トーマス・ルフは現代ドイツを代表する写真家|デジタル加工を用いた個性的な代表作品や人気の写真集・DVDを紹介

2022/10/24 ブログ

トーマス・ルフは現代ドイツを代表する写真家|デジタル加工を用いた個性的な代表作品や人気の写真集・DVDを紹介

トーマス・ルフ_展示風景

 

トーマス・ルフ(Thomas Ruff)は、これまでの写真のイメージを覆すかのような斬新な作風で話題を呼ぶ、ドイツの写真家です。

ドイツのデュッセルドルフ芸術学校で著名な写真家ベルント&ヒラ・ベッヒャ-夫妻から学び、師とは異なる独自のスタイルを模索するなかで「写真とは何か?」と問いかけるような独創的な作品を次々と生み出しました。

 

今回は、世界各国で個展が開かれる注目の写真家トーマス・ルフについて、その略歴や代表作品などを紹介します。

 

 

 

トーマス・ルフの略歴

 

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

作品を解説する前に、トーマス・ルフの略歴を簡単に紹介しておきましょう。

 

 

 

1958年:ドイツ南部バーデン=ヴュルテンベルク州の町に生まれる

 

1958年、トーマス・ルフはドイツ南部のバーデン=ヴュルテンベルク州にある自然豊かな町、ツェル・アム・ハルマースバッハに生まれました。ツェル・アム・ハルマースバッハは黒い森(ドイツ語でシュヴァルツヴァルト。グリム童話の舞台ともなっている鬱蒼とした常緑樹の森)の真ん中にある美しい町です。

 

6人兄弟のうちの1人として生まれたトーマス・ルフは、10代半ばで初めてカメラを手にしました。

 

 

 

1977年:デュッセルドルフ芸術アカデミーで写真家のベッヒャー夫妻に学ぶ

 

デュッセルドルフ芸術アカデミー

出典元:Wikimedia Commons(ウィキメディア・コモンズ)

 

 

トーマス・ルフは、1977年から1985年までデュッセルドルフ芸術アカデミーで、ドイツの著名な写真家、ベルント&ヒラ・ベッヒャ-から写真を学びました。デュッセルドルフ芸術アカデミーとは、ドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州にある長い歴史を持つ美術大学です。

 

トーマス・ルフは、典型的なドイツ人家庭の室内風景を集めた「Interieurs(室内)」シリーズや、友人の写真を大きく拡大した「Porträts(ポートレート)」シリーズなどの初期の代表作を発表し、話題になります。

 

 

 

1980年代末~:デジタル加工を用いた写真作品を制作し始める

 

トーマス・ルフは1980年代の末頃から、デジタル加工を用いた作品を制作し始めました。1987年から1991年に制作された「Häuser(家)」シリーズでは、作品にレタッチやカット&ペーストといった一般的な加工処理が行われています。

 

「Häuser(家)」シリーズでは、自らが撮影した写真を使っていますが、これ以降の作品ではインターネット、新聞、雑誌などで入手した写真を使うことが増えていきます。作品制作の重心が撮影から加工処理へと移っていくのです。

 

 

 

1990年代:ドクメンタ9や第46回ヴェネツィア・ビエンナーレなどの国際美術展に参加

 

1990年代、トーマス・ルフは数々の展覧会に参加します。特に、1992年にドイツで開催されたドクメンタ9や、1995年にイタリアで開催された第46回ヴェネツィア・ビエンナーレが有名です。

 

また、1990年代には「Sterne(星)」や「Zeitungsfotos(新聞写真)」などのシリーズを制作しています。

「Sterne」はヨーロッパ南天天文台という研究団体が撮影した天体写真のネガを、「Zeitungsfotos」は新聞に掲載された報道写真の切り抜きをもとに制作されました。

 

 

 

2001年~2004年:回顧展「Thomas Ruff: Photographs 1979 to Present」が9館を巡回

 

2001年から2004年にかけて、トーマス・ルフの回顧展「Thomas Ruff: Photographs 1979 to Present」が国を越えて9つの美術館を巡回し、多くのファンを喜ばせました。

 

その美術館とはStaatliche Kunsthalle Baden-Baden(ドイツ)、Museum Folkwang(ドイツ)、Städtische Galerie im Lenbachhaus(ドイツ)、Museet for samtidskunst(デンマーク)、Irish Museum of Modern Art(アイルランド)、Artium Museoa: Museo de Arte Contemporáneo Del País Vasco(スペイン)、Museu Serralves(ポルトガル)、Tate Liverpool(イギリス)、0Centre for Contemporary Art Ujazdowski Castle(ポーランド)です。

 

また2000年以降、トーマスルフは「nudes」(2000年~2002年)、「jpeg」(2004年~)、「cassini」(2006年~)などのシリーズを次々と生み出しました。2000年から2006年まではデュッセルドルフ芸術アカデミーで教壇に立ち、後進の指導にもあたっています。

 

トーマス・ルフは、2016年に東京国立近代美術館と金沢21世紀美術館で日本初の回顧展「トーマス・ルフ展」を行い、以降もドイツやフランスをはじめとした多くの国で展覧会を開催しています。

そして、現在はデュッセルドルフのアトリエにて精力的に作品制作にあたっています。

 

*金沢21世紀美術館 / トーマス・ルフ展 / About Thomas Ruff

*Thomas Ruff / Biografie

 

 

 

トーマス・ルフの作品の世界観

 

出典元:ウィキメディア・コモンズ(Wikimedia Commons)

 

 

トーマス・ルフは自らが撮影した写真だけでなく、インターネット上の写真や出版物に掲載された写真などを加工して、自らの作品としました。そういう意味では、トーマス・ルフはこれまでの写真家が持つイメージを一新したアーティストといえます。

 

トーマス・ルフは、ドイツの歴史ある美術大学デュッセルドルフ芸術アカデミーでベッヒャ-夫妻から学び、師の教えや作品から大きな衝撃を受けました。

そして、自らのスタイルを模索し始め、手動で写真を加工する時期を経て、現代のようなデジタル加工を用いたスタイルへと移行します。

 

写真が写し出しているのは純粋な「現実」だけではありません。写真とは、背後に存在する撮影者や編集者の意図が多分に含まれているものです。

そのような事実を私たちに見せつけて、鑑賞者に写真とは何かを考えさせることが、トーマス・ルフの作品制作における一つの目的となっています。トーマス・ルフの作品の根底には、「写真」そのものについての問いかけが存在しているといえるでしょう。

 

 

 

トーマス・ルフの代表作品を解説

 

それでは、トーマス・ルフの作品の中でも広く知られている5つのシリーズについて、年代順に紹介します。

 

 

 

Interieurs(室内)

 

「Interieurs」はトーマス・ルフのもっとも初期のシリーズです。トーマス・ルフがベッヒャ-夫妻から受けた衝撃から立ち直り、自分のスタイルを模索していた頃に制作されました。

 

初めのころは身のまわりにある椅子が多く撮影され、そこから典型的なドイツ人家庭の室内風景へとつながっていきます。当時は白黒写真が主流でしたが、トーマス・ルフはカラー写真にこだわって作品制作を行いました。

 

*Thomas Ruff / Werke / Interieurs

 

 

 

Porträts(ポートレート)

 

「Porträts」はトーマス・ルフにとって出世作ともいえる、初期に制作された有名なシリーズです。初めの頃には白黒で制作されましたが、すぐにカラー写真へ変更されました。そして1986年頃からはサイズを大きくする試みが始まりました。

 

サイズを大きくした理由は、写真と現実を切り離すためです。サイズを大きくすることで、モデルが「現実のその人」ではなく、あくまでも「写真に写ったその人」であるということを、鑑賞者が自覚しやすくなるのです。

 

*Thomas Ruff / Werke / Porträts

 

 

 

nudes(ヌード)

 

「nudes」は、トーマス・ルフが2000年から2002年にかけて発表したシリーズです。インターネット上に流通するポルノ画像を、デジタル処理して色を変えたり、極限までぼかしたりして制作されました。

 

ヌード写真といえば男性的な視点で制作される作品が多いですが、トーマス・ルフの「nudes」は本来は見るはずもない他人の裸をいとも簡単にのぞき見られる、現代社会への問題提起が込められています。

 

*Thomas Ruff / Werke / nudes

 

 

 

jpeg

 

「jpeg」シリーズは、jpeg方式の画像を圧縮すると劣化してしまうという事実からインスピレーションを得て、インターネット上の画像を利用して制作されました。遠くから観るとモザイクのように見えることが特徴です。

 

この作品が生まれるきっかけとなったのは、2001年に起こったアメリカ同時多発テロでした。トーマス・ルフはこの事件を現地で体験しています。

トーマス・ルフは「jpeg」シリーズを通して、鑑賞者は写されたものをただ受け取るだけではなく、鑑賞者がそれを能動的に読み解く必要があることを訴えています。

 

 

 

press++

 

「press++」シリーズは、2017年にSprüth Mager(ドイツのアートディーラーが所有する画廊)のベルリンギャラリーにおいて初めて展示されました。

トーマス・ルフは、1920年から1970年に新聞や雑誌に掲載された画像をeBayのサイトで見つけ、その画像を元にこのシリーズを制作しています。

 

「press++」シリーズでは、写真とその裏にメモされた編集者の指示書きを組み合わせて作品にしており、これには読売新聞の報道写真も含まれています。

 

*Thomas Ruff / Werke / press++

 

 

 

トーマス・ルフの作品は国立国際美術館にて鑑賞可能

 

出典元:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)

 

 

大阪国際美術館は、竹の生命力と現代美術の発展・成長をイメージしてデザインされたスタイリッシュな外観が特徴です。1945年以降の国内外の現代美術をメインに約8,200点(2022年3月時点)にも及ぶ作品を所蔵しています。

 

そんな国立国際美術館では、トーマス・ルフの出世作として知られる「Porträts」シリーズの中から、1988年に制作された『ポートレート(K.クネフェル)』が鑑賞可能です。

『ポートレート(K.クネフェル)』はサイズが210.5cm×165.3cmもある大型作品で、画面いっぱいに写された大きな肖像画が、圧倒的な存在感を持って鑑賞者を引きつけます。興味のある方は、展示スケジュールを確認したうえで、ぜひ足を運んでみてください。

 

ちなみに、国立国際美術館では、トーマス・ルフの師であるベッヒャ-夫妻が制作した『冷却塔』も所蔵しています。タイミングが合えば、あわせて鑑賞できるでしょう。

 

国立国際美術館の公式HPはこちら  

 

 

 

トーマス・ルフの作品の落札価格とその価値について

 

続いて、2020年に落札されたトーマス・ルフの二つの作品について、その落札価格を紹介します。

 

 

 

2020年:Porträt (V. Liebermann)|約819万円

 

2020年2月13日、クリスティーズのライブオークションにおいて、トーマス・ルフが1999年に制作した『Porträt (V. Liebermann)』が約819万円(57,500ポンド)で落札されました。

画像まわりの余白の部分もあわせると210.5cm×165.5cmというサイズの作品です。 落札予想価格の12,000ポンド~18,000ポンドを大きく上回る57,500ポンドでの落札で、注目を集めました。

 

*CHRISTIE’S / Thomas Ruff / Porträt (V. Liebermann)

 

 

 

2020年:ter02(jpeg)|368万円

 

同じく2020年の6月、SBIオークションにおいて、トーマス・ルフの『ter02(jpeg)』が368万円で落札されました。『ter02(jpeg)』はトーマス・ルフが2006年に制作した、余白部分もあわせると170cm×248cmの作品です。

 

*SBIアートオークション / トーマス・ルフ / ter02(jpeg)

 

 

 

トーマス・ルフに関する豆知識(トリビア)

 

最後に、トーマス・ルフにまつわる二つの豆知識を紹介します。

 

 

 

デュッセルドルフ芸術アカデミーに通っていたトーマス・ルフは奈良美智の先輩にあたる

 

奈良美智

出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

 

トーマス・ルフが1977年から1985年までドイツのデュッセルドルフ芸術アカデミーに通っていたというのは、先ほども紹介しました。実はその数年後の1988年から1993年まで、日本の現代美術家の奈良美智が、同校に通っていたのです。

 

また、トーマス・ルフは2000年から2006年まではデュッセルドルフ芸術アカデミーで教壇にも立っていました。学んでいた科は違うものの、あと数年ずれていれば二人が校内ですれ違っていたかもしれないと考えると、興味深く感じられます。

 

 

 

トーマス・ルフの写真集やDVDはAmazonや楽天からでも購入できる

 

トーマス・ルフにはいくつかの出版物がありますが、その中でも2009年に出版された『Thomas Ruff: jpegs』は有名です。この本にはトーマス・ルフの写真とロサンゼルス現代美術館のキュレーター(出版時)、ベネット・シンプソンの文章が掲載されています。

 

この『Thomas Ruff: jpegs』や『Thomas Ruff: Photographs 1979 - 2011』というDVDなどが、Amazonや楽天から比較的簡単に購入できます(2022年10月時点)。気になる方はサイトをのぞいてみてください。

 

 

 

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