回長岡現代美術館賞展に出品されて大賞を受賞しました。 円柱状の大きなスポンジの上に鉄板を置いたこの作品では、鉄板の重みによるスポンジの変形が見どころです。

 

この作品を観た多くの人は、鉄板を外すとスポンジの形が元に戻るということや、形が変わっても構造は変わらないことなどを連想するでしょう。観るものの想像力をかきたてる作品です。

 

 

空相 -黒

 

『空相 ー黒』 は、床に置かれたでこぼこの塊のようなものや、背の高い幾何学的な塊など、さまざまな形の立体からなる作品です。およそ50体存在するこれらの塊はFRP(繊維強化プラスチック)でできており、自然と人工物との対比を表現しています。関根伸夫のヨーロッパ滞在中には、『空相 ー黒』の巡回展が行われました。

 

 

位相絵画シリーズ

 

関根伸夫の「位相絵画シリーズ」は、ここまで紹介してきた彫刻作品とは異なる絵画タイプの作品です。関根伸夫は、ひっかいたり破いたりした分厚い「鳥の子紙」(滑らかで艶のある淡い黄色の和紙)に金箔を貼って、作品を制作しています。

 

「位相絵画シリーズ」では「位相的世界である現世において人間にできるのは形状の変化のみ。創造することはできない」という考えが表現されています。

 

 

関根伸夫の作品が鑑賞可能な美術館一覧

 

関根伸夫の作品は、国内外の以下の美術館で鑑賞できます。お近くにお住まいの方、興味のある方はぜひ足を運び、関根伸夫の作品を体感してみてください。

 

【国内】

・箱根 彫刻の森美術館(神奈川県)
・原美術館ARC(群馬県)※公開予定
・広島市現代美術館(広島県)
・国立国際美術館(大阪府)
・世田谷美術館(東京都)
・高松市美術館(香川県)
・豊田市美術館(愛知県)

【国外】

・ルイジアナ近代美術館(デンマーク)
・ヘニーオンスタッド美術館(ノルウェー)

 

関根伸夫の作品の落札価格や価値について

 

さて、関根伸夫の作品は、近年どれくらいの金額で取引されているのでしょうか。オークションでの落札価格を紹介しましょう。

 

今回例に挙げるのは、2020(令和2)年11月19日に行われたマレットオークションでの落札価格です。この日は合計279点の作品が競売され、そのうちの半数近くが落札予想価格の上限を超える価格で落札されるという活気のある日でした。

 

関根伸夫の作品もその例にもれず、落札予想価格35万円から45万円であった6号サイズの「位相絵画」が、54万円で落札されました。さらに15号サイズの作品は、落札予想価格が60万円から80万円であったところ115万円で落札されています。

 

このように、関根伸夫の版画作品は、近年いずれも安定した価格で取引されるのが特徴です。ちなみに、市場に出回っているのは版画作品がほとんどで、彫刻作品はかなり少ないのが現状です。

 

 

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関根伸夫は李禹煥とともに「もの派」を牽引した国際的にも人気の高いアーティストです。そんな関根伸夫の作品をお持ちで、売却を検討している方がいらっしゃいましたら当社にご相談ください。丁寧に鑑定させていただきます。

 

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情報参考サイト

日本現代美術振興協会

モダンアート協会

MOMA

東京都現代美術館

文化庁

文部科学省