山田正亮とはどんな画家?作品の落札価格や人気の「Work」シリーズについて解説
山田正亮とはどんな画家?作品の落札価格や人気の「Work」シリーズについて解説
山田正亮(やまだまさあき)は誰に組みすることもなく、ただ一人で己の芸術と向き合った孤高の画家です。彼の画業は大きく3つの時期にわけられますが、1956(昭和31)年から1995(平成7)年頃にかけて制作した「Work」というシリーズがもっとも高い評価を得ています。
今回は、近年再評価が試みられている山田正亮について、略歴やオークションでの落札価格など幅広く紹介します。
山田正亮の略歴
まずは、戦後まもない混乱期に画業をスタートさせた山田正亮について、彼の作風の変化とともに略歴を追ってみましょう。
1929年:東京府荏原(えばら)郡荏原町(現在の品川区西部)に生まれる
東京都品川区荏原1丁目にある荏原金刀比羅神社
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1929(昭和4)年、山田正亮は現在の品川区西部にあたる東京府荏原郡荏原町に生まれました。本名は山田正昭といいます。10代半ばで陸軍兵器行政本部の製図手養成所に入所しましたが、終戦に伴い2年で退職しました。
1945(昭和20)年に空襲で自宅を焼失したため、翌年からは兄弟と住まいを共にすることになります。その後、山田正亮は1949(昭和21)年に東京都美術館で行われた第1回日本(読売)アンデパンダン展に出品し、それ以降は継続して出品を重ねました。
1953年:抽象絵画で有名な洋画家、長谷川三郎に師事する
初期の山田正亮は静物画を主に制作していましたが、1953(昭和28)年になると抽象絵画で広く知られる洋画家長谷川三郎に師事します。山田正亮が20代半ば頃のできごとでした。 この頃から山田正亮の作品は次第に抽象化されていき、1956(昭和31)年に代表的なシリーズのひとつである「Work」の制作が始まります。
1958(昭和30)年に東京の教文館画廊において初めての個展を開催すると、その後は世田谷区にアトリエを設け、そこを拠点として創作活動を行うようになります。
1980年代:「Work」シリーズが高く評価され、画家としての地位を確立する
山田正亮の「Work」は当初一部の識者に注目されるのみでしたが、1981(昭和56)年に開催された「1960年代―現代美術の転換期」をきっかけにストライプを使った「Work」があらためて見直され、高い評価を得ることになります。山田正亮は日本の現代絵画における重要な画家の1人として、地位を確立することに成功しました。
1987(昭和62)年には第19回サンパウロ・ビエンナーレに作品を出品しています。また、1991(平成3)年に国立市へ住まいを移します。
2005年:府中市美術館で個展「山田正亮の絵画 ー< 静物 >から< Work >…そして< Color >へ─」が開催される
府中市美術館
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
山田正亮は、2001(平成13)年よりキャンバスを単色で塗りこめた「Color」という新しいシリーズの制作を開始しました。そして、2005(平成17)年に個展「山田正亮の絵画 ー< 静物 >から< Work >…そして< Color >へ─」が東京都の府中市美術館で開催されます。
この展覧会では山田正亮の139点の作品が幅広く展示されました。 その後、山田正亮は2010(平成22)年7月18日に、胆管ガンによって国立市の自宅で息を引き取りました。
2016年:初めての本格的な回顧展「endless 山田正亮の絵画」が開催される
山田正亮が亡くなってから6年がたった2016(平成28)年、京都国立近代美術館と東京国立近代美術館において「endless 山田正亮の絵画」展が開催されます。
この展覧会は油彩画約200点、紙作品約30点が展示された山田正亮の初めての本格的な回顧展です。 また、回顧展「endless 山田正亮の絵画」では、絵画作品だけでなく山田正亮自身が記した「制作ノート」も展示され、注目を集めています。
「Still Life」「Work」を経て「Color」へ至る画業を振り返って山田正亮の魅力を多角的に探るこの展覧会に、多くの人が足を運びました。
*独立行政法人 国立文化財機構 東京文化財研究所 / 山田正亮
山田正亮の作品の世界観
戦時中、東京都に住んでいた山田正亮は何度も空襲にあい、自宅を焼失するなどの大きな痛手を負いました。山田正亮は制作の様子を制作ノートに自ら記していましたが、終戦直後には「描き続けたまえ 絵画との契約である」という言葉を残しています。
この言葉からは、山田正亮が戦後の混乱期を描くことを支えとして生き抜いたことが伺えます。
山田正亮はその後ストライプやグリッドなどで表現される「Work」シリーズ、画面を単色で塗りこめた「Color」シリーズへと進み、約5,000点もの作品を制作しました。その中でも「Work」シリーズは山田正亮の画業における核ともいえるシリーズで、とりわけストライプを用いたものは高い評価を得ています。
山田正亮は当時の画壇の流れから一歩引いて、どこの派閥に属すこともなくひたすら自らの芸術を追求しました。そういった点では孤高の画家といえるでしょう。
近年欧米では日本の戦後美術が注目されていますが、その流れの中で山田正亮についても再評価がされています。
山田正亮の制作した代表的なシリーズを解説
山田正亮の画業は、先述の通り大きく3つの時期にわけられます。それぞれの時期に制作されたシリーズについて解説します。
Still Life
「Still Life(静物)」は、山田正亮が1948(昭和23)年から1955年(昭和30)年頃にかけて制作したシリーズです。戦後間もない時期の山田正亮は、創作活動を行う上で「はかなさ」を表現する静物画をテーマに選びました。
このシリーズについて、山田正亮は記憶から呼び起こして描いたと述べています。描かれているのは瓶や果物などで、セザンヌ風のタッチで対象物を表現しました。それらは徐々に輪郭を失い、抽象化されていきます。
その流れが次のシリーズ「Work」につながりました。「Still Life」の後期の作品と「Work」の初期の作品は非常によく似ています。
Work
「Work」は、山田正亮が1956(昭和31)年から1995(平成7)年までの約40年間にわたって制作した、彼の画業の核となっているシリーズです。
初期の「Work」はアラベスク風の複雑な構造や、フランク・ステラを思わせる規則的な矩形の色面で表現されました。それらはやがてあらゆる色を凝縮させたかのような、1960年代前半の多色ストライプへと変化します。
徐々に色が淘汰されていき、1965(昭和40)年頃には白一色の画面があらわれますが、1968(昭和43)年頃からは再びストライプ(2色~3色の繰り返し)の作品が見られるようになります。さらに1980(昭和55)年以降になると抑制が緩和され、画面が巨大化していきました。
「Work」シリーズに見られるストライプの揺れ、掠れなどは、緻密に計算されて表現されています。
ちなみに、作品名は「Work〇-△」という名前で統一されています。〇にあたる部分にはアルファベットが入りますが、これはいつ制作されたものかを示しています。さらに、△にあたる部分に入る数字は何番目に描かれた作品かを示しています。(例:「Work C-73」は1960年代に描かれた73番目の作品という意味)
Color
山田正亮は、1995(平成7)年に「Work」シリーズの制作を終え、少し間を開けて1997(平成9)年から2001(平成13)年にかけて「Color」というシリーズを手がけました。このシリーズはキャンバスを一色で塗りこめた作品です。
シンプルな作風ながら、よく見ると何色も色を重ねて塗っていることがわかるでしょう。1枚の作品を作るために1年〜2年程度かけていることが山田正亮の制作ノートから明らかになっています。
*京都国立近代美術館 / 展覧会 / endless 山田正亮の絵画
山田正亮の「Work」は東京国立近代美術館にて鑑賞可能
東京国立近代美術館
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2016(平成28)年に回顧展「endless 山田正亮の絵画」の会場となった東京国立近代美術館では、山田正亮の「Work」を数多くコレクションしています。
『Work B.149』『Work C-73』『Work C-73』『Work C-77』『Work C-77』『Work D.259』『Work E-250』『Work F.220』の8点を通して、初期の長方形を組み合わせた作品から「Work」の制作を終える1年前の大型作品まで、幅広く鑑賞可能です。
興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
山田正亮の作品の落札価格とその価値について
続いて、近年香港で高額で落札された山田正亮の作品について、2点紹介します。
2021年:Work D.27|約700万円
2021年11月25日、ボナムズ(Bonhams)のオークションにおいて、山田正亮の『Work D.27』が約700万円(502,500HKD)で落札されました。ボナムズとは1793年にイギリスで設立された美術品や骨董品を扱う国際オークションハウスです。
『Work D.27』は山田正亮が1970(昭和45)年に制作した162.4cm×112cmの油彩画です。この作品では黄色と紫の微妙に異なる太さの平行線が描かれています。山田正亮はこの頃から使用する色を2色〜3色に絞って描き始めました。
*Bonhams / MASAAKI YAMADA / Work D.27
2021年:Work B.134|約700万円
2021年同日に開催されたボナムズのオークションにおいて山田正亮の『Work B.134』が約700万円(477,500HKD)で落札されました。 『Work B.134』は1956(昭和31)年に制作された83.3cm×100cmの油彩画で、2016(平成28)年の「endless 山田正亮の絵画」展にも出品されています。
この作品のアラベスクのような形態は初期の「Work」に見られるやや珍しい特徴で、展覧会でも注目を集めました。
*Bonhams / MASAAKI YAMADA / Work B.134
山田正亮の作品の買取相場
近年欧米で日本の戦後美術が注目されており、それにともなって山田正亮についても再評価が進んでいますその中でも「Work」シリーズは国際的にも高い評価を得ています。 山田正亮は油彩画だけでなく水彩画も多く手がけており、こちらも人気があります。
具体的な価格については美術品買取専門店の株式会社獏へお気軽にお問い合わせください。保存状態等もあわせて総合的にお見積もりします。
山田正亮に関する豆知識(トリビア)
最後に、山田正亮の人柄が垣間見える興味深い豆知識を紹介します。
山田正亮は5,000点に及ぶ自らの作品について、写真を撮ってすべて記録していた
山田正亮はとても几帳面で、周囲の人が驚くほどの「整理魔」でした。5,000点を超える作品すべてを自ら撮影し、ナンバリングして作品台帳を作っていたというエピソードが、何よりもそのことを物語っています。また、作品制作の様子についても制作ノートに細かく記しています。
山田正亮は誰にも組みすることなく我が道を進んだ孤高の芸術家です。このようなストイックさによって彼の芸術が突きつめられたことは紛れもない事実ですが、ときにその性格が周囲との軋轢を生むこともあったようです。
*産経新聞 / 契約を遂行するように描き続けた生涯 「endless 山田正亮の絵画」展
山田正亮の画業を振り返るには、作品集『endless 山田正亮の絵画』もおすすめ
山田正亮の作品に触れるには美術館に足を運ぶのがおすすめですが、彼の画業を振り返りたい場合には作品集『endless 山田正亮の絵画』を購入するのも1つの手です。これは2016(平成28)年に開催された回顧展「endless 山田正亮の絵画」のカタログとして刊行された作品集です。
Amazonなどでも購入できるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
*美術出版社 / Publications / endless 山田正亮の絵画
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