山口歴はどんなアーティスト?ユニクロやナイキともコラボしたNY在住の作家について略歴や代表作品を紹介
山口歴はどんなアーティスト?ユニクロやナイキともコラボしたNY在住の作家について略歴や代表作品を紹介
近年、山口歴(やまぐちめぐる)の作品がオークションで立て続けに高額で落札され、大変話題になりました。山口歴はブラシストローク(筆致)をそのまま利用した「カットアンドペースト」という独特の表現技法を生み出したアーティストです。ストリートカルチャーを背景に持つ彼のクールな作品は、海外からも高く評価されています。
今回は、ニューヨークのブルックリンを拠点に活躍する注目の若手アーティスト、山口歴について紹介します。
参考サイト:MEGURU YAMAGUCHI
山口歴の略歴
まずは、山口歴の生い立ちやアーティストとして独立するまでの下積み時代、その後の活躍などを順を追って紹介していきます。
1984年:東京都渋谷区に生まれ、アートに造詣のある両親のもとで育つ
1984(昭和59)年、山口歴は東京都渋谷区に生まれました。デザイナーでアメリカン・カルチャーにも造詣が深かった両親のもと、山口歴はアート作品に囲まれて育ちます。
ドラゴンボールのファンで登場人物の絵をよく描いていた山口歴は、それをきっかけに絵画教室に通い始めました。絵画教室の授業でゴッホの作品『The Starry Night(星月夜)』に出会い、画家を目指すようになります。
山口歴は、当時ストリートカルチャーの中心であった渋谷で10代の多感な時期を過ごし、20歳前後になると父親が運営するデザインスタジオで働き始めました。そして、そこに務めるクリエイターから刺激を受けながら、将来を模索しました。
2007年:渡米し、アーティストの松山智一のアシスタントを約5年間務める
ニューヨークの街並み
2007(平成19)年、山口歴はアメリカへ渡り、かねてから憧れていたアーティストのMATSU(まつ。松山智一)についてアシスタントとして働き始めました。このころには、1日8時間スタジオで作業し、語学学校にも通いながらあいた時間で自分の作品を制作するという、ハードな毎日が続きました。
山口歴は師よりアートの神髄を学びながら、自らのスタイルである「カットアンドペースト」を生み出し、作品に取り入れるようになります。
2011年:グループ展「GROUPSHOU3」に作品8点を出品し、初日に完売
2011(平成23)年、山口歴は東京のギャラリー「AISHO MIURA ARTS」からグループ展への参加をすすめられます。初めて参加したグループ展「GROUPSHOW3」では、アシスタントのかたわらで制作していた作品8点を出品しました。驚くべきことに、山口歴の作品は初日で完売します。このグループ展をきっかけに山口歴は徐々に知名度を増し始めました。
同年、山口歴は独立し、アーティスト活動を本格的にスタートします。
2012年~:ニューヨークや東京などで数々の個展やグループ展を開催
2012(平成24)年以降、山口歴はニューヨークと東京を行ったり来たりしながら数々の展覧会を開催しました。
2015(平成27)年、ニューヨークの+81 Galleryで個展「ALL IS FLUX, NOTHING STAYS STILL」を開催、2016(平成28)年には東京で2度の個展を開催します。2017(平成29)年には「OUT OF BOUNDS」や「SPLITTING HORIZON」などの個展が同じく東京で開催されました。
さらに、ニューヨークでは2012年以降ほぼ毎年、山口歴の参加する展覧会が開催されます。
2019年:ニューヨークにて「GOLDWOOD ARTWORKS」を設立
2019(令和元)年、山口歴は「GOLDWOOD ARTWORKS」というアーティストグループを設立しました。既製の概念や物の捉え方を超えて新しい表現を追求するためにつくられたGOLDWOOD ARTWORKSには、アーティストの中西伶やフォトグラファーの瀬尾宏幸らが所属しています。
個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」の会場となった銀座 蔦屋書店
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
また、2021(令和3)年には、出品作品が全て新作の個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」が銀座 蔦屋書店とOIL by 美術手帖ギャラリーにおいて同時開催され、注目を集めました。
山口歴は現在ニューヨークのブルックリンを主な拠点として活動しています。クールで個性的な作品で多くのファンを魅了する山口歴の活躍から、今後も目が離せません。
山口歴の作品の世界観
山口歴はブラシストローク(筆致)に焦点を当てた、立体的な作品制作で知られます。特に「カットアンドペースト」という彼独特の表現方法が有名です。
山口歴の代名詞ともいえるカットアンドペーストは、彼のアシスタント時代に生まれました。スタジオが汚れないようにひいていた養生シートから、かたまった絵の具をはがすときにインスピレーションを得たのだそうです。
さらに、ヒップホップの表現技法である「サンプリング」(既存の音源を一部抜粋し、ループさせたりつなぎ合わせたりして別の曲を作ること)がヒントとなって、ブラシストロークを貼り合わせる表現技法が誕生しました。まさに、渋谷に育ちストリートカルチャーに造詣の深い山口歴ならではの発想といえるでしょう。
また、山口歴の作品は、そのダイナミックなブラシストロークを主に青・白・黒などのシャープな色彩で表現しているのも一つの特徴です。コロナ禍においては自らの怒りを赤い色に込めて表現した作品も制作しています。
近年、山口歴は宇宙や自身の内面に流れるエネルギーにも興味をひかれているそうです。ますます深みを増す山口歴の世界観に、国内外の多くのファンが注目しています。
山口歴の代表作品を解説
それでは、山口歴の代表的な作品をいくつか取り上げて解説いたします。
OUT OF BOUNDS
Out of Bounds #87(シルクスクリーン 2018年)
「OUT OF BOUNDS」は2016(平成28)年に制作が始まった山口歴の代表的シリーズです。このシリーズは「限界の外」という言葉の意味する通り、境界線の越境や絵画の拡張をコンセプトに制作されました。ブラシストロークに制限をもたらすキャンバスの使用をやめ、あらわれた絵の具のかたちをそのまま作品としています。ダイナミックなブラシストロークを版画で表現した作品もあります。
SPLITTING HORIZON
Splitting Horizon No. 10(リトグラフ 2019年)
「SPLITTING HORIZON」は「OUT OF BOUNDS」のシリーズに続いて、2017(平成29)年から制作され始めました。このシリーズはブラシストロークをいくつかに裁断し、それを組み合わせて再構成しているのが特徴です。「Horizon(地平線)」とは、自分の視野、見えている世界をあらわしています。それを「Split(裂く)」ことで新しいものを誕生させたいという思いを作品に込めました。版画作品もあります。
ROOTS OF TEARS
「ROOTS OF TEARS」は、山口歴がアーティストとして独立した年である2011(平成23)年に制作された、ポートレートシリーズです。SNSのタイムラインに流れてきた友人の写真を、そのままプロジェクターに投影して制作したといわれています。山口歴の初期の代表作品です。
PROMINENCE NO. 1
山口歴が制作した初めての立体作品「PROMINENCE NO. 1」は、2021(令和3)年に開催された個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」に初出品されました。「プロミネンス」とは、太陽付近のプラズマガスが上層のコロナへと立ち上り、炎のように見える現象のことをいいます。山口歴はこの現象を知ったとき、その迫力とスケールに圧倒され強く心に惹かれました。このエネルギーを形にしたのが「PROMINENCE NO. 1」です。
山口歴とコラボをはたしたブランド
山口歴はさまざまな企業とコラボレーションしていることでも有名です。ここでは特に話題になった「UNIQLO」「NIKE」について紹介しますが、他にも「ISSEI MIYAKE MEN」や「LEVIʼS」などともコラボを行っており、多くのファンを喜ばせています。
UNIQLO(ユニクロ)
2018(平成30)年6月、UNIQLOと山口歴によるコラボウェアが販売されました。山口歴のブラシストロークが全体にデザインされたクールなTシャツとショーツが、日本のほか中国や韓国などでも販売され、人気を集めました。また、翌年にも第2弾としてTシャツやポロシャツなどが発売されています。
さらに、2021(令和3)年にはUNIQLOのTシャツブランド「UT」からポケモンと2人のアーティストがコラボした「ポケモン・ミーツ・アーティストUT」が販売されました。2人のアーティストとは山口歴とロンドンを拠点として活動するジェームス・ジャービスです。
彼らの個性豊かな作風とポケモン(ピカチュウやミュウツ―など)のコラボによって生まれたおしゃれなTシャツを、多くのファンが購入しました。
NIKE(ナイキ)
2017(平成29)年、ストリートカルチャーを代表するブランドNIKEと山口歴のコラボが実現しました。同年に渋谷にオープンした「ナイキキックスラウンジ表参道」において、山口歴がウォールアートを手がけたのです。しかし、残念ながらナイキキックスラウンジ表参道は2020(令和2)年に閉店してしまいました。
山口歴の作品の落札価格とその価値について
山口歴の作品は近年予想落札価格を上回る金額での落札が続いています。そのなかでも彼の人気がうかがえる注目の作品を、具体的な金額を含めて二つ紹介します。
2022年:MÖBIUS NO. 1|約2,128万円
2022(令和4)年、SBIオークションにおいて、山口歴の『MÖBIUS NO. 1』が予測落札価格500万円から800万円を大きく上回る約2,128万円で落札され、大いに話題になりました。
この作品は山口歴が近年制作している「MÖBIUS」シリーズのうちの一つで、2019(令和元)年に制作されました。弧を描きねじれを感じさせるブラシストロークが特徴の、214.2cm×181.3cm×2.5cmの作品です。
2021年:SPLITTING HORIZON NO.10|約1,323万円
2021(令和3)年、同じくSBIオークションにおいて、山口歴の『SPLITTING HORIZON NO.10』が、予想落札価格250万円から350万円の3倍以上となる約1,323万円で落札されました。『SPLITTING HORIZON NO.10』は247.0cm×189.0cm×2.5cmの作品です。
山口歴の作品の買取相場
Piece#2(ジークレー 2019年)
山口歴は立体的な作品で有名ですが、ジークレー、シルクスクリーン、リトグラフなどの版画作品も手がけています。市場に出まわっているのはこういった版画作品が多いのではないでしょうか。山口歴の版画作品の高価買取が可能です。また、立体的なオブジェに関してはさらに高い評価も可能です。お気軽にご相談ください。
山口歴に関する豆知識(トリビア)
最後に、山口歴のファンなら見逃せない豆知識を一つ紹介しましょう。
山口歴のインスタはフォロワー3.5万人(2022年9月現在)
山口歴はInstagramを開設しており、そこで展覧会のお知らせや山口歴自身の日常について発信しています。作品制作の様子が見られるムービー等もあるので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。2022年9月現在、約3.5万人が彼のInstagramをフォローしています。
山口歴の作品は強化買取中
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